お金

会社員が独立するベストタイミングは?知っておきたいお金のこと (2ページ目)

ふやす 内山 貴博

起業するなら知っておきたいお金の知識

起業する上で、やはりお金の知識はある程度身に付けておき、そしてできる対策はしておきたいところです。ただし、できていない人が多いように感じます。それはなぜか分かりますか?例えば飲食店で起業するという人の気持ちになってみてください。

どんな店舗にして、どのようなメニューがいいか?ホームページはどんなデザインにしよう?こういう店舗設計や商品づくり、プロモーションに一生懸命になってしまいます。もちろんこれは大切なことですが、一方で、社会保険料はいくらぐらいで、売り上げがいくらぐらいになると消費税が関係してきて・・・
こういう社会保険や税金のことまで考えが及ばない人が多いのです。

例えばスポーツで考えてみましょう。野球をする際、やっぱりボールを使って打ったり投げたりする方が楽しいですよね。ただし、プロの選手も本格的な部活動をしている選手も、このボールを使った練習と同じくらい走り込みに時間をかけています。キツイ練習であまりおもしろくないのですが、しっかりと下半身が出来上がることでパワー、スピード、技術、全て向上することになります。

お金のことに向き合うことは走り込みに匹敵するかもしれません。しっかりとした土台を作っていなければ、思わぬところで足をすくわれることになりかねません。

人を雇うことによって発生するお金のこと

例えば「3人ぐらいアルバイトを雇えばいいかな」こんなことを考えていたとします。この場合、正社員ではないため、健康保険や厚生年金には加入する必要が無さそうです。ただし、労災保険には加入しなければなりません。アルバイトが勤務中にケガや病気をした際に備える保険です。保険料は全て事業主、つまり起業をしようとしているあなたが負担することになります。

また、学生アルバイトが夏休みなど集中的に働き、お給料が一定額をオーバーした場合、所得税を源泉徴収する必要があります。この源泉徴収は、暫定的な税額を前もって納めるという位置づけです。よって、年末には再度計算をして、徴収し過ぎている場合はアルバイトに還付してあげなければなりません。これを年末調整といいます。これは一部ですが、アルバイトに限ってもこういったお金のことが発生します。

正社員ともなれば、さらに社会保険料など一段とやるべきことが増えます。飲食店のオーナーも、開業医でも、IT系の社長でも、どんな業種でも経営者は向き合わなければなりません。社会保険労務士に全て依頼するということもできますが、起業し経営する以上、事業収支にもこのようなお金のことが影響するため、成功している起業家はこのような知識についても詳しい印象があります。社会保険労務士にお願いするにしても、それは実務的なところで、起業家としては必ず押さえておきたい知識となります。

自分自身に関するお金のこと

また、社員やアルバイトのみならず起業家自身のお金のことも前もって整理しておきたいところです。最たる例は、個人事業主で開業するか法人を設立するかという点です。

個人事業主の場合、いわゆる自営業という立場になるため会社という器がありません。1個人として役場に行き国民年金の手続きをし、そして国民健康保険に加入することになります。日本は「国民皆保険」制度であるため、全ての人が医療保険(健康)制度に加入することになります。

会社員の健康保険に比べ国民健康保険は、被扶養者(配偶者や家族が同じ保険に加入する)という概念がないため、保険料が高くなりがちです。会社員が個人事業主として起業する場合、勤め先の会社を通して健康保険に加入し続ける任意継続制度があり、最長2年間は退職する会社の健康保険に加入することができます。こういったこともあらかじめ調べて、手続きをしておく必要があります。

さらには年金も厚生年金という2階建ての制度から国民年金のみの1階建てとなります。老後の年金が少なくなるだけではなく、万が一の場合の遺族年金も手薄になるなど大きな違いがあります。その対策として起業する際に生命保険を見直しておくなどの必要もありそうです。

税金については売り上げから必要経費などを差し引いた事業所得(所得税の所得の一種)に対して所得税や住民税がかかります。イータックス(電子申告)を使い青色申告することで最大65万円の控除を受けることができ、その分、税負担が軽減されます。白色申告よりやや煩雑ですが、その分メリットも大きいため、青色申告ができるように手続き、準備をしておくことをおすすめします。

<個人事業主と法人の主な違い>

また税金も所得税ではなく会社が法人税を払うことになり、個人で役員報酬に対する所得税・住民税を払うことになります。トータルの税負担が増える場合と減る場合があります。起業する際の事業内容や規模感で法人化すべきかどうかは検討してください。なお法人を設立する上では登記代などおおよそ30万円ほど必要となります。


一方、法人を設立し起業した場合は、通常、その法人の(代表)取締役となります。会社員と同じく、健康保険や厚生年金に加入することになりますので、社会保障という点では大きな違いはありません。ただし、従業員から役員に変わるため雇用保険は原則ありません。失業した際に失業手当をもらうことができないため、その点は要注意です。

起業についてよくある勘違い

起業を意識した人と話をしていますと、「会社を辞めた後、しばらくは失業手当をもらいながら…」という考え方を持っている人がいます。ただし、これは間違いです。雇用保険の失業手当は「求職者給付」とも言われ、次の就職先を探すまでの間の手当という位置づけです。起業する人はそもそも転職先を探しているわけではないため、失業手当はもらえないのです。くれぐれも失業手当を当てにして退職はしないでください。

起業と資金についてまとめ

ビジネスプラン
【画像出典元】「stock.adobe.com/peshkov」

●「事業&家計」両方を見通した全体の計画書を作成
●社会保険料や税金についての知識も必要
●個人事業または法人、開業するのはどちらが適しているか検討する
●謙虚に日々の生活やビジネスに向き合う

起業のメインとなる商品やサービスを充実させることも重要ですが、仕事と生活どちらにも直結するお金の知識を早い段階から整理し、積極的に関与する姿勢が重要。それが個人事業または法人でスタートするかどうかの決め手にもなります。もちろん、途中から法人化することも可能です。これを「法人成り」といいます。

何より成功している経営者は謙虚な人が多いです。うまくいっていてもそうじゃなくても、謙虚な姿勢を大切にしてください。もちろん、事業計画も楽観的に大胆なものを作るのではなく、謙虚に、そして少し厳しめに作成してくださいね。

起業するなら知っておくべき基礎知識と今おすすめの仕事ランキング

20代から起業を成功させる7つの鉄則とは?~失敗しないための心得~

起業とお金に関するQ&A

Q.学生から起業する人も増えていますが、やはり起業するためには一度会社に入社してか
らの方がいいでしょうか?

A.アイデアと行動力があれば学生起業でも良いと思います。ただし、一度会社に入社するこ
とで、世の中のルール、一般的な価値観に触れることができます。社会人のマナーやお金の使い方を習得した上で、起業した方が良いかもしれません。

Q.起業する上で生活費はいくらぐらい貯金しておくべきでしょうか?

A.どのような事業を行うか、起業する人が既婚者かどうかなど状況によって異なりますが、少なくとも3カ月~6カ月程度の生活費は確保しておきたいですね。一気に事業が軌道に乗り、すぐに黒字になるというシナリオは避けた方が賢明です。
 

  • 2
2 / 2