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ドルコストより効果アリ?目標額重視なら「バリュー平均法」で積立投資を

ふやす 内山 貴博

ドルコストより効果アリ?目標額重視なら「バリュー平均法」で積立投資を

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資産形成に欠かすことができない積立投資。この積立投資を行う場合に、王道とされているのが毎月の投資額を固定する「ドルコスト平均法」です。積立投資初心者でも実践しやすく、リスクを下げる手法として用いられています。

そして、ドルコスト平均法の一歩先を行くのが「バリュー平均法」です。これはどのような手法を用いる投資方法なのか、ドルコスト平均法とはどのような点が違うのか、メリット、デメリットを踏まえて解説していきます。

ドルコスト平均法とは

まずはドルコスト平均法から確認していきましょう。ドルコスト平均法は価格が変動する株式などを定時定額で積立していく方法です。

例えば毎月1万円を積み立てるとします。株価や投資信託の基準価額が2000円の場合は5単位購入し、5000円の時は2単位購入します。つまり価格が変動するものに対して投資額を固定することで、安いときには多く買うことができ、高いときは少ししか購入しません。その結果、平均買付価格が下がりやすい。つまり利益が出やすい投資手法となります。

バリュー平均法とは

バリュー平均法は、毎月積み立てるという点ではドルコスト平均法とよく似ていますが、バリュー平均法の場合、「10年後の住宅購入資金のために600万円貯めたい」といった目標額を決めることからはじまります。

この場合は年間60万円、月額にすると5万円が積立額として必要となります。しかし、株式や投資信託は日々価格が変動するため、毎月の積立額を、その時点の総額に応じて変更しながら積み立てていきます。これがバリュー平均法の本質です。

バリュー平均法の運用例をみてみましょう。
月5万円の積立から始めるとします。初月は5万円を積み立てます。2カ月目には、A株の価格が1万円上昇し、積立額が6万円になっていました。その場合は2カ月目の積立額を4万円に抑えます。これで「2カ月で10万円」に到達し、毎月5万円ペースを保つことになります。

しかし、3カ月目には10万円分購入していたA株の株価が下がり、残高が9万円となりました。その場合は6万円を積み立てることで「3カ月で15万円」を達成します。

このように株価が高い場合には積立額を減らし、低い場合には積立額を増やすことになります。

バリュー平均法のメリット

メリットとデメリット
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バリュー平均法は何より目標額を強く意識しているため、継続することで確実に目標に到達することができます。価格上昇時に購入金額が減るため、ドルコスト平均法よりも一段と口数を減らす効果がはたらき、価格下落時も同様に一段と口数を増やす効果がはたらきます。上手く機能すれば予定よりも随分と少ない積立額で目標額に到達することも期待できます。

バリュー平均法のデメリット

経済や景気が循環し、株価も上下変動し、割高・割安局面がある。というのがバリュー平均法の前提となっていますが、長期的に下落トレンドとなった場合は要注意です。

特に個別株や環境関連、資源・食糧などをテーマにしたテーマ型の投資信託などは、悪材料が重なり、長期的に期待できないということになると下げが止まらず、大きく価値が下落していくことも考えられます。最悪、企業の破綻、国の債務超過などで価値がゼロに近づくことも考えられます。

バリュー平均法の場合、下がれば下がるほど購入額が増えることになるため、どんどん含み損が拡大し、悪い方へ進んでいく可能性もあります。

なお、ドルコスト平均法の場合、取引金融機関において積立額を設定しておくだけでよいのですが、バリュー平均法の場合、原則、状況を見ながら自身で毎月の積立額を変えなければなりませんので、手間がかかる点もデメリットとなります。

FPが考えるバリュー平均法の注意点や上手なつきあい方は

注意点・ポイント
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バリュー平均法とドルコスト平均法の最大の違いは「毎月の投資額が固定されているかどうか」です。バリュー平均法の「バリュー」は価値という意味です。株価という価値の変動に合わせて積立額も変動するため、それがメリットでもありデメリットにもなり得ます。

そしてもう1つ注意したいのは、バリュー平均法の場合、相場に応じて「途中売却」をするという点です。

これは、予想以上に株価の上昇ペースが速い場合です。
例えば「10年後に600万円を貯める」という目標であれば、1年後の目標額は60万円ですが、もし1年後に80万円貯まっていたら、目標超過分の20万円分を売却します。

しかし、もしかするとその時は好業績などによるさらなる追い風で、一段と株価が上昇していく局面かもしれません。そんな好機に口数を減らすことになるのです。言い方を変えれば、途中売却をしない方が、予定していた10年よりも随分と早くに目標額に到達することもあるのです。

「自分なりのバリュー平均法」として、例えば「途中で売却はしない。売却する状況にあっても最低でも〇円は積み立てる」など、オリジナルのルールを設けるのも一つの手です。

バリュー平均法のみならずドルコスト平均法で運用する場合にも言えることですが、自分なりに投資対象の企業や国の状況をチェックしたり、個別銘柄の分析手法や投資信託の月次レポートの見方などを覚える、ということも意識してください。

ぜひみなさんもドルコスト平均法から1歩進んだバリュー平均法を積立手段の一つに加え、自分なりの運用スタイルを確立してください。

※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。