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妻にも収入保障は必要?共働き夫婦に本当に必要な保険は?FP解説

FPにききたいお金のこと 中村 賢司

妻にも収入保障は必要?共働き夫婦に本当に必要な保険は?FP解説

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結婚、出産などでライフイベントが変わるタイミングは保険を見直すタイミングでもあります。今回の「FPに聞きたいお金のこと」は、既にたくさんの保険に加入して将来に備えNISAでも積み立てをしている20代女性からのご相談。間もなく迎える出産を機に加入している保険の確認と妻としての死亡保障の必要性、さらに教育資金の準備方法についてのご質問をいただきました。

20代共働き夫婦のHさんからの相談

保険の見直しについてご相談です。夫婦共働きで、もうすぐ子どもが生まれる予定です。夫(個人事業主)も私(会社員)も現在、医療保険・がん保険・個人年金保険に加入しています。NISAで積み立てもしています。

収入保障は夫のみ加入しているのですが、私も加入した方が良いのでしょうか?公的保障もあるため、そこまで必要ないようにも思っています。また、保険の加入期間はどれくらいを目安にすれば良いでしょうか?子どもの教育資金については、NISAで積み立てて備えようと思っています。他に良い方法があれば教えていただきたいです。

見直しは必要?夫婦で民間保険の加入状況の整理を

民間保険
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まず、現在ご夫婦で加入している保険を整理してみましょう。

ご夫婦とも、病気やケガの備えとして、医療保険、がん保険に加入しています。この点については貯蓄の少ない20代にとっては不測の事態に備える保障として必要だと考えます。

さらにご主人だけが収入保障保険に加入していますが、これからお子さんが生まれるタイミングでは世帯主として必要な保障でしょう。またご主人は自営業とのことなので、会社員や公務員と違って公的保障や職場の福利厚生制度はなく、大きめな保障が必要だと考えます。収入保障保険の保険金額をよく確認しておいてください。

また、ご夫婦で老後に備えて個人年金保険にも加入されているとのことで、20代から将来の事を考えることは大変素晴らしいと思います。しかし、これからお子さんが生まれると今まで以上に出費がかさみ、家計への負担感が重くなるかもしれません。

また、およそ40年後の老後資金を積み立てるのに、個人年金保険では将来のインフレに対応できないのであまりおすすめではありません。所得控除で節税でき、インフレに対応する投資信託で運用できるという観点からは「iDeCo」の方がおすすめです。

iDeCoは、掛金拠出時に掛金が全額所得控除となり、運用期間中の運用益についても非課税、また受取時には退職所得控除が適用されるので、3つの税制メリットがあります。しかしこの退職所得控除が、2025年(令和7年)の税制改正大綱で改正となり、iDeCoも退職金もそれぞれ両方でフルに控除が受けられる期間が5年から10年に変更となり、制度の改悪だと話題になっています。

それでも加入期間中の所得控除のメリットと、インフレに対応する運用ができる点からは、加入してまだ間もない個人年金は解約して、今のうちにiDeCoに切り替えることをおすすめします。

妻に収入保障保険は必要?公的保障・企業保障をチェック

相談者のHさんが気になっているのは、「自分(妻)も収入保障保険に入る必要があるのか?」という点です。結論から申し上げると「奥さまが万が一亡くなった場合、ご主人とお子さんが金銭的にどの程度困る状況になるか」によって必要かどうかが変わります。

会社員である奥さまが亡くなった場合、遺されたご主人やお子さんには「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」が支給されます。その金額は奥さまの給与、子どもの年齢などによって変動しますが、一般的には奥さまの収入がそこまで高くなくても、一定の遺族年金を受け取れます。

例えば、奥さまの毎月の給与が25万円だった場合、毎月約12万円の遺族年金をお子さんが18歳になるまで受給することができます。

さらに会社員であれば、勤務先の福利厚生制度で死亡退職金や弔慰金、慰労金などが支給される場合があります。大企業であれば規定が整備されていることが多いですが、中小企業の場合は金額や制度そのものがないケースもあります。勤務先の就業規則や総務・人事部に確認してみるといいでしょう。

上記を踏まえ、公的保障と勤務先の企業保障で不足があれば収入保障保険を検討すると良いでしょう。いくらもらえるのか、あらかじめ確認しておくことで無駄な保険に入らなくてすみます。

そもそも何のために保険に加入するのか?

生命保険に加入する目的は、大きく分けて2つあります。
1.    世帯主の万が一に備える
2.    夫婦が病気やケガになった時に備える

1は世帯主が亡くなった場合、遺された配偶者とお子さんの生活費や、教育資金などを賄うための保障です。2は病気やケガで入院した場合、医療費の負担を少しでも減らすためや働けなくなった場合の生活費を補うための保障です。

Hさんの場合、ご主人は個人事業主であり、会社員に比べると公的保障(遺族年金)がやや手薄になる傾向があります。そのため、ご主人が「収入保障保険」を既に加入しているのは、遺された家族の生活費をカバーする上で必要性は高いと言えます。

一方で、会社員である奥さまは国民年金に加えて厚生年金にも加入しているので、死亡時には遺族基礎年金と遺族厚生年金が支給されます。さらに勤務先からの死亡退職金が支払われるようであれば、収入保障保険は加入しなくても間に合うかもしれません。

医療保険やがん保険は、病気やケガの入院に備えるための保険です。現在の日本の公的医療保険制度では、高額療養費制度によって医療費が一定額を上回った場合は負担を抑えられます。しかし、差額ベッド代や先進医療費などの自己負担分は公的保障ではカバーされない場合もあるため、医療保険やがん保険の加入は安心材料にもなります。

生命保険の加入はいつまで必要?「終身」「定期」の選び方

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生命保険は長期にわたって保険料を支払うことになるため、期間の設定は慎重に行う必要があります。一生涯保障が続く「終身タイプ」、一定期間だけ保障する「定期タイプ」があります。

医療保険やがん保険は終身タイプがおすすめです。病気やケガは一生涯にわたって起こりうるリスクがある上、年齢を重ねるごとにそのリスクは高くなります。よって終身タイプが安心です。年齢が上がるほど保険料も高くなり、健康状態によっては新規加入が難しくなる場合がありますので、若いうちに十分な保障内容で終身タイプに加入しておくと良いでしょう。

一方、収入保障保険などの死亡保障は、遺された家族が経済的に自立するまでを目安に考えると定期タイプが良いでしょう。具体的にはお子さんが大学を卒業して就職する頃までを想定することが一般的です。お子さんの誕生前後から20~25年程度を想定した期間設定が現実的でしょう。

教育資金の準備、NISAではどんな運用がいい?

Hさんはお子さんの教育資金をNISAで積み立てて用意しようとお考えのようですが、これは長期投資前提のNISA制度をうまく活用する一つの良い方法です。

ただし教育資金は必要となるタイミングが決まっていますので、リスクの高い商品を選ぶと必要な時期に相場の影響で評価額が大きく下がっている可能性もあります。

よって、リスクを取る運用と言っても外国債券や国内債券などの投資信託を選び、低いリスクで運用することをおすすめします。

一般的に教育資金として使うお金は値動きに左右されすぎないことが大切です。株式100%の投資信託よりも、国内外の債券と株式を組み合わせたバランス型の投資信託を選ぶなど、比較的リスクを抑えた商品でコツコツ積み立てを続けるのがおすすめです。

必要となる時期が近づいてきたら、徐々にリスク資産を減らして現金や債券に移すことも検討してみましょう。

まとめ

生命保険は毎月の保険料だけを見ると負担感が少なく感じるかもしれませんが、積み重ねると保険期間中に支払う保険料の総額は大きくなります。「本当にその金額を払ってまで保障を確保したいのか?」を常に意識しましょう。

特に、共働き世帯の場合は双方に公的保障や勤務先の保障があることも多く、万が一の家計のダメージがどこまで深刻かは家庭により異なります。

よって次のポイントを押さえておきましょう。
1.    保険は「何のために備え、どのくらい必要なのか」を明確にする
2.    世帯主の万が一の場合には収入保障保険が有効
3.    医療・がん保険は生涯にわたるリスクに備えるため、終身タイプがおすすめ
4.    死亡保障(収入保障保険)は子どもが就労するまでを目安に考える
5.    20代には個人年金保険よりiDeCoがおすすめ
6.    教育資金をNISAで運用する場合はできるだけリスクを低めに

保険と投資はどちらも「家計の安心」をサポートする手段ですが、必要以上の加入やリスクを取り過ぎた運用は避け、無理のない範囲で備えることが大切です。 

※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。