2025年から要注意!建築基準法改正で自宅リフォームが難しくなる?
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住宅価格や建築費用の高騰が続く昨今、中古住宅を購入しキッチンや浴室といった部分的なリフォームや住宅全体を改修する全面リフォームを検討される方が増えています。しかしながら、2025年4月に予定されている建築基準法の改正(※)により、リフォームや全面リフォーム、リノベーションの計画にはこれまで以上の注意が必要となります。特に「四号特例の縮小」によって、これまで比較的自由度の高かった住宅リフォームに、新たな制約が加わる可能性が出てきました。
本記事では2024年に増加しているリフォームの背景を始め、建築基準法改正の具体的な内容、さらにその改正がリフォームにどのような影響を及ぼすのかを詳しく解説します。これからリフォームを計画される皆さまは是非参考にしてください。
リフォーム需要増加の背景
近年の住宅リフォーム需要が増加している背景には、様々な社会的要因が存在します。その要因のひとつとして、コロナ禍を契機にリモートワークが普及し在宅時間が長くなり、住環境への関心が高まったことです。リモートワークが増える中で、自宅の居心地や機能性を改善したいと考える人が増えました。また環境意識の高まりから、省エネルギー性能を向上させる断熱リフォームや環境意識に対応したエコリフォームのニーズも急増しています。
さらに、国や自治体による補助金制度がリフォーム需要を後押ししています。例えば、住宅の断熱性能を向上させる工事費用を一部補助する制度があります。このような補助金制度を活用することで、費用負担を軽減しつつ住宅の価値を高めることが可能となっています。
一方でこうしたリフォーム需要の高まりに水を差すかもしれないのが、2025年4月に予定されている建築基準法の改正です。この改正により部分的なリフォームや全面リフォームに関する手続きや費用に大きな変化が生じる可能性があります。その具体的な変更点について次章で詳しく見ていきましょう。
建築基準法改正における「四号特例の縮小」とそのデメリットは?
2025年4月に改正予定の建築基準法では、「省エネ基準の適合義務化」と「木造戸建住宅を建築する場合の建築確認手続き」が見直されます。特に建築確認手続きに関する「四号特例」の縮小はリフォーム工事に大きな影響を及ぼす可能性があり、注意が必要です。
四号特例とは、木造二階建てや平屋など一般的な住宅について建築確認・検査を不要とする制度でした。四号特例により、リフォームや新築工事のコスト削減や工期短縮が可能となり、多くの住宅にとってメリットが大きいものでした。
しかし2025年の建築基準法の改正によって、この四号特例の適用範囲が大幅に縮小されます。具体的には木造二階建てや200平方メートルを超える木造平屋建ての住宅が新2号建築物と定義され、大規模な修繕や模様替えを行う場合に、建築確認・検査が必要となります。具体的には次のような工事が該当します。
・部屋の増築や物置、カーポートの設置
・屋根の葺き替え(半分以上を下地から葺き替えた場合も含む)
・外壁の全体改修(半分以上を下地から張り替えた場合も含む)
・リノベーション・スケルトンリフォームなどの大規模な間取り変更
・階段の架け替え
・床の半分以上を下地からやり替える
クロスのみの張り替えや水回りのみの交換は確認申請は不要です。また、延べ面積200平方メートル以下の木造平屋建ての住宅は新3号建築物と定義され、審査省略制度の対象のままとなっております。上記の例はあくまでも一例なので、詳しくはリフォーム業者に相談してください。
つまり、設計や審査の基準がより厳格化されることになります。例えば、これまでは設計者の倫理観を信用して進められていた工事が、行政への構造計算書の提出や耐震性の詳細な審査を必要とするようになります。この変更は、安全性や耐久性を向上させるための重要な措置ですが、設計段階での手間やコストが増加することは避けられません。これにより設計段階での作業量が増え、工期が延びる可能性も出てきます。
「四号特例」縮小の影響が大きい工事とは?
法改正の影響を最も受けるのは、フルリノベーションや全面リフォームを検討している方です。木造二階建てや平屋を全面改修する場合、これまでの「四号特例」を利用すれば、比較的割安に工事を進めることができました。しかし特例の縮小により、今後は詳細な設計や検査が必要となるため、工事費用や工期が増える可能性があります。
例えば耐震補強を伴うリフォーム工事では構造計算が義務付けられるため、建築士への依頼費用が増えます。また建築確認申請に必要な書類が増えるため、役所とのやり取りに時間がかかり、工事開始が遅れることも想定されます。これらの変更は、特に予算やスケジュールに制約がある家庭にとって大きな負担となります。
さらに資材価格の高騰も問題です。木材や鉄鋼といった建築資材の価格が世界的に上昇傾向にあります。この影響は法改正による費用増加と相まって、リノベーションのコストに大きく反映される可能性があります。
これらの費用増大や工期延長により予算オーバーや引っ越し、入居の時期に影響が出るかもしれません。フルリノベーションを検討していた方々にとっては割安だった選択肢の喪失の可能性が生まれることになります。
四号特例の縮小で、リフォーム・リノベーション費用はどれくらい増える?
法改正による費用増加の影響は、設計・確認コストの増加、構造補強工事の追加費用、工期延長による人件費増加などがリフォームやリノベーション費用を押し上げる要因となるでしょう。
四号特例の縮小により、これまで簡略化されていた設計図や構造計算が必要になるケースが増えます。この影響で、建築士への依頼費用が上昇します。設計費用は、通常全体工事費の5~15%程度を占めますが、改正後は10~20%に増加する可能性があります。
また築年数が古い住宅では、構造計算の結果により構造補強や省エネ対策等が必要になるケースが出てきます。この場合、100万~300万円程度の追加費用が発生する可能性があるでしょう。特に耐震基準を満たしていない昭和56年以前に建築された住宅を全面リフォームする場合は耐震性の向上が大きな課題となります。さらに、省エネ基準の義務化に対応するため、断熱材の追加や窓の性能向上などが必要となり、リフォーム内容が複雑化することも費用増加の一因となります。
さらに設計・検査の手続きが複雑化することで、全体の工期が1~2カ月程度延びる可能性も出てきます。この工期延長の影響で人件費が増加することが考えられ、特に大規模な工事では大幅なコスト上昇が懸念されます。
リフォーム工事にかかる工事費用はリフォーム内容により異なり、一般的な部分改修の工事費は数十万円から可能ですが、全面リフォームになると費用相場は数百万円以上になることが多いです。特に中心価格帯としては1200万~1500万円が目安となることが一般的です。これが法改正後は、平均的に10~30%程度上昇するのでないかと筆者は考えています。
2025年4月の建築基準法改正、メリットはある?
2025年4月予定されている建築基準法の改正は、耐震性能や省エネ性能の向上を図り、エネルギー効率や安全性を高め長期的に資産価値が下がりにくい持続可能な住宅の実現を目指しています。
法改正はリフォーム会社や施主にとってデメリットが多いように見えますが、住宅性能が向上することにより資産価値を維持でき、さらに安心して長く住み続けることができることは私たちにとっても大きなメリットといえるでしょう。
まとめ
建築基準法改正は、住宅リフォーム工事の在り方を大きく変える可能性があります。この改正を改悪と考えるのではなく安全性や快適性を向上させるための改良と考え、マイホームの価値を高める機会と捉えましょう。
これからリフォームを計画する際は、専門家と相談しながら適切な情報収集と計画作り、リフォーム事例が多い信頼できるリフォーム会社の選定、住宅ローンやリフォームローンを賢く利用、国や自治体の支援策や減税制度の活用などを心がけ、改正後の新しい時代にふさわしい住環境を実現していきましょう。