キッチン感謝料にウェルネス料?米飲食店で出現した追加料金の正体
インフレが進むアメリカではモノやサービスの価格が上昇しています。値上げは飲食業界、さらにファストフード業界まで波及。本来はチップ不要のカウンター越しのサービスですら支払い用の端末にチップ枠が設けられるようになりました。日本から訪れるとその「エグさ」に驚くことでしょう。本記事では旅行時に立ち寄ったレストランで請求されるかもしれない「追加料金」について掘り下げて紹介します。
客離れを防ぎたいファストフード業界の試み
アメリカではインフレが進み、モノやサービスの価格高騰が日本以上に顕著です。2022年6月にインフレ率が9.1%を記録し、その後落ち着いたものの未だインフレ率3.3%としぶとく残っています。
その結果、アグレッシブと言えるほどの値上げは飲食業界、さらに「早い・安い・うまい」が鉄板のファストフード界にまで広がっています。
これまで安さが売りだったファストフード店も多くの人にとって、最近は前ほど気軽に行ける店ではないようです。なぜならミール(ドリンクやサイドのセット)を頼むと10ドル(約1600円)以上が主流で、中には13ドル(約2070円)、15ドル(約2400円)超えのものも(価格は店舗によって異なる)。コネチカット州には、ビッグマック・ミールを18ドル(約2870円)で販売している店もあるほどです。
そんなわけで、人々の節約志向はますます高まっています。マクドナルドは客離れを防ぐため、6月25日より夏季限定の格安セット「$5 Meal Deal」をスタートしました。内容はマックダブル・ハンバーガー(もしくはチキンバーガー)、フライドポテト(小)、チキンマックナゲット(4ピース入り)、ドリンク (小)で5ドル(約798円)という驚異的な価格が話題をさらっています。このような試みは、同業種のバーガーキングやウェンディーズでも始まっています。
アグレッシブに急騰するレストラン価格
一方で一般のレストランでは、このような割引の試みはそれほど多く見られません。そもそも都市部では賃料が驚くほど高く、材料費や人件費の高騰もあり、むしろメニュー価格は上昇の一途を辿っています。
飲食費とは別にサーバー(ウェイター、ウェイトレス)に支払うチップ(謝礼)も、これまで主流が15%前後だったのが、コロナ禍以降は18%、20%またはそれ以上が主流となっています(チップ額は任意のため、サービスに満足せず15%以下にしたい時は、マニュアルで選ぶことができます)。
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さまざまな項目として加算される手数料
またレシートを注意深く見てみると、近年さまざまな「追加料金」が加算されるようになったことに気づきます。
一つは、「クレジットカードの手数料」です。
クレジットカード会社が店舗に請求する手数料が上昇していることから、それに伴い店舗がその上昇分を客にサーチャージ(追加料金)として求める動きがあるのです(注:アメリカでは原料費が高騰すると、その分の補填を企業側の努力のみならず、消費者に求めることはよくあります)。飲食の支払いでクレカ払いの際、1~4%前後の手数料がチャージされることが、一部のレストランで起こっています。
このような店で追加料金の支払いを避けたい場合は、現金で払うと良いでしょう。もしくはクレカをタップする場合だけチャージされ、挿入もしくはスワイプの際は追加料金を請求されないケースもあるため、支払いの時に確認・留意すると良いでしょう。
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飲食店では別のサーチャージ(追加料金)が加わることがあります。代表的なものは、主に米西海岸の飲食店で近年活発的に導入されている「キッチン・アプリシエーションフィー(厨房への感謝料)」もしくは「キッチン・サーチャージ」と呼ばれるものです。
こちらは税額を引いた総額の2~10%(もしくは一人あたり1ドル程度)を厨房で働くシェフやスタッフへのウェルネス費としてチャージするケースになります。在米歴の長い筆者がニューヨークでは見たことがないこの追加料金に気づいたのは2023年にハワイで食事をした時ですが、米メディアで調べてみると、NBC局TODAYの記事「 What's a 'kitchen appreciation fee' ?(キッチン・アプリシエーション費って何?)」のように2022年~24年にかけて主要メディアでこのトピックを扱った記事が多数ヒットします。
2019年にはボストンのある店でこの感謝料が導入し始められたという情報や、ニューヨーク州ではキッチンスタッフにチップを渡すことは違法とする情報もあります。キッチン・アプリシエーションフィーは任意なので、請求書から削除(支払いを拒否)することもできるとのこと。
またスタッフの健康管理を支援するための5%程度の「ウェルネスチャージ」という名目や、グループで予約する際の手数料として「アドミニストラティブ・フィー(事務手数料)」、「オペレーションフィー(運営費)」などさまざまな名目で、追加料金が加算されていることもあるかもしれません。
これらのサーチャージは一部のレストランで導入されているものです。徴収した料金はスタッフの賃金向上にあてがわれ、ひいてはそれが彼らのモチベーションアップにつながり、業界の人手不足の解消や従業員の離職を防ぐものになるとして期待が寄せられています。
一方で、コロナ禍以降は多くの店でメニューの単価が上昇したことで消費者が価格に敏感になり、さらなる追加費用の請求に不快感を示す人も少なくありません。レストランオーナーも本音は、客が来店しなくなるのを恐れているでしょう。
客としてチャージされる場合は、レシートの項目に「Credit Card Surcharge」「Kitchen Appreciation Fee」などと書かれているので、支払い・決済を行う前にいくらの追加料金がチャージされているのか確認すると良いでしょう。不明点がある場合は遠慮せず、店に尋ねてみましょう。