若い世代は外国へ投資するべきか、国内に投資をするべきか問題

新NISA、人気上位は「外国株への投資」
2024年1月から新NISAがスタートし、大きな話題となりました。実際、新NISAを通じた2024年の投資金額は合計15兆円に近づく規模となったようです。
このうち、外国への投資金額が大きいことがしばしば話題となっています。投資信託商品の買付額の一定割合はNISA経由ですが、人気上位の商品は「米国株」「全世界株式」に投資されるものです。
これらの商品の魅力のひとつは、低コスト運用が可能であることです。個人が銀行窓口で投資信託を購入できるようになった当初(投信窓販の規制緩和が実現したのは1998年12月)、外国株式への投資はコストが高い選択肢でした。
購入金額に別途販売手数料が数%かかり、信託報酬が年数%かかることは普通でした。ところが今、NISAのつみたて投資枠で購入する投資信託はノーロード(販売手数料を取らない)であり、前述の人気投資信託は年0.1%以下の運用コストとなっています。
米国やユーロ地域、あるいは新興国に対してグローバルに投資をする選択肢が現実的なものとなり、2024年はその傾向がはっきりと示された、といえます。
日本に暮らす人は日本に投資するべき?
ところが、「海外に投資資金が移動するのは好ましくない」という意見を耳にすることがあります。日本国内で税制優遇を講じているNISA制度を通じて、海外に資金流出しているのはおかしいという考え方です。
国内の企業を支えるためにNISAの投資資金はもっと用いられるべきで、国内の株式をもっと購入するべきだ、というのですが、これをどう捉えるべきでしょうか。
私は、若い世代は気にする必要はないと思います。仮に海外に資金が流出したとしても、海外の株式会社の成長が日本人の資産の増加に繋がり、いずれは売却して国内での消費に用いるわけですから、むしろ「海外から資金を持って帰り、日本で使う」構造になるはずです。
また、国内に資金が向かっていない、というわけではありません。国内については「投資信託」を通じての投資資金だけでなく、「個別銘柄」を購入する形での投資資金が入ってきています。また、全世界に投資をする投資信託は国内株も約10%程度が運用に含まれています(全世界のGDP比で指数が定める割合。変化することもある)。
むしろ、投資の世界では「日本人は日本国内に投資をしすぎているのではないか」ということが長年にわたって問題視されてきました(カントリーバイアスという)。ですが個人はあまり気にしなくてもいいでしょう。
グローバルに投資をすることは若い世代にとって重要な選択肢
グローバルに投資をする、ということは居住地以外の経済成長を、自身の資産形成に組み入れることができるということです。それは決して悪いことではありません。経済成長は世界で均一に生じるわけではないので、日本以外の経済成長率が高い時はその上昇を自身の資産増に変えることができます。
仕事をする場所、生活をする場所を経済成長が高いエリアに変え続けていくことはできません(今年はアメリカ、再来年はユーロ圏のように転職、引っ越しすることは不可能です)。しかし、グローバルに投資をすればあなたの資産についてはグローバルに運用することが可能というわけです。
そして、グローバルな投資を通じて知見が広がることもポイントです。米国株式で運用する投資信託を購入すれば、自ずと米国経済へのニュースが気になり始めます。全世界株式で運用する投資信託を購入すれば、世界の政治経済、あるいは紛争などのニュースを見る目が違ってくるでしょう。
最近のニュースアプリは、あなたの興味関心によってサジェストするニュースが変化していきますが、あなた自身の興味関心が変化していくことで、表示されるニュースの質も変わっていくことになるはずです。
最初は軽い気持ちで始めたグローバルな資産運用が、もしかしたらあなたの目に見える世界を変えてくれるかもしれません。国内だけに目を向けているより、いいことではないでしょうか。
ただし、海外への投資が持つリスクも確認しておこう
ただし、海外へ投資をする人は、そのリスクもきちんと確認をしておきましょう。
2024年の海外市場は確かに大きく上昇しました。例えば米国の代表的株価指数であるS&P500は23%も一気に上昇し、投資家の資産を大きく増やしました。これに円安の傾向が加わり、円で見ると大きな上昇が見られています。
海外の株式市場の成長率は高いものの、それが毎年安定的に続くとは限りません。平均的に考えても、年7%くらいが通常の値上がり幅というところでしょう(例えば国の年金運用は海外株式の期待リターンを年7.2%と想定しています)。これを大幅に超える利回りが何年も続き、一度も下がらないというのは考えにくいことです。
地政学的なリスクが顕在化した場合、市場は急落することがあります。あるいは、あまりにも順調に推移しすぎた経済が短期的には下落し、調整を図ることもあります。
どちらの場合も、長期的な視点でみれば回復を果たし、さらなる経済成長や株価の上昇に繋がると考えられますが、「今年も来年も、数十%の値上がりがいつまでも続く」「値下がりはない」と安易に考えないことが大切です。
そして、短期的な値下がりがあってもグローバルな投資を継続していくことが大切です。2024年8月には短期的に下落した相場となりましたが、焦って損切りした人だけが損をしました。焦って手放さなくてもいいくらいの投資額に留めておくことも海外への投資のポイントでしょう。
若い世代の資産形成において、投資に価値があることは間違いありません。上手に組み入れ、運用に活かしてみてください。
※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。