うっかり収入130万を超えたら扶養から外れる?パートが社会保険で得するもの
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こんにちは、FP(ファイナンシャルプランナー)の中村賢司です。
範囲内でパートとして働きたいけど月々の収入や年収をいくらまで抑えておかなければ扶養控除の対象から外れることになってしまうのか、という質問をよく受けます。扶養控除の範囲内となる「103万円の壁」や「130万円の壁」といった言葉を皆さんも一度は聞いたことがあるでしょう。
社会保険の扶養条件について正しい知識を身につけておくことで、手取り収入を減らすことなく扶養控除のメリットを最大限に活かすことができます。そして2018年に扶養控除の範囲が新しくなりました。年間の収入が130万という条件からどのように変更になったのかも見ていきましょう。
今回は損をしないように夫の扶養の範囲内で働くにはどうすれば良いか、「収入がうっかり130万円超えてしまった」場合は扶養から外れてしまうのかといったことから、妻と子供以外にも年金を受給している親も扶養範囲となるのかなど、加入条件などについても詳しくみていきます。
1)「年収130万の壁」と聞くけど、そもそも扶養控除とは?
社会保険の被保険者の扶養に入る条件はさまざまです。まずその被保険者と生計を一緒にしていること、そして年収が38万円以下(パート収入など給与所得のみの場合は103万円以下)であることなどが一般的に知られている条件です。
その他の扶養条件には血のつながりや同居をしているか・いないかなどの条件もありますので、もう少し詳しく述べます。
1-1. 扶養されるべき「被扶養者」って何?子供や妻まで?親や祖父母は加入できるの?
被扶養者と聞いて一般的に頭に思い浮かぶのは子供や配偶者でしょう。
世帯主に養われている家族のことをいいますが、子供や配偶者以外にも被保険者と同居していれば祖父母や曽祖父母、叔父や叔母なども被扶養者となることができます。
また別居している場合でも直系尊属の親族であれば被扶養者となることができます。
1-2. 年収「130万未満」という収入条件
社会保険の扶養の条件には血のつながり以外にも年収の条件があります。
一般的には、年間の収入が「130万円未満」と定義されており、年収が130万円以上となると夫の扶養から外れてしまいます。これがいわゆる年間収入の「130万円の壁」といわれているものです。
1-3. 子供や妻が扶養控除の条件から外れるのはどんなとき?
配偶者の収入だけでなく子供の収入も注意が必要です。お子さんがもしアルバイトをしていたら、配偶者のパート収入同様130万円の壁を超えると扶養条件から外れてしまいます。よって配偶者の収入ばかりでなく子供の収入も気をつけなければいけません。
この扶養条件から外れてしまうと子供や配偶者もそれぞれ社会保険に加入しなければならなくなります。
2)パート主婦の年収が130万の壁を超えたら扶養の条件から外れる?
パートといえども年間収入が130万円を超えると社会保険の被保険者となります。この場合、パート先の会社で社会保険の手続きが必要となり、その収入の中から社会保険料を支払わなければなりません。
もしパート先の会社が社会保険の適用事業所になっていなくても、ご自身で国民健康保険や国民年金に加入手続きを行い、その保険料を負担しなければいけません。
2-1. 年収「130万の壁」が扶養控除の条件になった理由とは?
130万の壁、実は昔はもっと低かったのです。もともと健康保険法では「被保険者の収入で生活している3親等以内の親族」や「同居している」という条件だけでした。
それが時代とともに70万円未満という年収基準が設けられるようになりました。その金額も時代が経つにつれ80万円、90万円と引き上げられ、今では130万円で固定されるようになりました。
2-2. もう一つ年収「106万の壁」の場合もあり
一般的に社会保険の被扶養者の年収基準は130万円ですが、お勤め先の規模や勤務時間などによって、その130万の壁が106万の壁になってしまいます。
従業員が501名以上の企業で、毎月のパート収入が8万8000円以上、週の所定労働時間が20時間以上、雇用期間が1年以上見込まれる場合は、年収が106万の壁を超えると夫の扶養から外れ、勤務先で社会保険の加入手続きが必要となります。
2-3. 年収130万という罠!(130万の壁を超えないための注意点まとめ)
毎月の収入が11万円以上あると年収は130万円を超えてしまいます。この場合、扶養から外れてしまいますが、それ以外にも注意しないといけないことがあります。
例えば1月から6月までの半年間で収入が70万円あった場合、まだ130万円は超えていませんが、年単位に換算すると140万円となってしまいます。この場合でも社会保険の被扶養者として認められないケースもあるので注意してください。
また、年収が130万円を超えていなくても、1日の勤務時間や1ヵ月の勤務日数が正社員の4分の3以上になると年収130万円未満であっても社会保険に加入する必要があります。よって労働時間なども調整して働く必要があります。
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3)2018年1月から新しくなった「扶養控除」年収の条件が変更に
今まで社会保険の扶養の範囲についてお話ししてきましたが、ここからは税制上の扶養についてお話しします。夫の給与所得の税金を計算する際、妻のパート収入が扶養の範囲内や子供の年齢が16才以上になると「扶養控除」を受けることができます。
この扶養控除、実は2018年1月から新しくなりました。
3-1. 被扶養者である「配偶者控除」と「配偶者特別控除」の違いとは?
世帯主に扶養されている配偶者は、所得が一定の範囲内であれば世帯主の税額を計算するときに「配偶者控除」や「配偶者特別控除」というも所得控除を受けることができます。
配偶者の収入が103万以内であれば「配偶者控除」を受けることができ、それを超えたとしても「配偶者特別控除」を受けることができます。この「配偶者特別控除」が2018年1月から大幅に拡充され、配偶者の年間収入が150万円までであれば「配偶者控除」と同額の所得控除が受けられ、150万円を超えても201万円未満までは段階的に3~38万円の控除を受けることができます。
3-2. 扶養控除には税法上と社会保険上の違いがあるってホント?
社会保険上、扶養の範囲に入るためには130万の壁や106万の壁があるということは前述した通りですが、これと税法上の計算はまったく別のものとなります。
税法上の控除とは、配偶者控除等のように103万円までの収入に抑えるか、それを超えた場合でも201万円に抑えることで配偶者特別控除を受けることができます。
3-3. 扶養控除の改正ポイントまとめ
このように配偶者特別控除の控除額が拡充された背景には、政府が女性の社会進出を促進させて景気を回復させようという意向もあります。また、今までパート収入を103万円に抑えていたものがそれ以上収入を上げても配偶者特別控除を受けることができるので、家計にとってもプラスになることばかりです。
150万円までなら配偶者控除と同額の38万円の所得控除を受けることができますが、130万円の壁を超えていますので、夫の扶養から外れてしまい社会保険料をご自身で負担しなければなりません。よって扶養控除だけを考えるのでなく、社会保険の扶養についても考えておく必要があります。
4)パート主婦が社会保険(健康保険)の「扶養」だとお得なこと
税法上の扶養控除は拡充されていますが、逆に社会保険上の扶養の定義は厳しくなってきています。パートで働くにしてもこの扶養の範囲内で働くことには注意しなければいけません。パートであっても扶養から外れ社会保険料を納めるようになると、大幅に手取り収入は減ってしまいます。
4-1. 夫の健康保険が適用
妻がパートで働いていたとしても、働き方によっては自分で健康保険に加入する必要がなく、夫の健康保険が適用されます。夫の扶養に入ったからといって夫の社会保険料が増えるわけでもないので、夫婦にとってこれほどメリットが大きいことはありません。
4-2. 夫の厚生年金が適用
さらに扶養の範囲内でいることのメリットは、自動的に国民年金に加入していることです。もちろん国民年金の保険料負担はありませんし、夫の厚生年金の保険料も変わりません。それでいて妻は将来、国民年金を受給する権利があるわけです。これほど大きなメリットはありませんね。
4-3. 配偶者控除で節税効果
パート収入を年間130万円未満に抑えることで、健康保険や厚生年金がお得になるだけでなく、税制面でも節税効果があり可処分所得(手取り収入)が増えます。
配偶者控除の額は38万円、仮に夫の年収が500万円であれば、所得税と住民税合わせて7万円ほど税金が安くなるという節税効果があります。
5)正社員とパートの生涯年収の違いはいくら?
ここで少し目線を変えて、生涯年収について見てみましょう。以下のリンク先ページでは 女性が正社員で働く場合とパートで働く場合の生涯年収の違いについて比較しています。 扶養控除の範囲内になることを意識して働くことと正社員だとさまざまな違いがあることを確認できます。 もう一つのリンク先では扶養範囲で国民年金保険に加入するべきか、扶養にこだわらず 社会保険に入るべきかFPが解説している記事です。環境によってさまざまな働き方を選択することが必要だと思いますが、実際にどのような違いがあるのか確認することができるでしょう。
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6)130万の壁を超えても怖くない!扶養範囲外で働くメリットと注意点
パート収入が130万の壁を超えるか超えないかで社会保険料の負担が発生してくるため、手取り収入は大きく変わります。
しかし、社会保険料の負担にこだわらず扶養の範囲を超えて働くことによって、家計の収入が増えて毎月のやりくりが楽になることは間違いありません。また、社会保険料を負担することにより将来の受け取る公的年金の額は多くなるというメリットもあります。
よって働ける環境にある人は130万の壁は気にせず、可能な限り仕事をして今の収入と将来の年金を増やしてください。
しかし130万円をちょっと上回るくらいの収入であれば逆に手取り収入が少なくなってしまいます。扶養から外れる覚悟を決めた場合は、年収150万円以上を目指すようにしてください。
7) 扶養の範囲内を超えて働いていることがバレるとどうなる?
扶養内で働いているつもりでも、仕事を掛け持ちしていたり、雇用条件が変わったりして、扶養の範囲を超える場合があります。なかには超えていることを知っていても、申告せずそのまま放置しているケースがあります。この場合、どうなるのでしょうか?
被扶養者が、扶養の範囲内を超える収入を得ている場合、まず税務署から扶養者の会社へ確認の通知が届きます。そして、扶養から外れていることが分かった場合、税金の再計算が行われ、不足分を追加納税することになります。
また、年収130万円を超えると、社会保険上の扶養の条件からも外れます。扶養から外れれば、パート先で社会保険に加入するか、加入できなければ国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。こちらもうっかり扶養に入ったままにしていた場合は、協会けんぽや組合等へ手続きを行い、さかのぼって扶養から外れることになります。
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8)2018年に改正された扶養控除の条件・範囲のまとめ
今まで見てきたように社会保険の条件や税制上の年収条件なども少しずつ改定されてきています。扶養の範囲内でパート収入を得ようとする人は、特に年収130万の壁には注意をして、可処分所得を減らさないように気をつけましょう。
しかし社会保険料を負担するということはデメリットばかりでなく、将来の年金を増やすというメリットもありますので、子供の成長にあわせて勤務時間を増やし150万円以上の収入を得られるようにすることをおすすめします。
さらに、妻や子供だけでなく、親や祖父母も加入条件を満たせば被扶養者となることもありますので、忘れず検討を。
また、仕事量を増やすことによって、働きがいや生きがいというのも生まれてくるでしょう。年収130万円未満の扶養の範囲で働くのか、130万円の壁を超えて今の生活や将来の年金を豊かにするのか夫婦で話し合い、これからの働き方をよく吟味してください。
最後に、福沢諭吉の言葉で締めたいと思います。
「世の中で一番楽しく立派な事は一生涯を貫く仕事を持つと云う事です」