金が5年で約3倍の1g 2.3万円台に、なぜ今金の高騰が続くのか
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監修・ライター
10月14日、金の価格が初めて1グラムあたり2万2000円を超えたことが大きなニュースになりました。さらに10月21日時点では2万3000円を超えています。このところの円安で円建てではより割高感がありますが、金の価格高騰が進んでいるのは、日本だけではありません。10月8日、金の国際価格が1トロイオンス(31.1034768グラム)あたり4014ドルを付け、史上最高値を更新したのです。なぜ今、金の価格は高騰し続けているのでしょうか。そして、この値上がりは今後も続くのでしょうか。
金価格は5年弱で3倍以上に
ここ数年、「金が値上がりした」というニュースを目にする人が多いのではないでしょうか。実際に金の価格は上がり続けています。国内価格の指標となる田中貴金属工業の店頭小売価格は、2020年1月の平均で1グラムあたり5524円(税抜)でした。それが右肩上がりに値が上がり、2024年9月平均では17429円(税抜)に。わずか5年弱の間に金の価格は3倍以上に高くなったというわけです。
長期的に見ればより顕著に値上がりを実感できます。たとえば、今から25年前の2000年の金の価格は1グラムあたり大体1000円ほどです。ちょっとむなしい計算になってしまうかもしれませんが、2000年に100万円分の金を買っておけば、塩漬けしているだけで今頃その価値は1700万円を超えるものになっています。
なぜ金価格は高騰する?
それではなぜ、金価格は高騰の一途をたどっているのでしょうか。理由はいくつかありますが、最も大きな要因は世界情勢の不安定化と考えられています。読者の皆さんは「有事の金買い」という言葉を聞いたことがありますか?読んで字のごとく、戦争や金融危機、パンデミックなどの「有事」が発生した際に投資家が金の購入に動くことを指します。
現在の世界情勢を見渡してみると、ウクライナ情勢は膠着化し、台湾有事はいつ起こるともわかりません。加えて、中東情勢も泥沼化。まさに、今は「有事」。金価格が上がるのも当然というタイミングなのです。
なぜ、いろいろある金融商品のうち、有事の際に金が選ばれるのでしょうか。それは、金が他の金融商品と比べて安全性が際立って高いからです。多くの人が金を「安全資産」とみなす大きな理由は、企業の経営破綻などの影響を受けにくい点にあります。たとえば、2008年9月に起きたリーマンショックの影響を受け、本国アメリカのみならず世界中の株式市場が暴落しました。日本でも同年10月27日にバブル崩壊後の最安値(7162円90銭、終値ベース)を更新しました。
ところが金は株式や通貨と違って発行体がなく、それ自体に価値があるものです。企業が破綻してしまえば、その企業の株式は無価値になりますが、金であれば、どの企業が破綻に追い込まれようと、その価値がゼロになることはありません。また、世界中のどこでもすぐに現金化できる点も、資産としての金のメリットです。
金の高騰はいつまで続く?
中長期的に金が値上がりしているのには、まだ理由があります。それは、金の需要が増えているから。モノの値段は需要と供給のバランスで決まり、需要が供給量より多ければ、価格は上がります。2000年以降、中国とインドは爆発的な経済発展をし、富裕層が一気に増えました。そうした富裕層が安全資産である金を購入しているのです。
これまでに人類が採掘してきた金の量は17万~19万トンと言われています。オリンピック公式プールの約3.5~4杯分です。そして、現在まだ採掘されていない金の量は約5万トンで、現在の採掘ペースでは、約10~20年後に枯渇する可能性があると言われています。つまり、いくら需要が大きくても近い将来、金の供給量は増やしたくても増やせないとなる可能性があるわけです。希少性が高まれば、より金の価値は上がっていくでしょう。
世界情勢の安定化もなかなか見通せない中、金の希少性はより高まっていく――。この2つの要素を組み合わせると、金価格の高騰はこれから先も続いていくと考えた方が自然でしょう。
と、この原稿を書いたのが10月20日。しかし、そのわずか2日後の10月22日、高騰が続いていた金価格が急落したことが報じられました。中東の紛争や米中の貿易摩擦などの警戒感がやや薄らいだため、金から株式などほかの資産に資金が流れたと市場関係者の間では考えられています。
このように、短期的には価格が下落することもあり得ますが、長期的には金価格は上がっていくと筆者は見ています。それは、中東情勢にしろ、ウクライナ情勢にしろ、米中の貿易摩擦や台湾有事にしろ、根本的には解決していないからです。実際に、田中貴金属の店頭小売価格は、10月22日に1グラムあたり21830円(税込、前日比-1540円)まで下落しましたが、24日には22372円(税込)まで反発しています。
とりあえず筆者は、長期的には価格が上がり続けるものと考えて、お小遣いの範囲で金取引を始めてみたいと思います。
※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。

