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いまやインスタフォロワー1.3万人! 夫婦でうつわ屋を始めた理由とは?

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いまやインスタフォロワー1.3万人! 夫婦でうつわ屋を始めた理由とは?

普通の住宅街の中に、突如現れる行列。そしてなぜか、みんな水玉モチーフのものを身に着けている・・・。そんな不思議な現象を引き起こしているのが、フォトジェニックなInstagramの評判も高く、センスのよい器のセレクトショップとして人気の「うつわ屋フランジパニ」。

お店を経営するチクラさんご夫妻に、その人気の秘密を伺いました。

リタイア後のつもりが・・・突然30年前倒しに!?

お二人の写真

今年でオープン14年目を迎える「フランジパニ」。理想のお店を持つために、きっと時間をかけていろいろな計画を練られたに違いない・・・と思っていると、「まさかこんな風になるとは思っていなかった」とお二人が口をそろえるのでびっくり! なんと、店をオープンする前は、二人ともごくごく普通の会社員だったそうなのです。

「僕は20代の頃はいろいろな仕事を経験しましたが、店をスタートする前の仕事は、普通の会社の営業でした。器のことも、自営業のことも、まったく知りませんでした」と話す、ご主人のチクラシュンイチロウさん。

奥さまのトモコさんも、独身時代は会社員として、結婚後は派遣社員として事務の仕事などを続けていたそう。

唐津市の出身で、小さい頃からごく自然に器に親しんできたというトモコさんも、「定年後にゆっくり、うつわ屋さんとかできればいいなぁ・・・というくらい」だったのだとか。

おじいさんに買ってもらったうつわ
トモコさんが小学生のときに器好きのお祖父さんに買ってもらった皿。今も店で名刺入れに使っています

ところが、二人が29歳のとき、大きな転機が訪れます。会社の都合で、シュンイチロウさんが突然退職することになってしまったのです。詳しい経緯なども話せず、落ち込んだまま帰宅すると、トモコさんから開口一番、「お店をやろう」という言葉が飛び出しました。

直感と出逢いを大事に、思いたって半年でオープン!

看板の写真

実は退職が決まる前に、シュンイチロウさんは知人と二人で会社経営に挑戦する、という話も出ていました。「それは絶対に嫌だったので、なんとかしなくちゃと。そう考えると、定年後にやりたいと思っていた器のお店を始めるのは、今なんじゃない?と、ふと思って」と笑うトモコさん。

今までいろいろな仕事にチャレンジしているシュンイチロウさんを見て、会社経営よりも店舗運営のほうが絶対に向く!と、ピンときたのだそうです。

そこから物件を探し始め、約半年でオープンにこぎつけたのですが、トモコさんが「絶対ここをリノベーションしたら可愛くなる!」と強く推した物件は、細い路地をかなり入ったところにあるボロボロの平屋。

周りの人はもちろん、大家さんでさえ「絶対に失敗する」と言って大反対されたそうです。それでも諦めずに大家さんにお願いし続け、最後には熱意が通じて応援してくださることに。

トモコさんのイメージを実現してくれる素敵な大工さんとの出逢いもあり、2004年に姪浜に「フランジパニ」の初号店がオープン。古い木枠や窓ガラスが置いてある器にマッチした隠れ家的な店として、徐々にファンを広げていきました。

開業資金は独身時代の“定期預金”。借金ゼロで開業へ

店内商品棚
特徴的な水玉の器

こうした開業資金等は、トモコさんの独身時代の「定期預金」で全てまかないました。具体的な金額はシークレットですが、「20代の独身OLが月々できる程度の金額」とのこと。

給与収入がなくなり、なるべく早く収入源を確保するために、やむを得ず「半年」という短い準備期間で物件の契約までこぎつけられたのは、やはり元手となる「定期預金」があったからでした。

さらに、銀行からの借入ゼロで開業ができ、未経験でスタートしてからも借金をせずにいられたのも、この定期預金のおかげだと二人は口をそろえます。開店して2年目までは売上が1日3000円だった日もあり、預金を切り崩していく日々。アルバイトをしようか、本気で悩んだこともあるそうです。

それでも「できる範囲でやる」というポリシーのもと、自分たちの好きな器や作家さんをコツコツ紹介し続けたところ、人気カフェのオーナーが器を気に入って紹介してくれたり、テレビの料理コーナーで使ってもらったりといったことがきっかけで、徐々に売上がUPしていきました。

シュンイチロウさんは、「6年ほど前に現在の自宅兼店舗に移転した頃から、やっと預金残高をチェックしなくても大丈夫かな、と思えるようになりました」と言います。

今では、フランジパニでもファンの多い、置いてある商品が全て「水玉」というイベントの日は、住宅街に大好きな水玉モチーフのものを身に着けた方々が開店前から行列を作るほどの人気店になっています。

普段使いができるうつわの自由な楽しみ方を発信

花柄のうつわ

シュンイチロウさんの好きな水玉の器のほか、花柄のものやオブジェのように可愛らしい形のもの、モダンな黒い器など、さまざまなテイストの器が並んでいますが、店内はなぜか統一感があり、居心地がよくついつい長居をしたくなります。

その理由のひとつが、全ての商品がトモコさんのセレクトによるものだということ。トモコさんは、「普段づかいできるか」「好きかどうか」という点を大切に、直感で商品を選びます。

その言葉通り、InstagramにUPされたチクラ家の食卓には、美味しそうなお料理をのせたフランジパニの器が並んでいて、どれも真似したくなるものばかりです。

トモコさんはもともと料理があまり得意ではなかったそうですが、お客さまから器の使い方を質問されることが多かったため、分かりやすいようにとInstagramで食卓の様子をUP。最近では、写真を見て「この器をください」と来店されるお客様も増えており、1万3000人以上のフォロワーに支持されています。

インスタ画像
https://www.instagram.com/p/BZGTiCznquC/?taken-by=frapani
インスタ画像その2
https://www.instagram.com/p/Bah5T42nY7b/?taken-by=frapani

感度の高いお客さまや常連の方も増えていく中、「例えば、うちに通って器を少しずつ買ってくださる方が、2~3年経って食器棚を見ると、なんだかバチッとまとまっている、という感じだったらいいなぁと思うんです」とシュンイチロウさん。

目的を決めずに衝動買いをした器を、飲み物を入れたり、デザートを入れたり、小物入れにしたりと、“一器多用” で楽しんでもらいたいそうです。

チャンスをつかむために、普段から資金を貯めておくことの大切さ

並んだうつわ

「器が好き」なのがトモコさんなら、「人が好き」なのがシュンイチロウさん。

シュンイチロウさんの行動は、最初はトモコさんの「自分の好きな作家さんの作品が、一ヵ所で見られたら素敵だな」という思いから、好きな作家さんのところに行って作品の取り扱いを直談判するところから始まりました。

そんな中、使う土の産地や気候、作り方など、一切の妥協を許さずに不器用なほどにこだわる作家さんたちに出会うことで、シュンイチロウさんは「この人たちを応援したい」と強く思うように。そして、その作品を世の中に紹介できる、店の仕事が好きになっていったそうです。

「必要にかられて開業しましたが、僕のように後から仕事の面白さに目覚める人もいます。だから資金がないからと諦めてしまったり、タイミングを逃したりしないように、夢や目標が見つかる前でも、若い頃から定期預金などの資金づくりはしておいたほうがいいと思います」

若い頃はお金のことをあまり考えていなかったというシュンイチロウさんですが、今ではその重要性に目覚め、店の経理も担っているそうです。

 “ありがとう”の気持ちで、二人でお店の仕事を心から楽しむ毎日

フランジパニの陶器と花

店名の「フランジパニ」は、別名プルメリアともいい、花言葉は「ありがとう」。お客さまをはじめ、作家さんや周りの人への感謝の気持ちが込められています。

この日も、朝から雨が降りしきる平日にもかかわらず、子ども連れのお母さんから若い男性まで、さまざまなお客さまが訪れて、夫妻との会話を楽しんでいました。


お互いの話を聞きながら、「ね、そうじゃない?」と何度も顔を見合わせる姿が印象的だったチクラ夫妻。お互いの考えを尊重しながら、いろいろなことを語りあって築いてきた二人の関係が、店の居心地の良さにも現れています。

魅力的な器とともに、毎日の暮らしを楽しむフランジパニ流のライフスタイル、憧れてしまいますね!

うつわ屋フランジパニ

うつわ屋フランジパニインスタグラム