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EVアメリカでは実際どの位普及しているの?自動車保険料は高い?

N.Y.発、安部かすみの今気になる最新マネートピック 安部 かすみ(あべかすみ)

EVアメリカでは実際どの位普及しているの?自動車保険料は高い?

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近年、日本をはじめ世界各国で環境問題への関心が高まっており、注目を浴びているのがEV(電気自動車)です。アメリカにおけるEVの売り上げはどの程度でしょうか。またそれに伴う自動車保険の動向はどうなっているのでしょうか。本稿ではアメリカの最新EV事情について深掘りします。

欧州や中国でEVの普及進むも日米では...

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日本をはじめとする世界中で今、環境問題が重要視される中、EVの導入拡大にも関心が寄せられています。EVは2024年の世界の自動車販売の20%弱と言われています。

IEA(国際エネルギー機関)のデータをもとにした専門機関の最新資料によると、世界のEVの普及率(新車販売台数に占めるEVの比率)は2023年時点で18%でした。20年は4.2%、21年は9%、22年は14%と上昇傾向にあり、特に21年以降の上昇幅が大きいことがわかります。

国別の新車販売台数に占めるEVの普及率(23年)はノルウェーがもっとも高く93%。続いてアイスランド、スウェーデン、フィンランド、デンマークと北欧諸国が続きます。

ヨーロッパ諸国に加え中国も上位を占めています。中国ではEVの販売数が近年飛躍的に伸びていると伝えられています。

一方でアメリカは9.5%*、日本は3.6%と日米では普及率がそれほど高くないことがわかります。データを見ても実生活としても、EVの普及においてはまったく日米の存在感がありません。アメリカにおけるEVの販売や普及率が、ヨーロッパや中国と比べてそれほど勢いがないというのは事実でしょう。

*米コンシューマーレポートでは、アメリカ国内での「23年の小型車販売台数の16.3%をEVが占めた」という情報もあります。

アメリカでのEV最新事情

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とは言え、アメリカでEVの売上が過去数年間で増加しているのは確かです。ニューヨークに住んでいる筆者は最近、マンハッタンでテスラのサイバートラックが2台路上に駐車されているのを連続で目撃し、時代の移り変わりを実感したところでした。だからと言ってEVが爆発的に増えているかというと疑問が残ります。「販売数が期待値には届いていない」と言うのが的確でしょう。

ニューヨークでも最近よく見かけるようになったテスラのサイバートラック。(c) Kasumi Abe

メディアでは、23年暮れごろからEVの需要が低下していると囁かれ始め、GMやフォードなどの自動車メーカーは生産計画の縮小や新モデル発売の延期を発表しました。

各メディアでも「2030年までにEVを大量導入するというメーカーの急速な推進は行き詰まっている」(米フォーブス)、「EVの熱狂は終わった」「EVをめぐる話題は薄れつつある」(共に米CNBC)などと報じられてきました。

ブルームバーグNEF(24年11月)をはじめとする複数の資料によると、前述の通りアメリカにおけるEV販売台数は欧州や中国に比べるとだいぶ低いのは事実ですが、それでも24年第3四半期の販売数は過去最高値の約36万台以上になるだろうとの予想がされました。24年の1年間で見ると、その前年比から7.3%増の130万台の販売数になるだろうということでした(数字は暫定データ)。

これらの成長には、日本車の好調な業績も影響していると伝えられています。ホンダのEV『プロローグ』など、優れた新型車が市場を牽引したという専門家の指摘も見受けられました。

参考程度ですが、24年にアメリカでもっとも売れたEV上位トップ10はこちらです。

Tesla Model Y(約37万台)
Tesla Model 3(約19万台)
Ford Mustang Mach-E(約5万台)
Hyundai IONIQ 5(約4.4万台)
Tesla Cybertruck(約3.8万台)
Ford F-150 Lightning(約3.3万台)
Honda Prologue(約3.3万台)
Chevrolet Equinox EV(約2.8万台)
Cadillac Lyriq(約2.8万台)
Rivian R1S(約2.6万台)

では、EVが期待されているほどアメリカで根付かない(売れない)のはなぜでしょうか?

若い世代は高齢者よりもEVの購入に前向きな傾向があります。ある世論調査で対象となった10人に4人は次の買い替えの際に「EV購入はなきにしもあらず」と答えました。一方で46%が「EV購入の可能性はほとんどない」または「まったくない」と答えています。

鬼門となっているのは価格の問題、そして充電のインフラ問題でしょう。自家用車の買い替えの際にEVを検討しない主な理由として「価格が高い」や「EV充電ステーションが近所に少なく不都合だから」という声が多く上がっていると、CBSニュースやNBCニュース(共に24年)の報告で伝えられています。

まず価格について見てみましょう。
アメリカではEVの新車の平均価格(24年2月)は5万2314ドル(約810万円)。前年比と比べて12.8%減ですが、それでも全新車の平均価格、4万7244ドル(約730万円)より割高です。

価格差は年々縮まってはいます。「22年には新車のEVとガソリン車との価格差は平均1万7000ドルだったが、24年2月にはその差はわずか5000ドルにまで縮まった」(参照CNBC)。それでもまだEVはガソリン車より割高であるのは事実です。現在アメリカでは、EVの購入に対して税額控除が適用されていますが、なかなか販売実績には結びつかないようです。


次に充電のインフラ問題です。
EV充電ステーションの数が足りないこと、そして充電に時間がかかり過ぎる不便さも消費者が購入の判断に二の足を踏む理由になっているでしょう。

また時々不具合が起きる不完全な充電設備への不安、例えば、バッテリー切れといった「航続距離不安」が消費者にあるという声も聞こえます。

EVの急速充電器はアメリカで2030年までに18万2000台が必要と見積もられていますが、今のところ国内の充電器は4万台未満に留まり、その約4分の1が全米でEVの普及、そして政策やインフラ整備が進んでいるカリフォルニア州にあります(参照CNN)。

自動車保険料も高額?

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価格が割高なのはEV本体のみではありません。自動車保険料もEVはガソリン車より割高です。

米保険比較サイト、Insurifyの最新の報告によると、EVのフルカバー自動車保険の平均価格は年間3430ドル(約53万円)。これは通常のガソリン車と比較して23%も割高です。

これは単にEVだから特別の割高保険料が適用されているわけではなく、EVの定価が高いこと、そして修理費も高く修理工場も少ないため月々の保険料も高くなっているのです。

EVに切り替えると車の燃料費は少なく、エンジンオイルの交換などが不要なためメンテナンス費用も安く済みます。しかしその分車の本体価格、そして自動車保険料も割高なのです。さらに、インフラ整備の遅れによる利便性の低さや長距離走行に対する消費者の不安が、アメリカにおけるEV普及の伸び悩みの最大の課題になっていると言えるでしょう。