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子供の教育資金、NISAで積み立てできる?口座管理の注意点も

FPにききたいお金のこと 中村 賢司

子供の教育資金、NISAで積み立てできる?口座管理の注意点も

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低金利が続く中、将来必要となる子どもの教育資金をただ積み立てるだけでなく、株や投資信託で運用しながら積み立てようと考えている人は少なくないでしょう。今回の「FPに聞きたいお金のこと」は、子どもの学費を資産運用で備える場合の注意点に関する30代の方からの相談です。どのようなメリットやリスクがあるのでしょうか。

子どもの学費を貯めるため、または運用する目的で株もしくは投資信託での投資をしたいと考えています。しかし自分名義の証券口座で始めると、どれがどの目的での投資か分からなくなりそうです。皆さんどのように管理しているのでしょうか?また、この場合は贈与税等には当てはまらないでしょうか? 

教育資金に向いている「投資信託」での積み立て運用

これまで教育資金を積み立てる場合、児童手当に手を付けずそのまま銀行で積み立てる方法や、学資保険に加入して毎月コツコツ積み立てる方法が一般的でした。しかし昨今の低金利で銀行預金や学資保険ではほとんど増えることがありません。また、インフレによりせっかく積み立てた資金が目減りしてしまうというリスクも考えておかなければいけません。

そこで相談者のように投資をして少しでも増やそうと考えている人が最近は増えてきています。教育資金を投資で積み立てる場合におすすめなのが「投資信託」です。株式投資という方法もありますが、リスクが高くなるため、あまりおすすめしません。投資先が倒産するとせっかく積み立てた資金がゼロになるという最悪な事態もあり得ます。

しかし投資信託であれば複数の投資先に分散投資しているので、この最悪なケースを避けることができます。ここでは投資信託で教育資金を積み立てることを前提に、そのポイントや注意点をご紹介します。

子供の教育資金と自分用の資金、NISAでどう管理すればいい?

通帳と電卓
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投資信託で教育資金を積み立てる際、わざわざ子どもの名義で証券口座を開設するのは少し手間です。そこで親名義の証券口座で積み立て投資などをしようと考えると思いますが、ここで問題になるのが、管理が難しくなるという点です。

自分の老後資金のための積み立てと子どもの教育資金のための積み立てをどのように区別して管理すれば良いのか、ポイントを3つ紹介します。

(A)証券口座を分ける

同じ証券会社に複数の口座を開設することはできません。そこで別の証券会社に新たに口座を開設するという方法です。この方法であれば、子ども名義でなくてもA証券会社は自分の老後資金用、B証券会社は子どもの教育資金用と区別することができます。

(B)投資信託の銘柄で分ける

他の証券会社に口座開設すると管理が大変になり面倒という方は、同じ証券会社でも投資信託の銘柄を分けるという方法があります。老後資金は教育資金よりも運用期間が長いのでリスクが高めの「株式ファンド」で積み立て、教育資金はリスクが低めの「債券ファンド」やリスクを分散した「バランスファンド」などで積み立てるという方法です。この方法であれば自分の資産と子どものための資産を明確に区別することができます。

(C)夫婦の名義で分ける

まだ配偶者が証券口座を開設していないという場合は、自分の証券口座の他に配偶者名義で新たに証券口座を作り、別々に管理する方法も有効です。(A)と同じような方法ですが、メリットは配偶者のNISA口座を利用できる点です。NISA口座は1人1口座しか開設できません。自分のNISAが老後資金用に投資枠を目一杯使っているという人は、配偶者のNISA口座を作ることで、非課税で運用することが可能となります。

3つの管理パターン、それぞれの注意点は

ポイント
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まず(A)「証券口座を分ける」の注意点は、全額を非課税で運用できないという点です。NISA口座は、1人1口座しか開設できません。すでに利用している証券会社でNISA口座を開設している場合は、別の証券会社で口座開設すると特定口座などの課税口座となります。よってせっかく利益が出ても約20%の税金がかかるので教育資金にまわせる資金が少し目減りすることとなります。

続いて(B)「投資信託の銘柄で分ける」の注意点は、リスクを取り過ぎないという点です。投資信託は元本保証がない金融商品です。増やすことばかり考えて過去のリターンが高いファンドを選ぶともちろんリスク(ブレ幅)も高くなります。いざ教育資金が必要となったタイミングで「〇〇ショック」というような暴落局面に遭遇してしまうと元本を大幅に下回るという危険性があります。

よってある程度リスクが低いとされる債券ファンドを選ぶか、国内外の株や債券のマーケットに分散投資しているバランスファンドを選ぶ方が教育資金の積み立てには向いているでしょう。もちろん他の方法で教育資金が確保できそうという方もおられると思いますので、ご自身のリスク許容度に応じて投資先を選ぶようにしてください。

最後に(C)「夫婦の名義で分ける」の注意点は、贈与税が発生してしまうことがある点です。夫の口座から妻の口座へ資金移動するということは、贈与税の対象となります。贈与税が非課税となる金額は年間110万円までなので、まとまった資金を移動する場合には十分にご注意ください。特に今手元にある資金を投資の財源にしようと考えている人は、一度にまとめて資金移動するのではなく、非課税の範囲内で複数年に分けて行うのがおすすめです。

贈与税の課税対象になるケースとは

他にも贈与税の課税対象となるケースがあります。親名義の口座から子ども名義の口座にお金を振り込んだときや、親が管理していた子ども名義の口座を子ども本人に渡すときなどは注意をしてください。

例えば、数年にわたり貯めてきた子どものお年玉や児童手当などを一度にまとめて子どもの口座へ振り込む場合、非課税枠の110万円を超えると贈与税の課税対象となる可能性があります。

また、教育資金の積み立てのつもりで子ども名義の口座に貯まった資金を、教育費としては使わずそのまま子ども本人へ渡すときなども贈与税が発生する場合があります。

贈与税が発生しないよう贈与税の基礎控除110万円を意識するようにしましょう。繰り返しになりますが、夫婦間や親子間でもまとまった資金移動には十分にご注意ください。

まとめ

子どもの学費を投資で積み立てる際、便利だった制度が「ジュニアNISA」です。しかしジュニアNISAは2023年末をもって終了します。子どもの名義で証券口座を作り、別管理することができたのでとても便利な制度だったのですが、残念でなりません。

2024年から新NISAが始まり年間の投資枠が拡大します。そこで自分のNISA口座を利用して子どもの学費を貯めようと考えている人も多いことでしょう。「成長投資枠」と「つみたて投資枠」を併せると年間360万円も投資できますが、子育て中のご家庭で月30万円も積み立てることはなかなか難しいでしょう。

よって別々の証券会社や別名義の口座を作るより、NISA口座を賢く利用して、自分用の老後資金はリスクが高い投資信託で、子ども用の教育資金はリスクが低い投資信託で運用することをおすすめします。

※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。