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自己資金なしで住み替えできる!「住み替えローン」の進め方を解説

かりる 中村 賢司

自己資金なしで住み替えできる!「住み替えローン」の進め方を解説

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子供の成長や転勤・転職、ご近所とのトラブルなど、さまざまな理由で自宅の住み替えをしたいと考えた場合、ネックとなるのが住宅ローンです。

住宅ローンを返済中の自宅を売却して新しい家を購入しようとする際、自宅の売却代金でローンを完済できれば、新しい家でも改めて住宅ローンを組むことができます。しかし売却代金が住宅ローンの残債を下回っている場合は住宅ローンを完済できません。

このような場合は、「住み替えローン」を利用すれば、今の住宅ローンを完済し、新しい家でも住宅ローンを組むことができ、さらに手出しが発生せず新しい家を購入することができます。

今回はさまざまな理由で住み替えを検討している方に、住み替えローンのメリットやデメリットについて詳しく解説します。タイミングが合えば、住み替えはさほど難しくありません。

そもそも住み替えローンとは?

住み替えローン
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「住み替えローン」とは、今住んでいる家を売却しても住宅ローンを完済できない場合、その残債との差額、新しい家の購入資金、自宅を売却する時と新しい家を購入する時の諸経費をまとめて借りることができる住宅ローンのことをいいます。金融機関によっては、「買い替えローン」という場合もあります。

自宅の売却代金で返済中の住宅ローンを完済できないことを「オーバーローン」といいますが、このようなオーバーローン状態でも利用できるのが住み替えローンです。

たとえば、住宅ローンの残債が2500万円、自宅の売却額が2000万円、新しく購入しようとしている家の価格が3000万円、売却と購入に伴う諸経費が150万円の場合、残債との差額500万円(2500万円-2000万円)+新しい家の購入資金3000万円+諸経費150万円で合計3650万円の新しいローンを住宅ローンとして組むことができます。

よって住み替えローンは、オーバーローン状態でも新たに住宅を購入するための購入費用を借りることができ、住み替えを検討している方にとって強い味方となります。しかし新しく購入する家の購入代金よりも多く借りる必要があるので、一般的な住宅ローンよりも審査は厳しく、また金利も住宅ローンよりは高めに設定されています。

住み替えローンの利用条件

「住み替えローン」は、今の家を売却した代金で住宅ローンを完済できる人は利用できません。今の家を売却しても住宅ローンが残ってしまう人が、新しく住居を購入する場合に利用できるという条件があります。

また、今の住宅ローンの返済に限らず、過去にマイカーローンやカードローンを組んだことがある人はそのローンも含め延滞したことがないことも条件となります。特に注意が必要なのは、クレジットカードの引き落とし日に間に合わなかった場合や、携帯電話機種代金の割賦支払いなども遅延があれば審査が厳しくなります。毎月遅れず金融機関に返済していれば問題ありません。

また、新しく購入する家の担保評価以上のローンを組むことになりますので、年収基準も厳しくみられるでしょう。

住み替えローンを利用する際に気をつけてほしいことは、新居を探すと同時に今の家を売却した場合、価格がいくらになるか不動産会社に査定を依頼しておくことです。今の家がいくらで売却できるかによって住宅ローンの残債との差額が明確になります。その差額と新しい家の購入額によって住み替えローンをいくら借りるか金額が決まりますので、その後の返済計画もしっかり考えておかなければいけません。

さらに住み替えローンの場合は、新しく購入する家の決済日と、今の家の売却決済日を同日に行う必要があります。このタイミングが難しいように思いますが、次項で住み替えローンを利用するまでの流れを解説します。

住み替えローンを利用するまでの流れ

家の模型と計算機
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住み替えをする際、新しい家の購入を優先する住み替えのことを「買い先行」といい、今の家を売却することを優先する住み替えのことを「売り先行」といいます。ここでは売り先行の住み替えローンを利用する流れについてご説明します。

売却査定

まずは今の家を売却した場合いくらになるのかを不動産会社に査定してもらいます。この時注意してほしいのは、複数の不動産会社に査定を依頼するということです。大手の不動産会社と地元の不動産会社それぞれ一社ずつ以上は依頼するようにしてください。また不動産会社により査定額が異なるので、その査定額の根拠となった理由や周辺の類似物件の過去の取引状況なども情報収集してみてください。

不動産会社への告知(媒介契約)

複数の不動産会社に査定を依頼して、条件が良かった会社や対応が誠実な会社を比較検討し、売却をお願いする不動産会社を選んで契約します。その際に必ず「住み替えローン」を利用することを伝えてください。

売却活動

不動産会社から提示された査定額に基づき、家の売り出し価格を決めます。売買が成立した時は不動産会社に仲介手数料を、広告宣伝を出した場合はその広告料を支払う必要がありますので、その費用も考えて売り出し価格を決めてください。

また、買い注文が入った場合に、価格交渉(値引き交渉)をされることが多いので、その分もあらかじめ上乗せした価格設定しておいた方が良いでしょう。著者の経験上、必ずといっていいほど数十万円、数百万円の値引き交渉が入りますので、売り出し価格は高めに(強気に)設定することをお薦めします。

売買契約

今の家を売却する動きと同時に、新しい家も探しておかなければいけません。できれば今までの流れと同時並行が望ましいです。新しい家が決まったら住み替えローンの事前審査を申し込んでください。

また新しい家を購入する際の売買契約書には「買い替え特約」を必ずつけるようにしてください。買い替え特約とは、期限内に今住んでいる家が売却できなかった場合、契約を無効にすることができるという特約条項です。

引き渡し

今の家を買ってくれる人からの手付金を除いた残額は、家の引き渡しと同時に受け取ります。それから、今の家の抵当権抹消や所有権移転の登記の手続きを行います。併せて新しい家の所有権移転登記や抵当権の設定も同時に行います。固定資産税の精算やマンションの場合は修繕積立金等の精算も同時に行われます。

住み替えローンのメリット・デメリット・注意点

住み替えローンの最大のメリットは、今の住宅ローンの残債を完済できなくても新しい住宅ローンを組んで、住み替えができるという点です。

住宅ローンの差額だけでなく売却や購入に伴う諸経費も同時に借り入れることができるので、手元資金を使わず家の買い替えができます。

一方デメリットは、住み替えローンを利用する場合は売買日を同日にしないといけないので、新しい家を探すスケジュールがとてもタイトになることでしょう。

また前述したように住み替えローンは、今の家の住宅ローンの精算、売買に伴う手数料を上乗せして借り入れるため、新しい家の不動産担保評価以上にローンを組む必要があります。このことでローンの返済額は通常の住宅ローンより多くなるため、毎月のやりくりや将来的なマネープランも十分に検討する必要があります。

担保以上のローンを組むため金融機関の審査が厳しくなることも注意点のひとつです。

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