企業型確定拠出年金って退職金と何が違う?メリットや仕組みを解説 (2ページ目)
目次
3-1.どういう風に受け取るのがいい?(受け取り方の種類、注意点)
受取時に節税のメリットがあるとお伝えしましたが、基本的に企業型確定拠出年金は一時金、または10年確定年金といった分割での受取りのどちらかを選ぶことができます。一般的には一時金で受け取る方が税務上「退職所得」となり有利といわれています。
退職所得は大きな「退職所得控除」があります。30年勤務で1500万円、40年勤務で2200万円も控除額があるため、多くの人はこの控除額のおかげで税負担が生じることなく受け取ることができます。
ただし、企業型確定拠出年金の受取額がかなり大きな金額になっている場合やその他退職所得として受け取る金額がある場合などは、それらを合算するため、いくら退職所得控除額が大きくても課税される場合もあります。その場合は分割で受け取るのも1つの方法です。分割で受け取る場合は「雑所得」として、この場合も一定の控除額(公的年金等控除)が適用されます。
どちらが有利か?というのは、その時点での税制の影響も受けますし、確定拠出年金の金額以外で所得の影響を受ける場合もあります。よって、受け取る前に一度、専門家や税務署などに確認することをおすすめします。
また、税務的に有利かどうかばかりにこだわることなく、お金との付き合い方を意識するのも1つです。一括で受け取るとつい使い過ぎてしまうという人もいるでしょうし、一括で受け取り、何かまとめて投資したいものがあるという場合もあるでしょう。あまり税務面ばかりにこだわる必要もありません。
4. 企業型確定拠出年金がない人は個人型の「iDeCo」を!所得控除で節税も
大手企業を中心に企業型確定拠出年金の導入が進んでいますが、中小企業などは企業型確定拠出年金はもちろん、退職金制度自体が無い企業(会社)もあります。この場合はより個々人で意識を高め、退職後の老後資産形成を行う必要があります。
そしてその際に企業型確定拠出年金と同様の制度を活用することができます。それがiDeCoと呼ばれている個人型の確定拠出年金です。原則、企業型確定拠出年金と仕組み自体は大きな違いはありませんが、企業(会社)が掛け金を拠出してくれるわけではありませんので、自分で掛け金を拠出しなければなりません。
そういった点では企業型確定拠出年金の方がメリットがありますが、個人型の場合は自分で金融機関を選ぶことができますし、掛け金も上限の範囲内において自分で決めることができるため自由度が高いことが特長です。ぜひiDeCoを中心に老後資産の形成を行ってください。それ以外に資産形成に活用できる制度としては、つみたてNISAなども候補になると思います。
5. 商品選びに迷ったら「バランスファンド」を候補に
企業型確定拠出年金について最も多い相談は「どの商品を選んだらいいでしょうか?」というものです。大きく分けますと、元本が確保されている商品と、リスクがあるもののリターンが期待できる投資信託に分けることができます。
一般的に、元本確保型の場合は長引く超低金利の影響もありほとんど増えないため、できれば「資産を増やす」ということを意識して、投資信託を中心に運用するのがおすすめです。ただ、投資信託も複数の商品があるため、どれが自分に適しているのか分からないという人も多いようです。その際は「バランスファンド」を1つの候補にしてみてください。
バランスファンドは国内外、株や債券、不動産など様々な資産にまんべんなく投資をしているものが一般的です。分散投資でリスクを抑えながら一定のリターンを狙えるため、初心者向けともいえるでしょう。ただし、相場展開次第という点もあるため、「このファンドが絶対おすすめ」ということはありません。よって、「今はどのファンドが一番良いのか?」ということよりも、ご自身のライフプランに則したファンド選びを心掛けてください。
例えば、20代や30代は時間を味方につけることができます。60歳まで引き出すことができないため、超長期投資となります。多少マイナスになっても取り返す機会がたくさんありますし、むしろ下がった時の方が、安く買うことができるという見方もできます。よってややハイリスク・ハイリターンな商品を選ぶのも1つでしょう。農作物を育て、収穫するイメージです。
収穫直前に大きな自然災害に遭うと、もう取り返しが尽きません。よって、受け取るタイミングである60歳が近づくにつれ、ある程度「収穫」を行う。つまり、リスク商品から安全な資産へシフトをしていくことも、もう1つの運用方法であるといえるでしょう。
6. 老後資産準備の柱として、時々メンテナンスを
「企業型確定拠出年金を導入以来、一度もログインしたことがありません」と筆者のもとへ相談に来られる人もいます。企業型の場合、企業(会社)主導で導入が決まり、従業員はその制度を理解し、向き合わなければならないため、積極的な人ばかりではありません。
むしろ、多くの人が受け身で向き合っています。その結果、導入時に説明会があり、ファンド選びや残高確認ができるウェブサイトの紹介がありますが、導入時に一度ログインしただけで、その後一切チェックしていないという人もいるようです。
前述したように、会社への貢献度とは別に、いかに上手に運用・管理できたか?ということが、将来の受取額に大きく影響します。ぜひ年に1、2回程度で構いませんので、運用状況がどうなっているのか?他のファンドに見直した方がいいのか?ということを考える機会を設けてくださいね。
老後2000万どころじゃない!厳しいサラリーマンの年金生活
自分で用意する年金「イデコ」に入ると得な人、損な人
企業型確定拠出年金についてのQ&A
Q. 企業型確定拠出年金が勤めている会社に導入されましたが、その後、会社はどのような
サポートをしてくれますか?個人としてやらなければならないことはありますか?
A.原則、会社は投資教育などを行うことが求められているため、導入時のみならず、その後も各種投資商品などに関する情報提供を行ってくれると思いますが、原則、導入後はどのように運用するかは個人次第です。定期的に選んでいるファンドの状況などをチェックするようにしてください。
Q. 投資信託には抵抗があり、元本確保型を選んでいます。このままでよいでしょうか?
A.一般的にリスクに応じてリターンも期待できます。長期投資や定期的な積み立てとなればなおさらです。元本確保型が悪いというわけではありませんが、受け取りまで数十年以上時間があるのであれば、いくらか投資信託を組み入れてみてはいかがでしょうか。