【2025年改正】看護休暇が使いやすくなる!改正のポイントは?
目次
現在は共働き世帯が7割近くを占めており、夫婦それぞれが働くのが当たり前の時代となっています。共働き夫婦の子育ては、子供の発熱やケガなど急な対応が必要な場合に頭を悩ませる人は多いと思います。そんな時に取得できるのが「子の看護休暇」です。2025年には制度改正が予定されており、対象の子の範囲や取得自由が拡大するなど利用しやすくなる見込みです。子の看護休暇の概要、対象者、そして制度改正のポイントを詳しく見ていきましょう。
年休とは別に取得できる「子の看護休暇」とは
子の看護休暇は、ケガや病気になった子供の世話をするために、労働者が取得できる休暇です。通常の年次有給休暇とは別に取得することができます。「病気の予防」も対象のため、インフルエンザの予防接種などに子供を連れていく場合も適用されます。
ただし、現在の労働基準法では、子の看護休暇は就業規則に明示する必要があります。そのため原則として勤務先で子の看護休暇の制度が導入され、就業規則に定められ周知されていることが前提です。以下は就業規則のサンプルです。
【子の看護休暇に関する就業規則サンプル】
第〇条
1.小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員は、負傷し、又は疾病にかかった当該子の世話をするために、又は当該子に予防接種や健康診断を受けさせるために、就業規則第◯条に規定する有給休暇とは別に、当該子が1人の場合は1年間につき5日、2人以上の場合は1年間につき10日を限度として、子の看護休暇を取得することができる。この場合の1年間とは、4月1 日から翌年3月31日までの期間とする。
2.子の看護休暇は、時間単位で始業時刻から連続又は終業時刻まで連続して取得することができる。
3.取得しようとする者は、原則として、子の看護休暇申出書を事前に事業主に申し出るものとする。
4.本制度の適用を受ける間の給与については、別途定める給与規定に基づく労務提供のなかった時間分に相当する額を控除した額を支給する。
5.賞与については、その算定対象期間に本制度の適用を受ける期間がある場合においては、労務提供のなかった時間に対応する賞与は支給しない。
6.定期昇給及び退職金の算定に当たっては、本制度の適用を受ける期間を通常の勤務をしているものとみなす。
ポイントとなる部分を太字にしています。この就業規則のサンプルを参考に次の項目を見ていきましょう。
看護休暇の取得要件(対象者と取得事由)
子の看護休暇の大きな特徴は、「子を養育する従業員」が対象です。子の看護休暇と同じように介護を目的とした「介護休暇」という制度もあります。介護休暇は両親や配偶者の両親、祖父母、兄弟姉妹など、介護が必要な家族の世話をする場合に取得できます。しかし、子の看護休暇は、子供を育てている人に限定されるのがポイントです。
また、介護休暇は「2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にある対象家族を介護する」と介護される側の状況が「2週間以上」「常時介護を必要」というように具体的に定められていますが、子の看護休暇にはこのような定めはありません。「どの病気やケガが該当するのか?」「どの程度なら休めるのか?」という制約はなく、子供の病気やケガなどで看護が必要な時は、基本的に看護休暇の対象となります。例えば以下のようなケースです。
・発熱やケガ、体調不良などによる看護
・定期的な通院の付き添い
・インフルエンザなど予防接種や健康診断などの付き添い
なおそれを証明するために病院での領収書等を取得し、事業主に提出することを求められる場合もあります。子供の看護休暇を取得する際は、必ず領収書や明細書などは捨てずに保管しておきましょう。
看護休暇中の給与は支給される?
では看護休暇を取得した場合の給与はどうなるのでしょうか?就業規則のサンプルには「給与規定に基づく労務提供のなかった時間分に相当する額を控除した額を支給する」とあります。つまり、看護休暇をした日数や時間分は労務提供のなかったものとして給与をもらえないということです。あくまでサンプルですので、自身の勤務先がどういう取り扱いか規定を確認する必要があります。
なお厚生労働省の調査結果によると、看護休暇中の給与の取り扱いは令和3年度時点で以下のようになっています。
・有給:27.5%
・一部有給:7.4%
・無給:65.1%
このように看護休暇は無給としている企業が多いようです。給料は支給されなくても、看護休暇は仕事と子育てを両立させるために非常に大事な制度といえます。
なお、昇給の査定を行う際に「〇〇さんは看護休暇でたくさん休んでいるから」といった理由で他の従業員と差別してはなりません。つまり、給料はもらえなくても遅刻や欠勤をしているわけではないため、適正な人事評価を行うことが企業や事業主には求められています。
子の看護休暇を取得できる日数や時間
看護休暇は従業員が事業主に申し出ることで取得できます。1年度において子が1人の場合は5日間、子が2人いる場合は10日間を上限として取得できます。また1時間単位で取得できるのも特徴です。
例えば、朝起きると子の体調が悪く病院に連れていき、その後実家に預け、就業時間から2時間後に出勤する、という場合は2時間だけ休暇扱いとすることも可能です。この場合、1日8時間労働であれば4分の1日分の休暇となります。なお1日の労働時間が不規則の場合は、1年間の平均労働時間を基に計算します。
看護休暇の現状と取得状況
厚生労働省の調査によると、令和3年度時点で65.7%の事業所が看護休暇規定を設けています。従業員が5人から29人以下の事業所で60.3%、100人から499の人以下の事業所で94.3%となっているため、事業規模が大きいほど看護休暇が整備されていることになります。
一方で、実際の取得状況は28.3%とかなり低い印象です。子供が元気で保育園や幼稚園に通園しているのが一番ですが、制度が浸透していない、または子の看護休暇の対象とならないケースもあるかもしれません。このような背景から、次で紹介するように制度の見直しが行われるようになっています。
2025年4月からの看護休暇制度の改正ポイント
2025年4月1日より育児・介護休業法の見直しが行われます。改正のポイントは次の通りです。
1.対象となる子供の範囲が拡大
これまで小学校就学前までが対象だった看護休暇が、小学校3年生修了までに拡大されるのは大きな変更点です。
2.感染症による学級閉鎖にも対応
コロナ禍の経験を経て、子供が病気でなくても感染症による学級閉鎖が発生した場合は休暇を取れるようになります。
3.入園・入学式などのイベントにも対応
これまで対象外だった入園式・入学式などの学校行事でも、看護休暇を取得することが可能になります。
4.入社後6カ月未満の従業員も対象に
これまで入社後6カ月未満の従業員は看護休暇の対象外でしたが、今後は対象となります。特に出産後に再就職したというような従業員にとっては、看護休暇の必要性は高いかもしれません。初めて子供を保育園に預けるなどで、これまでと生活が大きく変わり子供が体調を崩しやすいことも珍しくありません。そんな時に看護休暇を利用できるのは大きな安心材料となるわけです。
参考:厚生労働省「育児・介護休業法改正ポイントのご案内」
まとめ
今回は、子供の看護休暇について解説しました。
・子の看護休暇は子供の病気やケガの際に通常の年次有給休暇とは別に時間単位で取得できる制度
・病気やケガの程度など細かい条件はない
・2025年4月から対象となる子供の範囲が小学校3年生修了までに拡大し、学級閉鎖や入園式なども対象に。入社後6カ月未満の従業員でも取得可能になる
今後は、103万円の壁や106万円の壁の見直しなど、働き方に関する制度が大きく変わることが見込まれます。そんな中、ポイントのひとつになるのが子供です。経済的に不安が大きく子供を持たないという人、仕事と子育ての両立に不安があり思いきり働けないという人も少なくありません。政府が打ち出しているいくつもの少子化対策のひとつが、今回の看護休暇です。制度を知って上手に活用していきましょう。
看護休暇に関するQ&A
Q:共働き夫婦です。妻が主に子の看護休暇を取得していますが、今後、夫である私が取得した場合、取得可能な日数計算はどのようになるのでしょうか?
A:1年度において5日というのは子1に対してではなく従業員1人に対してです。そのため、夫と妻のそれぞれが5日取得することができます。夫婦が同じ会社であっても同様で、同時に取得することもできます。
Q:「始業時刻から連続」又は「終業時刻まで連続」して取得とありますが、就業時間の間に数時間の休暇を取得する、いわゆる「中抜け」は可能ですか?
A:上司に相談してみましょう。子の看護休暇は「完全に休む」、または「遅刻」、「早退」を想定した制度です。しかし、保育園からケガをしたなどの連絡があり仕事を抜けて様子を見た後、また仕事に戻るということも想定されます。政府はこういう場合も配慮して欲しいとしています。