年収300万円で40年勤務、年金受給額はいくら?【年収別試算】
普段はあまり気にしていないけれど、ニュースなどで取り上げられるとちょっと気になる年金の話。20~30代にとってはまだまだ遠い話かもしれませんが、自分の給料で将来の年金受給額はいくらくらいになるのかは気になりますよね。今回は年金受給額の簡単な計算方法をご紹介し、年収別の見込み試算をしていきます。
日本の年金制度について
日本の公的年金制度は「国民年金」と「厚生年金」の大きく2つに分かれます。また、それぞれの年金制度の中には「遺族」「障害」「老齢」の3つの年金が用意されています。このなかで65歳から受け取ることができるのが「老齢年金」です。今回は、国民年金と厚生年金の老齢年金について掘り下げます。
国民年金と厚生年金の違い
日本の公的年金制度は20~60歳までの全ての人が加入者となる国民年金と、会社員が加入対象となる厚生年金の2つに分かれます。
3階部分のiDeCo(個人型確定拠出年金)は、国民年金・厚生年金のどちらの制度でも利用できます。
また公的年金では年金の保険料を納める被保険者を3つに分けています。
第1号被保険者と第3号被保険者は国民年金、第2号被保険者は厚生年金の対象者になります。
国民年金は20~60才までの全員が加入する老齢基礎年金となり、令和5年度の保険料は毎月1万6520円です。なお国民年金を満額受給するには、20~60才までの480カ月間分の保険料を欠けることなく納付する必要があります。
厚生年金は会社員に適用される年金制度です。国民年金に加え、報酬比例部分の上乗せ保険料を納めることで将来の年金が増える仕組みです。給与が多ければ厚生年金保険料も多くなり、将来の年金も増えます。反対に、給与が少なくなると厚生年金保険料も下がり、報酬比例部分の年金額も少なくなります。
国民年金と厚生年金の老齢年金の平均受給額
次に厚生労働省が毎年発表している「厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和3年度版)」から国民年金と厚生年金、それぞれの平均受給月額を見てみましょう。
年度により細かな違いはありますが、国民年金と厚生年金では毎月の受給額でおよそ9万円の差があります。表の数値はあくまでも平均値なので、個々人による違いはさらに大きくなりそうです。
年収300万円で40年勤務したら、年金額はいくら?
ここまで年金制度の概要について触れてきましたが、気になるのは自分の年金額がいくらになるかというところだと思います。まずは年金の計算式を簡単に解説します。
国民年金の試算方法
国民年金の受給額は物価の変動などに合わせ毎年調整されます。ちなみに、調整後の令和5年度の国民年金の受給額は満額で年間79万5000円です。この場合の満額とは20~60才までの480カ月の期間中、保険料を満額納付した場合の金額です。なお会社員の場合は、厚生年金保険料を支払っていれば、国民年金保険料を支払っているものとして扱われます。
国民年金は下記の式に当てはめて受取額を試算できます。
1625円×納付月数=国民年金受給額
例として大学生時代に2年間(24カ月)の納付免除をして、それ以降の456カ月は欠けることなく保険料を支払っていたケースで試算してみましょう。
1625円×456カ月=74万1000円
上記のケースの国民年金の年間受給額は74万1000円となり、月額で6万1750円となります。
国民年金のみの加入者は上記の金額を受給します。
厚生年金の試算方法
老齢基礎年金に上乗せされる形で、老齢厚生年金の2階部分が支給されます。老齢厚生年金の支給額は、老齢基礎年金と異なり、会社勤務期間やその期間中の給与によって決まります。また、厚生年金は70歳まで加入可能なため、60歳以降も働くことで年金額を増やすことができます。下の表は年収ごとの年間の厚生年金受給額の見込みです。
厚生年金加入者は、上記の金額に国民年金の金額を加えた額を受給します。
例えば年収300万円で40年間勤務した場合の受給額は以下のように計算します。
厚生年金受給額69万2280円+国民年金受給額(令和5年分)79万5000円=148万7280円/年
※1カ月あたり12万3940円
公的年金シミュレーターを使ってみましょう
厚生労働省がパソコンやスマートフォン・タブレットで年金額を試算できるツール「公的年金シミュレーター」を公表しています。生年月日や働き方、年収などを入力すると年金受給額を簡易的に計算してくれます。ねんきん定期便があれば、より詳しく試算できます。
厚生労働省 公的年金シミュレーター
年金受給額を増やすためできること
年収ごとのおおよその年金受給額を見て、「もっと年金を増やしたい」と思った方も多いでしょう。ここからは年金を増やすためにできることを紹介します。
国民年金の追納
日本国内に住む全ての人は、20歳から国民年金の被保険者となり、保険料の支払いが必要です。ただし、学生は「学生納付特例制度」を利用することで、保険料の支払いが猶予されます。つまり、この制度により、学生である期間中は保険料を納付する必要がありません。
ただし、この猶予期間は将来の年金受給資格期間には含まれますが、年金額には反映されません。年金受給額に反映させるには、保険料を後から追納する必要があります。追納期限は10年以内で、期限内に全額追納すれば、保険料を支払った場合と同じ年金額を受け取ることができます。
国民年金基金に加入する
会社員の場合、年金制度は2階建てで、1階に国民年金(老齢基礎年金)、2階に厚生年金(老齢厚生年金、企業年金等)があります。しかしながら、自営業やフリーランスなど国民年金の第1号被保険者の場合は、1階部分しかありません。ただし、国民年金基金に加入することで、2階建ての制度となり、受給額を上乗せさせることができます。
付加年金に加入する
第1号被保険者・任意加入被保険者(※)が定額保険料に付加保険料(月額400円)をプラスして納付すると、老齢基礎年金に付加年金が上乗せされます。受け取れる付加年金の年金額は200円×付加保険料の納付月数となります。例えば付加保険料を10年間納めた場合の保険料の合計は4万8000円(月400円×12カ月×10年)です。そして、1年間に受け取れる年金額は終身で2万4000円(月200円×120カ月)増額されます。付加年金を利用できる対象の要件はあるので、気になる人は確認してみてください。
(※)「60歳までに老齢基礎年金の受給資格期間を満たせない」「加入期間が480ヵ月ないため、満額の年金を受給できない」等の事情があり、厚生年金に加入していない人は60歳以降も国民年金に任意で加入することができます。このような加入者を任意加入被保険者と呼びます。
扶養を外れて働く
社会保険上の扶養の範囲で働いている方は、状況が許せば扶養を外れて社会保険適用になるまで勤務するというのも良いでしょう。社会保険適用になれば年金がアップするだけではなく、健康保険の傷病手当金の対象になります。ただし、社会保険料を自分で支払うため手取り金額が少なくなることもあります。
給料を増やす
厚生年金は報酬比例部分があり、給与に応じて年金額も変わります。昇給・転職などで給与が増えると、その分支払う社会保険料が増えてしまいますが、将来受け取れる年金も増えます。
繰り下げ受給する
国民年金と厚生年金はどちらも65才が受給開始年齢ですが、受給開始を遅らせると受給額が1カ月ごとに0.5%増額されます。仮に70才まで受給開始を遅らせると年金額は約1.4倍まで増加します。
老後の資産を増やすためにできること
年金を増やすことも重要ですが、それ以上に老後の資産を増やしていくことがもっと大切です。ここでは老後の資産を増やすためにできることを紹介します。
iDeCoに加入する
20才以上の人が加入できるiDeCo(個人型確定拠出年金)。iDeCoは自分で資金を準備し、老後に向けて積み立てる制度です。預金や投資信託などの金融商品を自分で選び、積み立てた資金を運用していきます。積み立てた資金を受け取れるのは60才以降となり、途中で引き出すことができないため老後資金をしっかりと準備することができます。なお人によって限度額は異なりますが、積み立てた掛け金は全額所得控除の対象になり、所得税や住民税などの節税効果もあります。
NISA制度を活用する
通常、株式投資や投資信託などから得た利益には約20%の税金が課せられますが、少額投資非課税制度であるNISAを活用すれば利益への課税はありません。中でも、つみたてNISAは非課税運用期間が20年と長期のため、2023年に積み立てた投資信託は2042年まで非課税で運用できます。
また2024年から新NISAの制度がスタートし、非課税運用期間が無期限になります。20代や30代であれば運用期間が30~40年程度を見込めるため、将来に必要な資金を準備するのにピッタリの制度になります。
残念ながら預貯金だけでは資産形成が難しい時代になっています。iDeCoやNISAなどの制度を活用し、「長期・分散・積み立て」というスタイルで資産を増やすことを目指しましょう。
まとめ
年金は老後の生活を支える大事な制度です。ただし少子高齢化を反映し、年金を取り巻く状況が良くなることは期待できません。iDeCoやNISAなど税金面のメリットがある制度を活用し、少しずつでもよいので準備をしておきましょう。特にiDeCoは60才以降でなければ引き出しができないので、貯めても使いがちな人にとっても良い制度だと思います。また自営業者や専業主婦(夫)は国民年金のみとなるので、自分で老後資金を増やすという意味でも運用を取り入れることをオススメします。
※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。