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老後月10万円不労所得を得るにはいくら必要?30代からできること

ふやす

老後月10万円不労所得を得るにはいくら必要?30代からできること

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私たちの老後は、老齢年金受給開始の65歳から平均寿命まで生きたとしても、20年以上あります。その間、年金だけで生活するということに不安を感じる人も多いかもしれません。元気であれば働き続けて収入を得ることもできますが、病気など働けない状況も想定しなければなりません。

そこで「働かなくても月に10万円程度の収入があればいいのに」と配当金生活を考えることもあるでしょう。その不労所得のために、30代からやれることを具体的な方法や金額などシミュレーションを通して検証したいと思います。

不労所得は「不労」じゃない!?

賃貸用マンションを所有して家賃収入があるケースや、株式投資等で毎月のように配当金を受け取っているケースなどを一般的に「不労所得」ということがあります。「不労」というと「何もせずに収入が入ってくる」というイメージがあると思います。しかし、実際はそうではありません。少し矛盾しますが、まずは「月10万円程度の不労所得を得ている人はしっかり働いている」ということを知っておきましょう。

マンション経営は失敗する人もたくさんいます。うまくいっている人は経営について勉強したり、常に新しい情報を仕入れたり、物件周辺を熟知し、空室にならないためにどうすればよいかを考えています。こういう風に「働いている」からこそ成功しているケースが多いと考えられます。

今回のテーマは「不労所得」なので、以後もこの表現を使いますが、完全に働かないのではなく、やっぱり努力や工夫をした結果であるということを前提にしていた方が、これから成功する確率が高くなるでしょう。

まずは目標額と利回りを決めるところから

電卓を持つ猫
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月10万円を受け取ると、単純計算で年間の収入は120万円です。65歳から20年間受け取り続けると考えると2400万円、30年間の場合は3600万円となります。貯金を切り崩しながら生活する場合は65歳の時点で2400万円必要ですが、「運用しながら受け取る」となると見方が変わります。

例えば4%の利回りで運用しながら10万円ずつ受け取る場合、以下の「年金現価係数」を用いて計算することができます。年金現価係数とは、元本を一定の利率で複利運用しながら、毎年一定額を一定期間取り崩していく時、現在いくらの元本で複利運用を開始すればよいかを求める際に使用する係数です。

したがって、4%の利率で運用しながら年間120万円を20年間で取り崩したい場合、4%と20年が交差する「13.5903」を年間の受取額120万円に乗じます。

120万円×13.5903=約1630万円

つまり65歳時点で1630万円を用意できていれば、20年間運用しながら毎年10万円ずつ受け取ることができます。

<年金現価係数>

ただし、20年で財産をすべて取り崩してしまうのも心配かもしれません。そこで「年利4%で運用しながら、生涯なくならない財産を用意しておきたい」と考えてみましょう。そうするためには「毎年受け取る120万円が、65歳までに形成した財産の4%程度」であれば、財産が減らず、ずっと毎月10万円を受けとることができる計算となります。

以下の公式となります。65歳時点に用意しておきたい財産をAとします。4%は年利回りなので、月々受け取る額の10万円ではなく年換算の120万円を使います。

A×4%=120万円
A=3000万円

3000万円を年利4%で運用すれば年間120万円の収益が期待できるということです。よって、新たに発生した120万円を毎月10万円ずつ使うことができるため、結果、資産は減らないことになります。

実は、これは「FIRE」の考え方でもあります。「FIRE」とは「Financial Independence Retire Early」、つまり経済的な自由を手に早期退職をすることで、書店のお金や経済コーナーでもFIREがタイトルとなった書籍がたくさん並んでいます。毎年4%運用で増やし、その分を不労所得として使っていく。ここで気になるのが4%での運用が現実的かどうかということです。

年利回り4%の積立投資は現実的?

以下は金融庁が様々な資料で利用しているデータです。国内外、株と債券にバランスよく積立投資を行った場合、保有期間5年後と20年後にどうなるのか?という過去のデータを用いた検証結果です。5年だと2割程度が赤字となっていますが、20年保有すればデータ上赤字となるケースはなく、その多くが年率4%付近となっています。2024年1月からの新NISA制度では非課税期間が無期限となりましたが、旧NISA制度である「つみたてNISA」の非課税期間が20年となっていたのには、こういったデータも背景にあったのです。

金融庁HPより

よって、短期的な視点で毎年4%の収益をあげるというのは難しいところですが、長期的な視点で、年利4%程度で老後に向けて資産を増やし、それ以降も4%程度で運用しながら月10万円を受け取ることは決して難しいことではなさそうです。

まずはバランス型の投資信託などを軸に資産形成を

国内外の株や債券に投資をしていければ、上記金融庁のデータと同じような収益率が期待できます。現在は資産がバランスよく組み込まれた投資信託が多く販売されています。それらをコツコツ積み立てることが30代の今から最も気軽にできることの1つでしょう。もちろん経済や金融の知識を増やし、投資対象が割安なタイミングで追加投資をするといった対応ができるとさらに効率的な資産形成ができそうです。

毎月の積立額はいくら必要?

先ほどの計算から、「4%で運用しながら毎月10万円受け取っても資産が減らない」ためには3000万円が1つの目安ということが分かりました。では3000万円を65歳時点で用意するためにはいくら積み立てればよいでしょうか?
例えば35歳であれば残り30年です。単純計算で毎年100万円の積立が必要です。ただし、この場合も一定の利回りで運用できる前提で計算しましょう。「減債基金係数」を使うと簡単に求めることができます。「減債基金係数」とは、将来の一定期間後に目標金額を得るために、一定利率で一定の金額を複利運用で積み立てるとき、毎年のいくら積み立てればよいかを求める際に使用する係数です。

<減債基金係数>

まず30年と4%が交差する0.01783を目標額の3000万円に乗じます。
3000万円×4%=約53.5万円。
月換算すると53.5万円÷12=約45000円

今のうちから毎月4万5000円を積立投資に回すことができれば、65歳から毎月10万円の不労所得を得るという目標に近づくということです。もちろん、今、まとまった一時金がある人はそちらを運用に回せば、積立額はその分少なくて済みます。

配当金や利息、家賃収入など「インカムゲイン」中心に

金庫と硬貨
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不労所得のプランを考える際には、所得を2つに分けることが大切です。1つは「キャピタルゲイン」。これは価値が高まることで収益を得られることです。株で言えば、買った時より売る時の方が株価が高い場合の利益が該当します。「インカムゲイン」は定期的に受け取ることができる配当金や利息、家賃収入などが該当します。

例えば不動産を購入する場合でも、今後値上がりしそうな物件を購入するのか、安定的に家賃収入が見込める不動産を購入するのか、考え方によって対象となる物件が大きく異なる場合があります。これは他の金融商品でも概ね、同様のことがいえます。

よって30代からは当面「キャピタルゲイン」優先で、ややリスクがあっても長期的な視点で資産価値が大きく高まるものに投資をするというのも1つの考え方です。年齢を重ねていくうちに、安定的に配当を出せる企業の株など、やや「インカムゲイン」寄りの運用にシフトしていき、最終的に毎月10万円、配当金や利息、分配金などでやりくりできる状態を目指すとよいでしょう。

まとめ

「誰でも簡単に不労所得」というわけにはいきません。しっかり各種金融商品の特徴や注意点、投資の基本などを学ぶことから始めてみましょう。

今回紹介した年金現価係数や減債基金係数はとても便利です。ネット上でも簡単に調べることができます。またファイナンシャルプランナー(FP)は資格取得の段階でこのような係数を学習します。FPの学習をして、こういった係数を自在に使いこなせるようになるのも、不労所得の目標に近づくかもしれませんね。

※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。