がんに罹る20~30代の8割は女性!負担を減らせる「高額療養費制度」とは?
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いまや2~3人に1人かかるといわれる「がん」。20~30代のがんの8割は女性とされており、特に注意が必要です。がんに罹ると何にどのくらいお金がかかるのか、また治療費を支援する公的な制度、高額療養費制度についてFPが分かりやすく説明します。
20代~30代でかかるがんの種類と罹患する確率、男女別傾向
国立がん研究センターによると2017年に新たにがんと診断された罹患数は、97万393例、そのうち男性は55万8869例、女性は41万8510例となっています。
がんの罹患数で多い部位は、
1位 大腸がん
2位 胃がん
3位 肺がん
の順です。男女別に見ると、
男性
1位 前立腺がん
2位 胃がん
3位 大腸がん
女性
1位 乳房がん
2位 大腸がん
3位 肺がん
の順となっています。
また、生涯でがんに罹患する確率は、男性63%、女性48%となっており、2人に1人はがんに罹患する確率となっています。年齢別、男女別に見ると以下の表のとおりです。
現在の年齢から将来がんに罹患する確率【男性】
現在の年齢から将来がんに罹患する確率【女性】
この表を見る限りでは、20代、30代の人が10年後、20年後がんに罹患する確率は極めて低いのですが、若い世代では男性の罹患率より女性の罹患率の方が2倍以上高いことに注目すべきです。※出典元:国立がん研究センター「最新がん統計」
若くても女性の場合、乳がんや子宮頸がんには注意が必要です。日本人女性がかかるがんの中で最も多いのが乳がんです。乳がんは20代から徐々に増えはじめて40代後半から50代にピークを迎えるのですが、30代に急激に増加するのが特徴です。
また子宮がんには、子宮の奥にある子宮体部にできる子宮体がんと、子宮の入り口にあたる頸部にできる子宮頸がんがあります。前者の子宮体がんは40代後半以降閉経前後によく見られますが、子宮頸がんは近年20代~30代の方に急増しています。
子宮体がんも子宮頸がんも、初期の段階ではほとんど自覚症状がなく、進行してくると不正出血や下腹部の痛みなどが見られるようです。くれぐれもご注意ください。
次はがんの治療にはどんなお金がかかるか見ていきましょう。
がんの治療にかかるお金にはどんなものがある?
がんの治療は長期にわたり、予想以上に医療費が高額となることがあります。具体的にどのような治療費がかかるのか見ていきましょう。
まず直接治療にかかるお金としては、
・血液検査、CT、レントゲン、エコーや生検などの検査費用
・診察費用
・手術費用
・調剤薬局で支払う薬代
・病院で支払う抗がん剤治療などの薬代
・入院費用
などがあります。
その他、直接治療にかかるお金ではないですが、
・通院のための交通費やガソリン代
・生命保険の請求に必要な診断書作成料
・入院時の日用品や個室代(差額ベッド代)
・入院時の食事代
などがあります。
これだけ治療にかかるお金を挙げると、かなり経済的な負担が多くなるように思いますが、このような負担を軽減するために、病院でかかる費用には高額療養費制度という制度がありますので、安心してください。
医療費の負担を軽くする高額療養費制度とは
高額療養費制度とは、医療費の自己負担(窓口で支払った治療費)を軽減してくれる制度です。病院や薬局で支払う金額が一定額を超えた場合、その超えた金額が後から払い戻されます。ただし、入院時の食費代や個室料(差額ベッド代)等は含みません。具体的なイメージは下図のとおりです。
【例】69歳以下・年収約370万円~770万円の場合(3割負担)
100万円の医療費で、窓口の負担(3割)が30万円かかる場合
この場合、21万2570円を高額療養費として支給され、実際の自己負担額は8万7430円となります。この自己負担限度額は年収により異なります。
医療費の自己負担限度額の目安(69歳以下の上限額)
高額療養費の対象となるのは、月単位で医療機関等へ支払った医療費となります。具体的には、保険適用される診療に対し支払った医療費や院外処方で支払った費用、医療機関が発行した処方箋により薬を受け取った場合の薬代などが対象です。
高額療養費の対象となるもの、ならないもの
高額療養費には対象とならない医療費もありますので、注意が必要です。
・保険適用外の医療費
・入院時の食費代
・差額ベッド代
・先進医療にかかる費用
・交通費 など
これらは高額療養費には含まれません。
医療費控除と高額療養費制度の違いは
高額療養費と所得税の計算に用いられる医療費控除は混同されやすいのですが、高額療養費は自己負担を軽減する制度であり、医療費控除は税金の負担を軽減する制度ですのでお間違えのないように。
医療費控除とは、1月1日から12月31日までの1年間に支払った医療費の自己負担総額が10万円を超えた場合、その超えた金額を所得から控除できます。この金額は、ご自身の医療費だけでなく、扶養している家族全員分を合算できるので、この制度を利用している人はたくさんいます。
サラリーマンや公務員の場合、給料から源泉徴収された所得税が、翌年確定申告することで還付されます。また、翌年の住民税もそれに合わせて低くなりますので、1年間を通して医療費にかかった費用の領収証は保管しておくようにしましょう。
この医療費控除の対象となるものには、
・診療または治療に伴う費用
・通院交通費(ガソリン代や駐車料金は除く)
・医師などの送迎費
・入院時の部屋代(医師の指示があり必要な場合)
・食事代
・医療器具購入費
などがあります。また処方箋以外にも治療や療養のために薬局やドラッグストアで購入した市販薬も含まれます。
自己負担額がさらに軽減される「世帯・同一合算」とは
高額療養費制度には、自己負担額がさらに軽減される仕組みもあります。以下の場合は、医療費の負担額がさらに軽減される可能性がありますので、該当するかどうか確認しておきましょう。
・1カ月の間に複数の医療機関を受診した
・1カ月の間に同じ世帯の複数人が医療機関を受診した(世帯合算)
・1年間に3回以上高額療養費制度を利用した(多数回該当)
・1年間に公的医療保険と介護保険の両方を利用した(高額医療・高額介護合算療養費制度)
世帯合算とは、一人1回分の窓口負担では上限額を超えない場合でも、複数の受診や同じ世帯にいる家族(同じ医療保険に加入している方に限る)の受診について、窓口でそれぞれ支払った自己負担額を1カ月単位で合算することができます。その合算額が一定額を超えたときは、超えた分を高額療養費として支給します。
多数回該当とは、1年間に3回以上、上限額に達した場合は、4回目から「多数回」に該当して下記のとおり上限額が下がります。
多回数該当の場合の自己負担額(69歳以下の場合)
次は高額療養費の申請の方法や、注意事項についてです。