お墓は相続税がかからない?生前にやっておくと良い節税対策のコツ
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監修・ライター
人が亡くなった時にかかる相続税。基本的には、亡くなった時に持っていた財産に対して税金がかかりますが、今回紹介する財産には相続税がかかりません。今回はそうした財産を確認し、生前からできるちょっとした節税の知恵も紹介します。
相続税がかからない財産とは
相続税がかからない財産のことを「非課税財産」といいます。非課税財産のうち主なものは次の3つです。
①墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など、日常礼拝に使用しているもの
②相続によって取得した生命保険金等のうち一定のもの
③相続によって取得した退職金等のうち一定のもの
参考:国税庁
次から詳しく見ていきましょう。
墓地や墓石、仏壇、仏具は基本非課税!ただし例外も
墓地や墓石、仏壇、仏具などは非課税財産となりますが、物によっては課税されるものもあります。課税の有無について、それぞれ具体的に見ていきましょう。
【課税されないもの】
①墓地や墓石で、生前に購入して相続しているもの
②仏壇、仏具、神を祭る道具で日常礼拝に使用しているもの
【課税されるもの】
①骨とう的価値があるもの
②投資の対象となるような商品
例)純金製のおりん(仏具)など日常で使用せずに保管しているようなものや、仏像などで高い価値があり売却ができるようなもの。
③お墓、墓石を買うために残しておいたお金
墓地や墓石、仏壇、仏具であっても上記の①~③のようなものは相続財産となり、相続税がかかることがあります。
例えば日常の崇拝道具として仏壇の前に純金製のおりんを複数並べていたとしても、これらの仏具が投資目的や換金性の高いもの、日常の崇拝道具の域を超えるものである時は相続税の対象となる場合があるので注意が必要です。
本人がお墓を生前購入すると相続税対策に
生前にお墓を買うことを「寿陵(じゅりょう)」といいます。一説で「寿陵」は、長寿や子孫繁栄を招くとも言われているようですが、相続税の対策にもなります。
墓地やお墓、仏具、仏壇について、相続税が非課税となる対象はこれらの財産を故人が亡くなる前に購入しておいたものに限ります。
また故人のお金で生前にお墓などを購入することで、手元の現金預金が減少します。そのため結果的に相続税が減少することになるのです。
ただし、生前に墓地やお墓、仏具、仏壇を購入するにあたって注意するポイントもあります。
① 亡くなった後に遺産で購入した場合は相続税の対象となる
亡くなってから故人の遺産で購入した墓地や墓石、仏壇、仏具などは相続財産から控除されず、相続税対策にはなりません。
② 本人が意思を持って購入する必要がある
生前に墓地などを購入する時は、本人が購入してください。認知症や病気などにより意思能力がない状態で相続人が主導して購入すると、本人の意思によるお金の支出ではないため、後々問題となる可能性があります。
③ ローン残債は控除されない
故人が生前に墓地やお墓、仏具、仏壇を分割払いや借入をして購入した場合、相続開始時のローン残債や未払い分は相続財産から控除されません。相続対策で購入するならば、本人が生前に一括払いをして購入するのがおすすめです。
死亡保険には相続税がかかる?非課税枠やその条件
故人の死亡保険金を法定相続人が受け取った場合、死亡保険金は相続税の課税対象となります。しかし「死亡保険金の非課税」という税制上の特典があり、受け取った死亡保険金のうち、次の金額までは相続税がかかりません。
■死亡保険金の非課税限度額
法定相続人の数×500万円=非課税限度額
■相続税がかからない死亡保険の契約形態
①保険契約者:被相続人
②被保険者:被相続人
③死亡保険受取人:法定相続人(遺族)
参考:国税庁HP
具体的なご相談内容で見てみましょう。
相談内容
父が死亡し、死亡保険金1000万円が保険会社より支払われました。相続人は配偶者の母と子供2人です。保険金は全額、母の口座に振り込まれました。この死亡保険金は亡くなった父が契約者(保険料の負担者)・被保険者であり、受取人が母という終身保険でした。この1000万円に相続税はかかりますか。
税理士の回答
お父様の死亡保険金については、下記の計算により1500万円までは相続税が非課税となります。
・非課税枠の計算
(相続人の数)3人×500万円=1500万円
・判定
(保険金収入)1000万円<(非課税枠)1500万円
従って今回受け取った死亡保険金1000万円は、全額非課税となり相続税はかかりません。
注意する点として、この死亡保険金非課税の規定が適用されるのは、下記のように受取人が法定相続人である場合のみです。法定相続人以外の人が受け取る場合は、適用できません。
①保険契約者:父
②被保険者:父
③死亡保険受取人:遺族(法定相続人)
お父様本人が保険契約を行い、本人の口座から毎月保険料の引き落としがされていて、本人の死亡後、その保険金が法定相続人である配偶者や子などに振り込まれるようなケースにおいて死亡保険金非課税が適用されます。
死亡退職金には相続税かかる?非課税枠とその条件
故人の死亡退職金を法定相続人が受け取った場合には、その受け取った死亡退職金のうち、次の非課税の部分までは相続税がかかりません。
■死亡退職金の非課税限度額
500万円×法定相続人の数=非課税限度額
こちらも具体的なご相談で見てみましょう。
相談内容
父が死亡して、勤めていた会社から死亡退職金が2000万円支給されました。相続人は配偶者と子供2人です。退職金は全額、母の口座に振り込まれました。この2000万円に相続税はかかりますか。また亡くなった父は、この死亡退職金を退職所得として申告する必要がありますか。
税理士の回答
1.相続税について
お父様の死亡退職金のうち1500万円までは相続税は非課税となります。1500万円を超えた500万円が相続税の対象となります。
・非課税枠の計算
(相続人の数)3人×500万円=1500万円
・相続税の対象
(退職金)2000万円-1500万円=500万円
2.お父様の退職所得の申告について
退職金の受け取りは遺族になり、この死亡退職金は相続税の対象となるため、お父様の退職所得には該当しません。
注意点として、この死亡退職金非課税の規定が適用されるのは、受取人が法定相続人である場合のみです。法定相続人以外の人が受け取る場合は、適用できません。
参考:国税庁HP
個人事業者の死亡退職金が非課税になる「小規模企業共済掛金」
個人事業者は事業主である本人に退職金を支給し、事業の必要経費とすることができません。しかし、退職金は遺された遺族の生活の保障にも充てられる大切なものであるため、個人事業者については次のような非課税制度が設けられています。
■小規模企業共済掛金
独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営し、個人事業者や小規模企業が退職金を積み立てる制度です。この制度を利用して事業主が退職金を積み立てておき、死亡時に受け取ると死亡退職金として相続財産がかからない特例の退職金として取り扱われます。
■小規模企業共済掛金はさらにお得なことも
毎月の掛金は、所得税の確定申告時に「所得控除」として計上することが可能です。それにより、毎年の所得税及び住民税が減少する効果もあります。
参考:中小企業基盤整備機構「小規模企業共済」
まとめ
今回は相続税がかからない相続財産について紹介しました。筆者の世代はお墓といえば霊園に墓石が並ぶイメージが強いですが、近年は手元供養や海洋散骨、樹木葬などスタイルも変わってきているようです。ライフスタイルの変化と共に相続税がかからない財産の範囲も今後変わっていくかもしれません。