株とは税金の扱いや計算方法が全く違う!仮想通貨の確定申告はどうやる?
監修・ライター
2021年の確定申告も、新型コロナウイルスの影響で申告期限が1カ月延び、4月15日までとなりました。事業所得がある人はもちろんのこと、不動産などの譲渡所得がある人や医療費控除を受ける人などが確定申告の対象者となりますが、投資によって収益があった人も確定申告をしなければなりません。
株式投資やビットコインに代表される仮想通貨はどちらも“投資”ですから収益があった場合は確定申告をしなければなりません。しかし、同じ“投資”であるにもかかわらず、実はこの2つに対する税金の考え方や計算方法はまったく違います。
そこで本日は、投資の代表ともいえる株式投資と最近話題になっているビットコインについて、それぞれの確定申告や税金の計算方法の違いを解説していきます。
そもそも「所得税」とは
所得税とは、以下に挙げる10種類の所得があった場合に課税される税金のことをいいます。
- 利子所得・・・預貯金や公社債の利子などの所得
- 配当所得・・・株式などの配当金所得
- 不動産所得・・・土地や建物を貸し付けることにより得られる所得
- 事業所得・・・さまざまな事業を行うことにより得られる所得
- 給与所得・・・勤務先から受ける給料や賞与
- 退職所得・・・勤務先などから退職時に受ける一時金
- 山林所得・・・山林を伐採して譲渡した場合などの所得
- 譲渡所得・・・土地・建物・ゴルフ会員権などを譲渡することによって生じる所得
- 一時所得・・・上記8つの所得に該当しない競馬の払戻金や生命保険の満期返戻金などの一時的な所得
- 雑所得・・・上記のすべてに該当しない所得
株式の売買とビットコインの売買は所得の種類が違う
株式の売買もビットコインの売買もどちらも同じようなものと思われるかもしれませんが、実は所得の種類が違います。
株式の売買によって得られる所得は「譲渡所得」、そしてビットコインの売買によって得られる所得は「雑所得」と定められています。
総合課税と分離課税
会社員として給与をもらいながら副業をしているなど複数種類の所得を得ている場合は、それらの所得を合算します。
しかし、10種類すべてを合算するのではなく、実際には合算するものと合算しないものがあります。所得を合算するものを「総合課税」といい、合算しないものを「分離課税」といいます。
- 総合課税・・・不動産所得、事業所得、給与所得、譲渡所得(ゴルフ会員権の売買など)、一時所得、雑所得
- 分離課税・・・配当所得、退職所得、山林所得、譲渡所得(土地・建物・株式などの譲渡による所得)、雑所得(株式の譲渡や先物取引による所得)
ご覧のように、土地・建物や株式などの譲渡所得だけは、同じ譲渡所得でもゴルフ会員権などとは区別して、分離課税で計算するように定められています。
所得税は累進課税?
課税対象となる価額が増えるとそれに応じて税率が増えていく課税制度のことを、累進課税といいます。「所得税は累進課税」と言われていますが、実はこれは総合課税の部分のみを指しています。
総合課税の対象となる所得については合算し、累進的な税率で課税されます。したがって所得が増えれば増えるほど税率そのものも高くなります。
それに対して分離課税の対象となる所得については他の所得と合算しないで、その所得だけに独自の税率をかけて所得税が計算されます。
株式投資の税率とビットコインの税率の違い
株式の売却益や配当金にかかる税率は以下のように定められています。
- 株式投資にかかる税率・・・所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%=20.315%
株式投資に関する税金は分離課税で計算されるため、どれだけ株式投資で利益を上げたとしてもその税率は20.315%と一定です。したがって、仮に株式の売買で100億円を儲けたとしても税率は20.315%で済むわけです。
いっぽうビットコインは総合課税で計算されるため、合算した所得の金額に応じて下記の所得税率が適用されます。
引用元:国税庁HP
ご覧のように所得税率は最高で45%と定められており、それにしたがい復興特別所得税は0.945%、住民税は一律10%となるため、ビットコインの売却益と他の所得の合計が4000万円以上になると、税率は合計で何と55.945%にもなります。
※総合課税の場合は他の所得と合算後の所得金額に応じて税率が決まるため、ビットコインの売却益とは関係なく他の所得(たとえば給料など)が多ければ、税率も当然高くなります。
ですから、たとえば年収1億円くらいある人の場合は、ビットコインであげた収益が少額でも、その収益全体にかかる税率は55.945%になってしまいます。
ここまでのまとめ
ここまでの内容を簡単にまとめておきます。
- 株式売買の所得とビットコイン売買の所得は、税法上の区分が異なる
- 株式の所得は譲渡所得、ビットコインの所得は雑所得に分類される
- 株式の譲渡所得は分離課税、ビットコインの所得は総合課税で税額計算をする
- 分離課税の税率は所得金額に関わらず同じであるが、総合課税の税率は金額に応じて累進的に上がっていく
これらの基礎知識を踏まえた上で、次は株式とビットコインの確定申告についてそれぞれ見てみましょう。
株式売買の確定申告
上場している株式を売買するためには、証券会社で口座を開設しなければなりません。口座には、以下の3つの種類があります。
- NISA(非課税)口座
- 特定口座
- 一般口座
NISA(非課税)口座
NISA(非課税)口座では、新規投資額は毎年120万円まで、投資枠最大600万円(120万円×5年)までの株式について、その譲渡益が非課税となります。したがって株式の売却益に対して上述の20.315%が課税されませんし、確定申告の必要もありません。
特定口座
特定口座とは、本来なら株式の譲渡益を確定申告しなければならないところを、本人に代わって証券会社が損益の計算を行い、「特定口座年間取引報告書」を交付する口座のことをいいます。
特定口座には「簡易申告口座」と「源泉徴収口座」の2つがあり、簡易申告口座を選択した場合は株式の譲渡益に対して譲渡益税が源泉徴収されないため、自分で確定申告をしなければなりません。いっぽう「源泉徴収口座」は、譲渡益税が源泉徴収されるため確定申告の必要がありません。
株式の譲渡益が年間20万円以下の場合であれば申告・納税の義務はありませんが、源泉徴収口座を選択していると問答無用で税金を徴収されてしまいます。簡易申告口座を選択しておくとそのようなことは起こりませんが、その代わりに年間の譲渡益が20万円を超える場合は確定申告をしなければなりません。
また、株式の取引により損失が出た場合は、どちらの口座を選択していても確定申告を行えば配当金と損益通算して源泉徴収されている税金が戻ってきたり、それでも引ききれなかった損失に関しては、翌年より3年間繰り越すことができます。
一般口座
一般口座とは、NISA口座や特定口座で管理されていない上場株式等を管理する口座のことをいいます。一般口座を使って株取引を行う場合は、特定口座のように取引報告書を証券会社が作成してくれないため、年間の譲渡損益を自分で計算して確定申告をしなければなりません。
ビットコインなど仮想通貨の確定申告
ビットコインの確定申告は、株式の場合と比べるとずっとシンプルです。会社員の場合であれば、年間の利益が20万円を超えると確定申告をしなければなりません。その場合は、給与所得と雑所得を合算し、税金を計算します。上述のように、税率は累進的に上がるため、最高で利益の55.945%が課税されることになります。
ちなみに、ビットコインの取引で出た「損失」は他の所得と損益通算ができないため、確定申告をする必要はありませんし、また、確定申告をして税金が還付されることもありません。もちろん翌年以降に損失を持ち越すこともできません。
税金面から考えると仮想通貨は投資には向いていない
株式投資は、給与所得などの他の所得の有無に関わらず、また、どれだけ収益を上げたかにも関わらず、常に税率が20.315%と一定です。しかも、損失が出た場合は、翌年より最大3年間は損失を持ち越すことができます。
それに比べるとビットコインの場合は、ビットコインの所得が他の所得と合算されるだけでなく、税率そのものも累進課税が適用されているため最大で55.945%もの高い税率が適用されてしまいます。
これでは、どう考えてもビットコインに勝ち目はありません。あえて言うなら、余剰資金のごくごく一部を、勉強もかねてビットコインに投資する程度にとどめておく方が賢明でしょう。
まとめ
ビットコインも株式も、どちらも投資であることには変わりありませんが、税制上の扱いにはかなりの違いがあります。株式投資はビットコインほど値動きが激しくないためパフォーマンスが劣るように見えるかもしれませんが、税率はかなり低く抑えられており、また特定口座などの制度も充実しています。
一方、ビットコインの場合は合算した所得に応じて税率が累進的に上がるため、見た目の値動きと比べ税引き後のパフォーマンスは思った程にならない可能性が高いと言えます。
どちらに投資を行うにしても、このような税制上の違いを十分に理解した上で投資判断を行うようにした方が良いでしょう。