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第三次オイルショックは来る?原油価格高騰が与える影響とは

経済とお金のはなし 箕輪健伸

第三次オイルショックは来る?原油価格高騰が与える影響とは

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スーパーに行くと、いろいろな商品が値上げされていることに気が付いた方は多いのではないでしょうか。実際に、食料品に限らず、あらゆる製品やサービスがこのところ相次いで値上げをしています。この値上げの背景には、世界的な原油高騰があります。この原油高はいつまで続くのでしょうか。そして、原油高の背景には何があるのでしょうか。

原油高騰で、食品や電気代も値上げに

10月25日、原油先物価格が一時、1バレル85ドルを記録しました。この価格は実に7年ぶりの高値です。原油先物価格の上昇とともに、石油やガソリンも高騰。ガソリンの全国平均価格は、昨年11月に1リットル120.9円だったのに対して、今年10月には152.4円を記録しています(レギュラー実売価格)。灯油価格も昨年11月には18リットル1418円だったのが、今年10月には1860円に急騰しています(店頭価格)。

原油高は、ガソリンや灯油だけではなく、さまざまな物品の価格に影響を及ぼします。たとえば、食品。大手食品メーカー・日清フーズは10月25日、151もの商品の値上げを発表しました。商品によって値上げ幅は異なりますが、現行価格よりおおむね3~6%が値上げされます。値上げの一番の理由は、小麦粉価格の高騰がありますが、原油価格高騰による包材費や運搬コストの上昇も大いに関係しています。

ほかにもすでに値上がりしている分野は少なくありません。燃料代高騰によるクリーニング店の値上げ、燃油サーチャージ上昇による飛行機代金の値上げ、電気を作る際にも原油は欠かせませんので、電気代も実際に値上がりしています。

現在はまだ表立った動きはないものの、農産品や魚介類の値動きにも注意する必要があるでしょう。ビニールハウスは石油でできており、ハウス内を温めるのに灯油は欠かせません。原油高騰により輸送費も増大することから、農産品全般の高騰にも備えておく必要があります。漁に行く船を動かすにもガソリンが必要ですので、魚介類の値上げも考えられます。さらに、衣料品やプラスチック製品、ビニール製品など、より幅広い製品に価格が転嫁される可能性があるでしょう。

原油高はいつまで続くのか?

工場のライト群
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それでは、この原油高。いつまで続くのでしょうか。多くの方が、短期で収束することを望んでいるでしょう。しかし、しばらくの間、原油価格は高値で推移するというのが多くの専門家の共通した認識です。

「原油を多く生産すればいいのでは?」と思う方もいると思います。確かに、物の価格は需要と供給のバランスで決まりますので、供給量(原油の生産量)が増えれば価格は下がります。ただ、主要産出国の一つで、石油輸出国機構(OPEC)のリーダー国であるサウジアラビアは世界からの原油増産要請を拒否しました。原油価格の乱高下を防ぐというのが表向きの理由ですが、それだけではありません。先進国への不信感がその大きな理由です。

ところで、「石器時代が終わったのは石がなくなったからではない」という言葉をご存じでしょうか。サウジアラビアの石油大臣だったアハメド・ザキ・ヤマニ氏の言葉です。石器時代が終わった理由は、石を取りつくしたことではなく、青銅器や鉄器などの新しい技術の台頭だったという意味です。

石油も同じで、石油の時代が終わる理由は、石油が枯渇することではなく代替エネルギーが出てくることだとして、原油価格を高くしてより儲けたいOPEC各国に「あまり価格を上げすぎると新たなエネルギーが出現し、石油の時代が終わる」と諭したのです。

このように、サウジアラビアは長らく原油価格を上げたいOPEC各国を説得してきた存在でした。しかし、なぜ今、原油増産要請、つまり原油価格を抑えることを拒否したのでしょうか。

原油産出国が価格を抑制しないワケ

風力エネルギー
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現在、日本を含む先進各国は、急速に脱炭素に舵を切っています。アメリカのバイデン大統領は、2030年までに二酸化炭素排出量を、2005年比で50~52%削減すると公約しました。ヨーロッパ各国も同様で、EU加盟国は2030年までに地球温暖化ガスを1990年比で55%削減する方針です。日本も地球温暖化ガスの排出量を、2030年度までに2013年度比で46%削減し、2050年には実質ゼロにすると発表しています。二酸化炭素排出量や地球温暖化ガスを削減するには、石炭や石油などの燃料から低炭素な燃料へ大きくシフトチェンジしなければなりません。長らく世界の発展を支えてきた石油や石炭は、この時代、悪者にされてしまったのです。

この先進国の動きに、石油産出国が危機感を覚えないわけがありません。石油で儲けられるうちに、できるだけ多く儲けたいと考えることは自然なことです。これまで必死に石油価格を抑えることに腐心してきたサウジアラビアからすれば、「価格に関係なく、早晩、石油は使わなくなる」と先進各国から突き付けられたとも取れるわけで、OPEC各国を説得する根拠を失ってしまいました。それに、脱石油が今後より進むのであれば、サウジアラビアも儲けられるうちに儲けなくてはならないわけです。

「ちょっと困っているときに、石油の産出量を上げろなんて言っても、お前ら(先進国)はそのうち石油を使わなくなるんだろう。だったら勝手にさせてもらうよ。」これが、サウジアラビアおよび石油産出国の偽らざる本音でしょう。

このような思いを抱いている相手に、現在の日本政府のように「産油国に増産を要請する」というだけで事態は解決するでしょうか。

ロシアのプーチン大統領は、「原油価格は1バレル100ドルを超える可能性が高い」と警鐘を鳴らしています。本当に、プーチン大統領の言う通りになったら、それは第三次オイルショックと言っても過言ではありません。コロナ禍からの世界的な回復のためには、原油高騰は足かせにしかなりません。しかも、原油高騰の影響をより受けるのは資金が豊富な先進国ではなく、貧しい途上国です。先進各国は協調して、第三次オイルショックを起こさないためのあらゆる施策を取る責任があるのではないでしょうか。