「3月の残業は損」「車売るなら3月中」って本当?年度末の噂を検証

【画像出典元】「stock.adobe.com/Dragon Claws」
都市伝説のように「○○するのは年度末にするのは損」というような言葉を耳にすることがあります。例えば、「3月の残業で社会保険料が増える」「車の売却は3月が得策」「退職日は月末前日が良い」など。これらは本当なのでしょうか?本記事では、年度末になるとよく聞くそれぞれのケースを制度面から解説して検証していきます。
3月に残業すると社会保険料が上がる?
会社員が毎月支払う社会保険料ですが、その算定基準になるのは4~6月の給与です。この給与には交通費や手当、残業代も含まれます。そのため、4~6月の給与計算に影響する3月から5月までの残業を控えよう、という話が広まっています。
社会保険料の仕組み
社会保険料(厚生年金、健康保険、介護保険)は、4~6月の給与平均(標準報酬月額:簡単に言うと、この期間の平均的な収入)に基づいて年間(9月~翌年8月)の保険料が決定されます。残業代が翌月支給の場合、3~5月の残業が4~6月の給与に影響するため、「3~5月の残業が多いと1年間損をする」と言われる原因になっています。
社会保険料は「払うだけ損」ではないメリットもあります
社会保険料は将来の年金受給額、傷病手当金、出産・育児関連の給付、失業給付などに影響します。社会保険料を多く払っているほど、給付を受ける際に多くもらえる可能性があります。
極端な繁忙期の場合の救済措置「年間報酬の平均で算定」
毎年3~5月だけ極端に繁忙期で、その他の月には残業がほとんど発生しない場合、「年間報酬の平均で算定」という仕組みで保険料が調整されることがあります。この制度の対象条件を満たせば、一時的な収入増による保険料の急増を抑えることができます。
3~5月の残業が後の社会保険料に影響するのは事実ですが、将来の年金や傷病手当金などの受給額に影響するため、必ずしも損とは言えません。
ただし、短期的な収入増による社会保険料の負担増を懸念する声は少なくありません。特に近年は税金や社会保険料への関心が高まっているため、3~5月の残業を避けたいという人も少なくないというのが実情でしょう。
「車は3月に売るべき」は本当?軽自動車と普通自動車で異なる税金

自動車の所有者には自動車税の納税義務があります。自動車税は4月1日時点での所有者に課されるため、3月中に車を手放せば税金を払わなくて済むという理由です。確かに3月中に手放して4月1日時点で所有していなければ課税はされません。しかし、4月以降に自動車を売却し課税されたとしても、全額ではありませんが後から払い戻しを受けることができます。そのため、そこまで神経質にならなくても良いのではないでしょうか。
軽自動車は3月中の売却が得策
なお軽自動車に係る軽自動車税については、普通自動車の税金とは少し事情が異なります。普通自動車に対する税金は月割りベースで計算されますが、軽自動車税は4月1日時点の所有者が1年分をまとめて納税し、年度の途中で売却しても返還されません。税金のことだけを考えれば3月中に売却をした方が良いでしょう。
「会社を退職する時は月末の前日が良い」は本当?

会社を退職する際、退職日を月末の前日にした方が良いという話があります。その理由は社会保険料に関するものです。月末時点で会社に在籍していると、その月の社会保険料が給与から天引きされます。しかし、月末の前日に退職すれば、その月の社会保険料の支払いを回避できるという考え方です。ただし、このメリットは条件次第です。
配偶者の扶養に入る場合
退職後、配偶者の扶養に入り社会保険上の3号被保険者になる場合、健康保険料や年金保険料を支払う必要がなくなるため、月末前日に退職することで社会保険料の負担を軽減できるメリットが生じます。
扶養に入らない場合
健康保険料や年金保険料の空白は認められないため、配偶者の扶養に入らない場合は社会保険料を支払わなければなりません。そのため、このようなケースでは月末前日に退職することによる経済的メリットはありません。
まとめ
お金に関連することには「○○までにXXした方が良い」というような噂話がいろいろな形で聞こえてきます。噂話は興味深いものですが、実際はそうでもないということの方が多いと思います。ただし自動車税と軽自動車税のように制度上で明らかに違いがあるものや、年度替わりで制度が変更されることもあります。噂を鵜呑みにせず、興味を持って自身で調べてみることも大切でしょう。