お金

資金30万、5年でいくら増やせる?投資信託と個人向け国債で比較

FPにききたいお金のこと 中村 賢司

資金30万、5年でいくら増やせる?投資信託と個人向け国債で比較

【画像出典元】「stock.adobe.com/Nuthawut」

「FPに聞きたいお金のこと」、今回は子どものために貯めた資金の運用方法に関する40代女性からのご相談です。個人向けの金融商品はいろいろなものがあります。それぞれの特徴を踏まえながら、おすすめの運用法を考えていきましょう。

40代女性Aさんの相談内容

大学2年・高校3年・中学1年と、3人の息子がいます。90万円の現金があり、それぞれに車の免許取得費用として30万円ずつ分けました。長男次男はすぐに必要になると思うので普通口座に預けていますが、三男に関しては使うまでには5~6年程時間があるので、預金以外にもいい方法があれば教えていただきたいです。

預金・投資商品でまずは知っておきたいこと

資産運用
【画像出典元】「stock.adobe.com/Mongta Studio」

Aさん、こんにちは。自動車の普通免許を取得するにはまとまった費用が必要なため、三男の方の費用を少しでも増やせたらというお気持ち、分かります。この機会に一緒に考えていきましょう。まずは前提条件の確認です。

【前提条件】

1.    資産運用では元本は確保されていません

普通口座に預けていても利息でお金を増やすことが難しいのはご承知のとおりです。マイナス金利が解除され、定期預金などの金利は少しマシになりましたが、昭和末期から平成初期のように普通預金が5%という時代ではありません。

お金を増やすには、何らかの資産運用が必要です。資産運用は、銀行の利息よりも増えることを期待して行いますが、場合によっては元本を割ることも当たり前に発生します。

Aさんが「元本を割ることは、とても容認できない」「三男が免許を取りに行く時に、必ず30万円でなければならない」ということであれば、資産価値が下落するリスクがない銀行の預貯金が主な選択になるでしょう。もし元本割れのリスクを許容できるのでしたら、資産運用という手段も選択肢になります。

2.    短期投資はブレがでやすい

短期投資の場合、投資のタイミングが結果に及ぼす影響が大きくなります。Aさんが考えられている6年間という期間は、どちらかというと短期投資にあたります。そのため「使う時に銀行預金よりも少しぐらい増えたらいいな」ぐらいの感覚で投資するイメージを持って頂くと良いでしょう。

FPおすすめの投資・金融商品

1と2の前提条件を確認して頂いたところで、個人が取り組みやすい普通預金よりもいい方法を考えていきましょう。

個人向け国債

財務省が販売している個人向け国債は元本が保証され、途中で利子を受け取る金融商品です。満期までの期間が3年(固定)・5年(固定)・10年(変動)の3タイプが販売されています。2024年7月発行の5年満期の国債は金利が0.59%で、元本30万円では途中の利子がトータルで8845円受け取れます。銀行の定期預金が0.2%程度ですので、銀行に預けるよりも多くの利子を受け取れます。注意点としては購入後1年間は現金化できないことです。

外貨定期預金

日本円を外貨で運用する方法です。日本円をアメリカドルなどに両替し預け入れをします。金融機関によっては、満期までの期間が1年の定期預金で年率4.5%という高い利率の商品もあります。また預入時よりも満期時の為替レートが円安になっていれば、為替差益を得ることができます。反対に満期時に円高になっていれば為替差損が発生し、日本円での受取金額が元本を割る可能性が高くなります。

投資信託

投資信託は投資家から集めたお金をプロのマネージャーが運用してくれる金融商品です。2024年からの新NISAでは非課税制度が拡大し、投資未経験者も含め世間の注目を集めています。投資先としては全世界の株式市場の取引状況に連動する全世界株式型や、アメリカの主要企業などの成績に連動するS&P500型の投資信託が人気を集めています。

その他にも日本の株式市場に連動するものや、一つの商品の中で株式や債券などに分散投資ができるバランス型の投資信託も人気です。投資先によって運用成績が異なり、マーケットの値動きによっては元本割れをすることもあります。

定期預金

マイナス金利が解除されたとはいえ、まだまだ銀行の金利は低いのも事実です。ただしインターネットバンクだと1年定期で0.5%程度の利息がつく銀行もあるので、検討の余地があるでしょう。なお銀行預金の最大のメリットは安全性です。もし銀行が破綻しても1000万円までの預金と利息は守られ、またリーマンショックのような株式市場の大暴落があったとしても、銀行の預金残高は減りません。

FPが考える投資方法

資産を増やす
【画像出典元】「78image/Shutterstock.com」

三男の運転免許用の資金、使うのは6年後の予定ということですので、下記の方法はいかがでしょうか。

1.    個人向け国債を15万円分購入

5年満期か10年満期の個人向け国債を30万円の半分である15万円分購入します。大きなリターンは期待できませんが、安全性が高く、仮に株式市場で大暴落が起きたとしても価値が目減りしません。

試算例:個人向け国債と定期預金の組み合わせ 運用期間は5年間
5年満期の個人向け国債・適用金利0.61%(*1)を15万円購入すると、満期までに受け取る利子は5年間の合計で税引き前4570円、税引き後で3641円になります。

またネット銀行の5年定期・適用金利0.02%(*2)に15万円を預けると、税引き前利息が150円、税引き後利息が121円になります。

上記の組み合わせで得られる利益は合計で3700~3800円の見込みです。

(*1)(*2)2024年7月発売(8月発行)分の利率

2.    投資信託を15万円分購入

新NISAを使い、投資信託を15万円分購入するというのはいかがでしょうか?購入するのは日本の公的年金と同じく、資金を日本株式・日本債券・海外株式・海外債券に25%ずつの割合で投資してくれるバランス型のファンドがおすすめです。

日本の公的年金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、国民から集めた年金保険料の一部を将来の給付に備えるために資産運用をしています。過去20年間で大きな利益を出しており、資金を日本株式・日本債券・海外株式・海外債券に25%ずつ分散して運用し、過去20年間で年平均4.0%の成績を出しています。

試算例:バランス型ファンドと定期預金の組み合わせ 運用期間は5年間
期待リターン4.0%のバランス型ファンド15万円分を一括購入すると、5年経過後の評価額の予想はおおよそ18万2000円。NISAを活用すれば利益部分の3万2000円は非課税で受け取れます。

またネット銀行の5年定期・適用金利0.02%(*)に15万円を預けると、税引き前利息が150円、税引き後利息が121円になります。

上記の組み合わせで得られる利益は合計で3万2000円前後の見込みです。
(*)2024年7月の金利

運用期間が5~6年程度と短いため、大きく資産価値が上昇することは難しいですが、銀行の預金よりも増えることは期待できそうです。またバランス型の投資信託であれば、もし暴落が発生しても値下がりの幅が株式だけの投資信託よりも穏やかです。

なお購入方法はまとめて15万円でも良いですし、3万円分を5回でも構いません。ただ運用期間をできるだけ長めに取るため、遅くとも半年以内に15万円分を購入することをおすすめします。

まとめ

貯金や個人向け国債を15万円、バランス型の投資信託を15万円という組み合わせは、非常に地味に見えます。ただし運用期間が5~6年程度と短いことや、運転免許の取得費用と使い道が決まっていることを考えると、資産価値が大きく下がることは避けたいところです。

もし、もう少し資産価値の上昇に賭けてみたいということであれば、15万円のバランスファンドではなく、米国株式に連動するS&P500や全世界の株式に連動する投資信託にするというのも良いでしょう。いずれにしても運用期間と使い道が決まっているので、資産価値が上下するリスク性商品の割合が50%を超えないようにしましょう。

※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。