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「40年住宅ローン」ってやばい?メリットやデメリットを解説

かりる 中村 賢司

「40年住宅ローン」ってやばい?メリットやデメリットを解説

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住宅ローンと言えば一般的に35年ローンが耳慣れていますが、今は返済期間が40年や50年といった35年超の長期の住宅ローンもあり、利用者は全体の10%弱(※)に上ります。

※住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査(2020年5月調査)

40年ローンにすると毎月の返済額を抑えられるだけでなく、借入金額を増やすことができ、物件をアップグレードできるというメリットがあります。しかしその一方で返済期間が長い上、支払利息が増えてしまうので大変なだけじゃないの?と感じる人もいるかと思います。

そこで今回は40年の住宅ローンについてそれぞれのメリットやデメリット、どのような人に向いているのか、また35年ローンとの比較なども行いながら、40年ローンの魅力について解説します。

返済期間40年、50年の住宅ローンが誕生した背景

住宅ローンを借りる際、返済期間は最長35年という認識の人がほとんどだと思います。しかし、2009年に住宅金融支援機構が「フラット50」(借入期間50年)を取り扱い始めたことをきっかけに、金融機関も追随して返済期間が40年や50年といった超長期の住宅ローンを取り扱う銀行が増えてきました。

その背景には、建築資材高騰による住宅価格の高騰、さらに不動産価格の上昇などがあります。住宅取得費用が増え、借入金額を増やさなければならなくなった結果、年収が低い20代では住宅ローンを借りにくいという問題が発生し、その課題を解決するために、40年や50年といった返済期間35年超の住宅ローンが登場。若者を中心に注目が集まり始めました。

40年ローンがを組める年齢や条件とは?

住宅ローン
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では40年の住宅ローンの条件とはどういうものでしょうか。ローンの審査では完済時年齢が重視されています。申込年齢は20歳以上70歳以下でも、完済時年齢は80歳未満としている金融機関が多いようです。

特に40年の住宅ローンを組む場合、完済時年齢を80歳とした場合、逆算すると申し込める年齢は40歳未満ということになります。

一方で、返済期間が長くなる分、返済負担率の面では年収の低い人でも借りやすくなります。一般的に返済負担率は、年収400万円未満で30%以下、年収400万円以上で35%以下(金融機関により異なります)としているケースが多いです。40年ローンの場合、毎月の返済額が軽減されるため、年収が低い若年層でも借りやすいといえるでしょう。

20~30代が長期でローンを組むメリット

家を購入したカップル
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それでは40年ローンの対象となる20~30代が、長期で住宅ローンを組むメリットをみていきましょう。

月の返済額を抑えられる

同じ金額を借りるにしても、返済期間により毎月の返済額は大きく変わります。返済期間を短くすると毎月の返済額は高くなり、返済期間を長くすると毎月の返済額は低くなります。

よって、子供の教育費や毎月のやりくりにお金がかかり、住居費を抑えたい子育て世代にとって、40年ローンは大変有効な住宅ローンといえるでしょう。

住宅ローンの返済額を抑えることで、子供の教育費やレジャー・旅行などに回すことができ、生活を充実させられます。

借入期間が長いと審査に通りやすい

住宅ローンの審査において、金融機関は返済負担率を重視します。年収に対して年間の返済総額がおおむね30~35%以内でないと住宅ローンの審査に通りません。

よって35年ローンでは通らなかった審査でも、返済期間を5年延ばして40年ローンにすることで、年間の返済総額が軽減し審査が通りやすくなるのです。

物件をアップグレードできる

40年ローンにすることで毎月の返済額を軽減させる効果があり、かつ返済負担額の面からも審査が通りやすくなることは前述したとおりです。

ということは、審査が通りやすくなる分、借入額を増やして物件をアップグレードすることもできます。35年ローンでは審査が通らず手が出なかった物件も、40年ローンを組むことで審査に通り、手に入れることができるかもしれません。

返済ペースを調整しやすい・返済の選択肢が増える(繰り上げ返済など)

毎月のやりくりに余裕がある人があえて40年ローンを組み、返済ペースを調整できるのも40年ローンのメリットです。月の返済額が少なく済む分、貯蓄に回せるお金が増え、その資金を繰り上げ返済に充てることで返済期間を短縮することもできます。

例えば思うように貯蓄ができなかった年は繰り上げ返済をせず、余裕ができた時に繰り上げ返済を行うというように、返済プランの選択肢が増えます。

また、余裕資金を繰り上げ返済に回さず、NISAなどで運用し、資産を増やしてから繰り上げ返済するという選択肢もあります。住宅ローンの金利を上回る資産運用ができる自信がある人はチャレンジしてみてください。

団信に長期間加入できるため生命保険料の節約になる

民間の住宅ローンは団体信用生命保険への加入が義務付けられています。40年ローンであれば、この団信に40年間加入し続けられるため、生命保険の保障額を減額して生命保険料を抑えることができます。

このような考えから、あえて繰り上げ返済は行わず、生命保険代わりに団信を活用している人もいます。

35年ローンとの比較(月の返済額、返済総額)

今までメリットを中心にみてきましたが、実際に35年ローンと40年ローンを比較した場合、毎月の返済額や返済総額にどれくらい違いがでるのか、具体的に試算してみましょう。

(例1)
【金利】1.7%(全期間固定金利フラット35の平均的な金利)
【借入額】5000万円(元利均等返済)

(例2)
【金利】0.35%(ネット銀行の変動金利相場、返済期間中金利が変動しない前提)
【借入額】5000万円(元利均等返済)

長期でローンを組むデメリット

書類を見て驚くカップル
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長期で住宅ローンを組むことはメリットばかりではありません。デメリットにはどのようなものがあるのか、見ていきましょう。

総返済額が多くなる

前述した35年ローンと40年ローンの比較表のとおり、毎月の返済額を抑えられる一方で、返済期間が長くなった分、総返済額が多くなります。それに伴い支払利息の総額も多くなるので注意が必要です。

毎月のやりくりは楽になってもトータルでみると家計の支出は逆に多くなるのです。

設定金利が高い場合が多い

住宅ローンの金利は、変動金利タイプより10年などの固定期間選択型タイプの方が高く、さらに全期間固定金利タイプの方が高くなります。

さらに借入期間が長くなると設定金利も高い場合が多いのです。全期間固定金利のフラット35とフラット50の金利を比べた場合、フラット35は1.76%、フラット50は2.24%と0.48%も高く設定されています。(※2023年4月現在)

定年後も返済が続く可能性がある

例えば30歳から40年ローンを組んだ場合、完済時年齢は70歳です。途中繰り上げ返済をしなかったとすると定年後も返済が続き、年金の一部を返済に充てることになるため、老後のライフプランに大きな影響を及ぼします。

よって40年ローンを組む際は、完済時年齢と定年年齢を合わせるか、老後の年金生活に入る前に繰り上げ返済の計画を立てるなど、返済計画をしっかり立てておく必要があります。

選べる金融機関や商品の選択肢が少ない

一般的な35年ローンはどこの金融機関でも取り扱っていますが、40年ローンを取り扱っている金融機関はまだ少数です。借入を希望する金融機関が取り扱っていない場合もあるでしょう。また、40年ローンはその種類も少ないので選択肢が少ないといえます。

まとめ

今回紹介した40年ローンは、比較的若い世代の人に向いているといえます。毎月の返済額を低く抑えられ、生活にゆとりが生まれます。特に20~30代の子育て世帯は、住宅ローンの返済と同時並行で子供の教育資金も貯めなければならないため40年ローンが役立つでしょう。

人生の三大支出である住宅資金と教育資金をうまくやりくりするために、40年ローンはとても有効です。支払利息総額が多くなるというデメリット以上に生活のゆとりや物件のグレードアップなどメリットの方が大きいといえるでしょう。

しかし40年という長い期間、住宅ローンを返済し続けるのは大変です。完済時年齢が定年年齢をオーバーする場合は、繰り上げ返済計画などもしっかり立てた上で40年ローンを検討するようにしてください。