ベーシックインカムも視野、虹彩で登録の「ワールドコイン」に注目
こんにちは、フリーランスのコピーライター、中新大地です。
突然ですが、今世界はより大きく、より複雑なものになりつつあることを、皆さんはどこまで感じているでしょうか?
インターネットを通じて人々は、今までは知る由もなかった人々と話したり、その土地の暮らしや文化に触れたりすることができるようになりました。そんなインターネット上にあふれる情報を集め、学習していくことで難しい計算や人間と見紛うばかりの会話を可能とするAIも登場しています。
私たちは、私たち自身が人間たり得ることを証明する方法、何のために生きるのかを問われる時代へと突入しようとしています。
今回はそうした課題や問いかけに対する回答の足掛かりになるかもしれない、「ワールドコイン計画」についてご紹介します。
世界を改革する!ワールドコイン計画とは?
「ワールドコイン計画」とは、今世間を賑わせているChatGPTで有名なOpenAIのCEO、サム・アルトマン氏らが手がける、仮想通貨を介したプロジェクトのことです。
この計画が掲げるのは「世界の改革」であり、人間とAIを区別することや人々の経済格差を埋めることを目的としています。公式サイトトップに表示される『For every human』の一文からも、その確固たる意志が感じられます。
そんな壮大なビジョンの下、具体的に行っていく事業は、世界の人々に対するグローバルな身元確認と公的な金融サービスの提供です。
ワールドコインでは人間の目にある虹彩をスキャンすることで、World IDと呼ばれるアカウントを発行できます(後に詳述)。ユーザーはその対価として、ワールドコイン(WLD)という仮想通貨を受け取れる仕組みになっています。自分専用のウォレット「World App」を使えば、仮想通貨の取引も可能です。地政学的な事情などから金融機関が利用できないユーザーにとっては、経済へアクセスするための解決策となる可能性があります。
近未来的な取り組みは世界に!ワールドコインの虹彩スキャンとは?
AIが人間と同等、もしくはそれ以上の能力を発揮する時代においては、「どうすれば人間が人間であることを証明し、どうすればAIの暴走を止められるのか」という点が大きな課題になってきます。
その上で虹彩スキャンは、私たち人間だからこそできる証明の手段なのです。
ワールドコイン計画ではこのスキャンのために、生体認証装置「オーブ」を開発。バレーボールくらいの大きさの銀色の球体に目を読み込ませるその様子は、近未来の到来を思わせます。
世界各地20カ国35地域で会場を設けた登録会が開催されており、ベータ版リリース時点で200万人が登録を終えているとのこと。
ゼロ知識証明(特定の主張の真実を証明する時、自分が持つ情報を公開することなく、その主張が真であることを証明するもの)という技術を用いることで、人間であることを担保します。
当然、AIには虹彩がないわけですから登録はできませんし、メールアドレスやパスワードを用いて登録するわけではないため、情報が漏洩するリスクも抑えられることになります。
しかし、このオーブというデバイスの秘匿性の高さから、「ワールドコイン側に情報を握られていることの危うさ」を指摘する声もあります。たとえば、本当に情報が厳重に管理されるのかどうか、そしてベーシックインカムや自身の資産を預けたWorld Appが何者かの悪意によって凍結されるリスクがあるというのです。
まだ研究や活用が進んでいない生体情報というきわめて高度な情報を、一企業が握ろうとしていることへの不信感もあります。
登録はこうした先行き不透明な状況を理解した上で、自己責任で行ってください。
登録会は今も世界各地で開催されており、日本も例外ではありません。
登録は完全予約制となっているため、ワールドコインに登録したい人は公式サイトでスケジュールと手順を確認しましょう。予約には前述のWorld Appも必要となります。
ワールドコインがベーシックインカムを牽引する未来
アルトマン氏はワールドコイン計画を通してベーシックインカム(すべての市民に一定の金額を定期的に配布するもの)の普及を目指しています。ベーシックインカムが普及することで、人々は生活に必要な最低限のコストを確保することが可能となり、貧困からの脱却や社会情勢の安定が期待できます。
現在OpenAIのChatGPTをはじめ、多くのAI関連のサービスが人間の仕事を奪いつつあります。オンラインで質問に回答してくれる、チャットボットなどはその最たる例でしょう。他にもAIがつくる、まるで実写のようなイラストが、広告に登場するモデル(人)の仕事を奪っているようなケースも既に見かけます。AIを使った事業の壁打ちも非常に便利で、コンサルタントのような役割を担ってもらうことも可能なレベルです。
AIが人智を超えるシンギュラリティ。その先には「人間は何のために生きるのか」「何をして生きるのか」「人間にしかできないことは何なのか」というあまりに大きな問いが待っています。
そうした事情を踏まえたベーシックインカムの普及は、人間とAIが共生する新時代におけるひとつの解決策、あるいは策を講じるまでの時間的かつ経済的な猶予をもたらすかもしれません。
私たち人間は生活が保障されることで、より文化的なことに時間を使うかもしれませんし、削減した仕事時間を家族との団らんに充てるかもしれません。あるいは、学術的な研究や自己の内省等に今以上の価値を見出すかもしれません。
人間に新たな問いを投げかける、ChatGPTを広めたアルトマン氏。そんな彼自身がその答えを模索している背景には、「人間を労働から解放する」という永遠のテーマがあるように思います。
ワールドコインで人間が人間であることの証明を行い、いつどこからでも誰もが平等に自分のウォレットを持つことができれば、ベーシックインカムの配布も円滑に行えることでしょう。
そのためには今後、各国政府とのロビー活動も重要になるでしょう。アルトマン氏は、OpenAIの取り組みでも日本政府と密接に連携していることから、ワールドコインでの連携にも注目です。
まとめ
ChatGPTで一躍有名になったサム・アルトマン氏は、AIがもたらす新しい未来を生きるヒントとして、ワールドコイン計画をも主導しています。
人間であることを証明し、誰もが等しく経済にアクセス可能となる仕組みは、ベーシックインカムなどの足掛かりとなり、人間の新しい生き方を想像させてくれます。
しかしそれと同時に、新しい技術の活用方法や私たちとの距離感を考えさせられる機会にもなっています。生体情報の取り扱いは、かなりデリケートな問題であることは認識しておくべきでしょう。
現在はまだ準備段階ではありますが、ここ数年のAIの急速な進歩と普及を考えると、アルトマン氏が思い描く未来もそう遠くないのかもしれません。
そのビジョンや紐づく技術のすべてを理解するのは難しいかもしれませんが、今後のアルトマン氏の実際の動きと、日本政府の対応には注目しておきたいところです。