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5月の連休は売り?株式市場の「セル・イン・メイ」を検証してみた

経済とお金のはなし 山下 耕太郎

5月の連休は売り?株式市場の「セル・イン・メイ」を検証してみた

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株式市場で有名なアノマリー(経験則)として、「セル・イン・メイ(5月に株を売れ)」という言葉があります。この記事では、アノマリーとはどういう意味なのか、そして本当に「セル・イン・メイ」というアノマリーは正しいのかについて解説します。

アノマリーとは

アノマリーとは、投資の理論では説明できない相場での経験則のことです。アノマリーの代表的な例として、「小型株効果」があります。株式は流動性(売買のしやすさ)と時価総額(株価×発行済み株式数)によって、「大型株」「中型株」「小型株」に分けられます。

そして、小型株とは、流動性や時価総額が低い銘柄のことです。国内株の9割は小型株といわれていて、一度注目が集まると価格変動が大きくなるという特徴があります。そして、「小型株効果」とは、小型株で構成されたポートフォリオ(保有する資産)は、大型株や中型株などを組み入れたポートフォリオよりもリターンが高くなりやすいという現象です。

現在の投資理論では、株価は大型株・中型株・小型株にかかわらずに決まるとされていますが、小型株のリターンが高くなるという傾向があるのです。

季節ごとのアノマリー

株式チャート
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季節ごとのアノマリーも有名です。たとえば、「1月効果」や「節分天井・彼岸底」「サンタクロース・ラリー」などがあります。

1月効果とは、株式市場で1月の収益率がほかの月よりも高くなりやすい現象のことです。特に小型株でその傾向が見られます。年末に税金対策として売りが出る一方、年明けには新規の資金が流入しやすいことが原因といわれています。

次の「節分天井・彼岸底」とは、年明けから上昇していた株式市場が2月の節分の時期に高値をつけ、3月の彼岸あたりで底を打つというアノマリーです。新年の資金流入が2月には一服して天井をつけ、3月期の決算対策で売りが出やすくなる3月20日頃まで株価が下がり続けるというアノマリーです。

最後の「サンタクロース・ラリー」とは、特に米国の株式市場で見られる、クリスマスから新年1月にかけて株価が上昇する現象のことです。米国人投資家も、12月は税金対策によって株式を売る傾向がありますが、クリスマス以降は投資家も休暇に入り、売り圧力もなくなります。

ですから、年末から1月にかけて株価は上がりやすくなるのです。

セル・イン・メイ(5月に売れ)とは

セル・イン・メイ
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「Sell in May(セル・イン・メイ)」も米国の有名なアノマリーの一つです。これは、5月に株を売って、9月半ばまでは株式市場から離れた方がいいという格言です。

5月はヘッジファンドなどの決算が集中します。ヘッジファンドとは、機関投資家や富裕層からお金を集めて運用する投資家のことです。また、5月のドライブシーズンから夏場にかけて米国では休暇を取る投資家が多くなり、相場が閑散になることが理由として考えられます。

セル・イン・メイは米国のアノマリーですが、米国の株式市場は世界の株式市場に大きな影響を与えるので、売買タイミングとして注意が必要です。日本でも5月の連休が重なることから、「セル・イン・メイ」が意識されて連休前に売りが出やすくなることもあります。

それでは、「セル・イン・メイ」のアノマリーは実際に起きているのでしょうか。過去5年間のNYダウの騰落率(4月末と9月末を比較)は、以下の通りです。

過去5年間のNYダウの騰落率

ただ、ITバブル崩壊後の2001年は-17.6%、リーマンショック時の2008年は-15.4%となっており、株式市場が暴落した年は「セル・イン・メイ」が正しいときもありました。過去5年間のNYダウの4月末時点と9月末時点を比較すると、約 6.35%の上昇となりました。「セル・イン・メイ」のアノマリーは起きていません。ここ10年以上、米国株式市場は上昇相場が続いているので、基本的には保有しておいた方が良かったという結果になります。

あくまでも経験則の一つですが、株式市場が不安定になっているときは「セル・イン・メイ」のアノマリーが意識されているのかもしれません。

まとめ

株式市場には投資理論では説明できない「アノマリー」という現象があり、「セル・イン・メイ」は代表的なアノマリーの一つです。ただ、アノマリーは過去の経験則なので、必ず毎年起きるというわけではありません。

投資初心者におすすめの投資手法は、投資信託を利用した「長期・積立・分散」投資です。少額でコツコツ積立投資をしていれば、株価が下がったときは買いのチャンスになります。SBI証券や楽天証券などのネット証券を利用すれば100円から投資信託の積立投資を利用できるので、少額で投資を始め、日々の株価の値動きに一喜一憂しないことが大切です。

※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。