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家族の介護費用、自己負担いくらかかる?使える介護保険制度の給付額や条件は (2ページ目)

そなえる 内山 貴博

公的な介護保険の種類や支給限度額まとめ

介護の公的支援
【画像出典元】「stock.adobe.com/Jürgen Fälchle」

介護は誰かのサポートが必要となり、そして長期戦となることも想定しておかなければなりません。そんなときに頼りになるのが公的介護保険制度です。

公的介護保険の仕組み

40歳以上から介護保険に加入することとなり、年齢によって第1号と第2号被保険者に分けられ、それぞれ保険料を負担することになります。

要支援・要介護となった場合は、所得状況に応じて1割、2割、3割(原則は1割負担)のいずれかの自己負担で介護費用を賄うことができます。ただし、介護の認定区分によって上限が設けられていますので、上限を超えた場合は原則全額自己負担となります。

公的介護の窓口は市区町村ですので、まずは居住地の市区町村に申請をしてください。その後、担当者が自宅に訪問し、審査・判定が行われます。

また身体の状況は悪化することもあれば、改善することもあります。
「父親の状況にさほど改善は見られないものの、要介護2から要介護1に区分が下がった」といったケースも近年は増えているようです。この場合、当然、支給限度額が下がるため、結果、介護費用の自己負担が増える可能性があります。

こういった認定等に不服がある場合、介護保険審査会に審査請求をすることができます。なお、当該事項を知った日から3カ月以内に行わなければなりませんので、「納得いかない!」というような事態になった場合は、すぐに行動するということを覚えておきましょう。

第2号被保険者である現役世代は条件付き

被保険者である第1号と第2号の最大の違いは、40歳以上65歳未満である第2号の人で介護が必要となった場合、「末期がんなど特定疾病によって要支援者・要介護者になった者」に限定されるという点です。

つまり、65歳以上の第1号被保険者は介護になった理由は問われませんが、現役世代に該当する第2号保険者は末期がんやアルツハイマー型認知症、パーキンソン病などの特定疾病が原因である場合に限られるため、例えば交通事故などで介護状態になっても介護給付の対象とはならないということです。皆さんが社会人で40歳以上の場合、介護保険の保険料負担は生じますが、給付の際はこのような条件があることは覚えておきたいですね。また、ご両親が65歳未満の場合も同様です。

・高額介護サービス費
医療費が高額となった場合に一定額以上が還付される「高額療養費」という制度がありますが、それと同様、介護費用にも1カ月あたりの自己負担限度額の定めがあります。原則、1カ月あたりの介護費用自己負担額の上限は4万4000円となります。

つまり、それ以上かかった費用は「高額介護サービス費」として払い戻しとなるのです。ただし、老人ホームの居住費や食費などは、対象外となります。介護の状態でなくても住むところや食費は必要であるため、こういった費用は高額介護サービス費の対象とはならないのです。

・高額介護医療合算制度
1カ月あたりの介護費用が上限に達していない人は「高額介護医療合算制度」の対象となるかもしれません。この制度は1カ月ではなく8月から翌7月までの1年間の介護費用に加え、医療費が一定額以上となった場合に自己負担額を軽減する制度です。申請をすることによって負担額の一部が払い戻されます。

介護が必要な場合、同時に医療費もそれなりに伴うことも想定されます。年間で両方合算することができるのは嬉しいですね。自己負担限度額は所得などによって異なります。このような制度も前もって把握しておいてください。

・介護休業給付(雇用保険)
会社員など雇用保険に加入している場合は、実の親はもちろん、配偶者の両親も含め、介護のために会社を休む場合、休業前の賃金日額の67%相当額が支給される制度があります。

トータル3回、通算93日まで取得できる制度です。例えば「義父の介護のため義母に大きな負担がかかっている。住宅の改修等で大変な時期だけでも、義母のサポートのためにまとめて休みを取りたい」といったケースを想定されています。「育休」の介護版といったところです。育休も積極的に取るような風潮になってきています。介護休業も多くの人に活用してもらいたいものです。

・低所得者向けのサポートも
所得や預貯金額が少ない場合は、自己負担限度額が下げられるほか、社会福祉法人が利用者負担額を軽減する制度もあります。

介護にかかるお金でよくあるFPへの相談事例は相続問題

私たちFPへの相談で良くあるケースが、長期間の介護の末、親御さんが亡くなった後のことについてです。残された相続人や相続人以外(子供の配偶者、例:長男の嫁など)で介護への貢献度が違います。例えば長男の嫁が付きっきりで義父の介護をしていたものの、民法で定められた法定相続人(配偶者や血族)ではないため、一切財産を取得できないといったケースです。

この場合、被相続人(介護されていた人)が、遺言を書いておけば、法定相続人ではなくとも介護してくれた人に一定の財産を残すことができるため、できるだけ生前に対策をしておきたいところです。

また、2019年7月からは民法の改正により「特別の寄与」が新設されました。例えば、先の例のように相続人以外の人が積極的に介護に関わっていた場合に、「特別寄与料」、つまり介護に貢献した分を他の相続人に請求することができるというものです。

「私は一生懸命介護をした」、「あなたは全く関わっていない」など、まさに「争続」となる要素が多分にあります。介護中に自分の相続分などを主張することは難しい面もありますが、将来揉めないように、こういった事例がありうることを想定しておいてください。

介護準備が人生100年時代のキーポイントに

医療施設を併設したマンションなど、老後の生活スタイルは選択肢が増え、多様化しています。できれば親には少しでも長く、経済的にもゆとりをもって、健康で生き生きと過ごしてもらいたいものですが、実際はそうではないケースも多いようです。

年々要支援・要介護者が増えている現状も踏まえ、少しでも両親のために、そして自分の将来のために介護に関する知識を身に付けるところから始めてみてください。

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介護費用についてのQ&A

Q.介護保障として民間の生命保険に加入予定です。介護の月額費用や臨時費用などを民間の保険で賄うことは可能ですか?

A.民間の介護保険は保障内容もさまざまです。手厚い内容にすると保険料も高くなります。貯蓄と保険、両方で準備するという意識が大切です。

Q.積立介護費用保険に加入しています。所定の状況に該当し、保険金を受け取った場合、保険金は課税されますか?

A.個人で加入している介護保障は一時金で受け取れるタイプや年金で受け取れるものなどがありますが、原則、受取時は非課税となるため、税金の心配は必要ありません。
 

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