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別居で年金暮らしの両親を扶養に入れられる?気を付ける点は

FPにききたいお金のこと 内山 貴博

別居で年金暮らしの両親を扶養に入れられる?気を付ける点は

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今回の「FPに聞きたいお金のこと」は、40代男性から両親の扶養についての質問です。社会保険や税金の負担が増す中、扶養の関係について興味を持っている人は非常に多いです。ぜひ参考にしてください。

40代男性Yさんの相談内容

まだ元気に過ごしている両親(退職済み・別居)なのですが、今後のことも考え扶養に入れようと思っています。そもそも別居している親を扶養に入れることは可能なのでしょうか?また扶養に入れることが可能だった場合、どんなメリットとデメリットがあるのか知りたいです。

別居している両親も扶養できる

給与所得者の扶養控除等申告書
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「扶養する・扶養される」といった場合、配偶者や子供のケースが多いですが、両親を扶養に入れることも可能です。「税金や社会保険料の負担が減るのでは?」ということに目が向きがちですが、文字通り「扶養する」必要があるため、別居の両親に経済力があるかどうか?そして毎月の生活費として仕送りを行う、という具合に実際に扶養の関係にあることが前提となります。税金と社会保険で考え方が異なりますので以下それぞれ確認したいと思います。

公的医療保険(健康保険)における扶養の条件

Yさんは40代男性であるため、両親は60~70代で、既に年金を受給している世代であることが想定されます。この場合、両親が被扶養者となるためには年金を含む年収が180万円未満であり、Yさんの年間収入の2分の1未満である必要があります。例えば父親の年収が150万円の場合、Yさんの年収は300万円超であることが求められます。

また、別居であるため、仕送り額が父親の年収を上回っていることも条件となります。この事例の場合、年間150万円を超える仕送りが前提となります。

両親が扶養に入ることでYさんが会社員等で健康保険に加入している場合、両親は今後、保険料を負担しなくて良いという点が大きなメリットとなります。ただし、75歳以上は後期高齢者医療制度に加入することになるため、健康保険上の扶養になれるのは75歳までです。

税金上の扶養控除の条件

所得税や住民税においては扶養控除の対象となりYさんの税負担が軽減することが見込まれ、これが大きなメリットとなります。ただし、この場合も「納税者本人と生計を一にする」ことが条件となっていますので、別居の場合は仕送り等を行い、Yさんとご両親が同じ生計である客観的な状況が求められます。また年金収入のみの場合、両親それぞれの年金額が原則158万円以下でなければなりません。

これらの条件を満たせば、所得税の場合、70歳未満であれば1人あたり38万円、70歳以上で1人あたり48万円の所得控除を受けることができ、その分、税負担が大きく軽減されます。

介護サービス利用時は要注意

扶養に入ることで両親の社会保険料、Yさん自身の所得税や住民税の負担が軽減されることは大きなメリットですが、デメリットとして注意しておきたいのが介護や医療分野です。

高額介護サービス費の1カ月あたりの負担限度額は世帯の所得によって異なります。別居していても扶養の関係にあり同一世帯とみなされると、負担限度額がアップしてしまう可能性があります。例えば、同じ介護サービスを受けていても、月2万円程度でよかった介護サービス費の負担が2倍以上の4万円を超えるということも十分に想定されます。そうなるとこれまで紹介したメリットが相殺される可能性もあるため注意が必要です。

両親を経済的に支援する必要性をしっかり考慮 

SUPPORT
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現在年金を受け取っている世代の年金額は一般的なケースで約22万円(※)と老後の生活費としてそれほど少ない印象はありません。もちろん自営業で国民年金のみの期間が長かった人など個別の状況によっては年金だけでは生活できない人も一定数います。※厚生労働省「令和5年度の年金額改定」を参照

今回、別居の両親を扶養に入れることのメリットとデメリットを紹介しましたが、そもそも「経済的に仕送りが必要なのか?年金額で生活できているのか?」こういった点を確認することからはじめてください。

Yさんにも税制上のメリットがありますが、その分、仕送りをすることになり、それは大きな負担になることが想定されます。お互いにとって家計の状況や貯蓄状況、今後のお金の使い方を見直す良い機会になるといいですね。