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2020年は部数増の雑誌も多数?「紙離れ」防ぐカギは

経済とお金のはなし 伊藤 寛

2020年は部数増の雑誌も多数?「紙離れ」防ぐカギは

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監修・ライター

日本人の紙媒体離れが止まらない。2020年は有名雑誌をはじめ、伝統的な冊子まで廃刊、休刊を余儀なくされた。ただ新型コロナウイルスの感染拡大によって光明が見えてきた面もある。昨年、部数増またはヒットを果たした雑誌は複数ある。まずは日本の雑誌、紙媒体がどれだけ減っていったのか振り返ろう。昨年部数を増やした雑誌の傾向は何か。今年以降、雑誌離れを防ぐカギは何か。

東京ウォーカーにハローページまでも…

本稿の全体で「雑誌が好調だ」と持ち上げるつもりはない。業界全体の広告費が年々、前年比10%減のペースで減り続け、部数減も相まって休刊、廃刊を発表する雑誌が昨年も相次いだ。

休刊、もしくは定期刊行を取りやめると20年に発表したのは「東京ウォーカー」、ホビー誌「アサヒカメラ」、女性向けファッション誌「JJ」などジャンルを問わない。雑誌通販サイトfujisan.co.jpによると、昨年だけで130以上の雑誌が姿を消した。

デジタルにシフトしているのは雑誌だけではない。外国車メーカー、ボルボは紙カタログを廃止すると各ディーラーがひっそりと発表。さらには来年限りでNTT西日本のハローページも発行を停止することにした。

海外に目を移すと、米New York Timesで紙の購読収入をWeb課金収入が上回るなど、世界全体の傾向として紙からWebへの移行は進んでいる。

“おうち時間”でパズル誌が好調

クロスワードパズル
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一方、好調な雑誌としてはパズル誌が挙げられる。日本雑誌協会によると「クロスワード・パズル」に分類(休刊、廃刊された雑誌は除外)された23誌は2020年、1~3月、4~6月、7~9月いずれも前年からアップを果たした。23誌合わせて3カ月ごとに10万部単位で伸び、7~9月実績は120万部に達している。

もっともパズル誌の好調は昨年に限ったものではない。ここ数年徐々に部数を伸ばしていたというが、コロナ禍における自粛で、かえって若年層にも購読者数が広がったとの出版社側の分析もうなずける。紙からデジタルへの移行が続く中でも、パズルは手書きで解きたいものなのだ。

ジャニーズ人気に“保存版モノ”で乗じた「Myojo」

ジャニーズアイドルの活躍を取り上げてきた老舗雑誌のMyojoも部数を伸ばしている。20年7月までの部数は1年間、いずれも前年の同じ月よりも多かった。その後も10~12月のデータは出ていないものの日本雑誌協会のデータを見る限り、部数は好調に推移しているようだ。

Myojoは具体的な部数増の要因には触れていないが、20年1月にSixTONES、Snow Manがデビューするのに先だって19年10月発売の12月号から両グループを表紙に扱い、2パターンで発売するなどデビュー組を手厚く出迎えていた。昨年に入っても長瀬智也さんが抜けるTOKIOこそなかったが、活動休止の嵐はもちろん、SixTONES、Snow Manを表紙に扱い、「完全保存モノ」としてファンから愛されたのだろう。

初の将棋特集でヒットした「Number」

スポーツ雑誌の「Number」は9月発売の将棋特集が大ヒットを果たした。史上最年少でタイトルを獲得した藤井聡太二冠のみを掘り下げるのではなく、これまでコアな将棋ファンしか知らないような「脇役」のプロにもスポットを当てた。羽生善治九段の七冠達成時のエピソードも回顧。昭和の大棋士も取り上げ長きにわたって読める一冊で、20万部を優に超えた。

将棋特集の後もNumberは気になる取り組みを進めている。昨年末、「M-1グランプリ」の詳細を報じたのだ。漫才もある意味では知的競技の一種と考えているのか。昨年の覇者、マヂカルラブリーはカルト的な人気を誇るまでには至っていないが、来年以降、われわれがアッと驚くような分野で増刊号を発行することもあり得る。

宝島社は紙に加え服の販売も強化

パズルのピース
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もはや、紙媒体が売るべきは紙だけではない。軒並み部数を減らしているファッション雑誌の中でトップシェアを誇り、20年上半期に6誌の部数を増やした宝島社は夏から各社とのコラボ商品の販売を本格化させた。

コンビニで衣服を売ることは珍しくはないが、セブン-イレブンと協力してジャケット、部屋着までも販売。宝島社は服を作る過程でも積極的に関わり実績を上げている。もはや雑誌を売る会社とは思えないほどの業務の広げようだ。

ジャンルにこだわらず取り組みの幅を広げる必要あり

紙媒体が生き残るためには若年層の読者確保がより重要。物よりも体験に重きを置く、いわゆる「モノ消費からコト消費」の若年層に訴えかけるためには「これを買って保存したい」と思わせる仕掛けが大切だ。

その中ではNumberのように、かつては守備範囲としていなかった分野にも挑戦する気概が大切であるし、宝島社のようになりふり構わず業態を拡張することもまた必要なのだろう。出版社を中心とした紙媒体が持つ最大の武器は長年積み重ねたノウハウや人的経験だ。これからも手を変え品を変えつつも、手に取る私たちを楽しませる紙面を作り続けてくれるのだろう。

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