よく聞く死亡保険の「定期保険」っていらない?特徴や必要性を解説
「FPに聞きたいお金のこと」、今回は20代男性から生命保険に関する相談で、「定期保険」が気になるという内容です。保険はいざという時に大変役に立ちますが、健康面にさほど心配のない20代の若い人たちにとっては加入するかどうか非常に悩ましいところです。将来は不確定であるため加入するかどうか、どのような保険に加入するのが良いのか?ということに正解はありません。自身の価値観やライフプランに合った考え方、後悔しない判断をしてもらいたいです。
20代独身男性からの相談内容
最近よく「定期保険」という言葉を耳にします。保険料が安いのが魅力とのことですが、とりあえず加入した方が良いのでしょうか?死亡保障については、今のところあまり必要性を感じていません。医療保険やがん保険には入っています。周りも保険に加入している人、そうでない人がいてどこまで備えておけば良いのか分かりません。
定期保険とは
定期保険は文字通り一定期間の死亡保険です。例えば60歳までに亡くなった場合、1000万円が死亡保険金として支払われますが、60歳まで生存していれば掛け捨てとなります。一般的に貯蓄性が低く、解約返戻金がないものが多いため、保険料が安いのが特徴です。
筆者の試算によると25歳男性が10年間1000万円の死亡保障の定期保険に加入する場合、月額保険料は数百円程度、30年間55歳までの保障でも月額保険料は1500円程度です。
20代の保険加入率は70%
生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」(2024年度)によると、個人年金を含む生命保険の加入率は2024年時点で89.2%と、大多数の世帯が何らかの保険に加入していることが分かります。ただし20代に限定すると69.5%と大きく加入率は下がります。2015年は77.5%だったため、ここ10年でやや加入率は下がっているようです。
ただ、これらは老後に備える個人年金が含まれています。現役時代の死亡保障としての生命保険の加入状況はどうなっているのでしょうか?同じく生命保険文化センターによる「生活保障に関する調査」(2022年度)によると、20代男性が46.4%、女性が57.1%となっています。このような調査結果を踏まえると、20代で独身男性だと死亡保障についてあまり必要性を感じていないというのは頷けます。
「貯蓄は三角、保険は四角」が意味するもの
20代の死亡リスクは非常に低いため、生命保険に加入する代わりにその分を貯蓄や投資に回すという考え方でも良いと思います。特に独身であれば、万が一の際の子どもの教育費などを考える必要もありません。
今後結婚をして子どもができても、公的年金には遺族年金制度があります。また若い人の多くが共働きです。自身に万一があった際も配偶者が生計を維持することができるケースが多いでしょう。
「貯蓄は三角、保険は四角」という言葉があります。これは、貯蓄は三角定規の斜辺のように少しずつ貯まっていくのに対して、死亡保険は加入した時点で1000万円といった保障が始まるため保険は四角と表現される理由です。
これは医療やがん保険でも同じことがいえますが、コツコツ貯蓄をしていく中で何らかのまとまった資金が必要になった際、貯蓄だけでは対応できない場合が考えられます。そのような状況になったら保険がカバーしてくれるかもしれません。もちろん、大きな障害を抱えることになっても労災や障害年金といった公的な社会保障もあります。こういったことを考えながら、定期保険が必要かどうか検討してください。
定期保険の加入判断は結婚してからでもOK
ここまで見てきたように今回の相談者の場合、今すぐ定期保険に加入する必要性は低そうです。結婚を機に改めて保険が必要かどうか検討しても良いでしょう。もちろん結婚後も定期保険に加入せず、貯蓄を優先するという考え方もあります。その際、考慮すべきなのが今後の大きなライフイベントです。例えば子どもが生まれた場合、教育費がかかります。
特に大学は私立大学に進学すると入学料と学費だけで年間100万円程度は必要となります。このような金額を夫婦でどのように準備するか?もしもの場合、貯蓄だけで賄うことができるのか?このように将来の大きなイベントを意識しながら保険の必要性を探ってください。
現時点で目を向けるポイントの1つは、死亡時の葬儀代への備えができているかどうかです。民間の調査によると葬儀代は100万~200万円ぐらいが相場です。今もしものことがあった際、この葬儀代を親や身内が負担するのか、自分で既にその分は用意できているのかなど、気になるのであれば葬儀代相当として、数百万円程度の定期保険に加入しておくのも1つです。