転職したらiDeCo手続きは何が必要?もし忘れていたらどうなる?
今回の「FPに聞きたいお金のこと」は、60代男性から転職に伴うiDeCoの手続きについての相談です。今や転職が当たり前の時代。転職する際、iDeCoはどのような扱いになるのか、どういった手続きが必要なのか解説します。また、転職時に手続きを忘れていた場合の対処法についてもご紹介します。
60代会社員男性からの相談内容
この度転職することになりました。前の会社で勤務している間にiDeCoを始めたのですが、転職するにあたりどんな手続きがありますか?
転職後もiDeCoは継続できる
iDeCoは自営業をはじめ会社員や公務員、専業主婦と幅広く加入できる制度です。そのため基本的には転職後もiDeCoを継続できますが、勤務先の状況によって掛金上限額が異なるため手続きが必要となります。まずは加入者の属性による4つの種別パターンを確認します。
以前所属していた会社も転職先もどちらも厚生年金保険の適用事業所であれば、転職後も「第2号被保険者」であることには変わりはありません。この場合「加入者登録事業所変更届」と「事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書」を、iDeCoの運用先である金融機関(運営管理機関)に提出してください。
新しい勤務先に提出する「加入者登録事業所変更届」
新しい勤務先の情報を記載します。勤務先に企業年金や企業型DCがある場合、掛金上限額が異なる可能性があるため、変更する届出書の提出が必要です。
書式サンプル:iDeCo公式サイト「加入者登録事業所変更届」
新しい勤務先に記入してもらう「事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書」
新たな勤務先に記入してもらいます。転職時に総務部等に申し出て記入してもらいましょう。
書式サンプル:iDeCo公式サイト「事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書」
転職先の「被保険者種別」が異なる場合の対応
転職前と後の会社のいずれかが厚生年金保険の適用事業所でないこともあります。診療所や歯医者などの個人クリニック、税理士、法律事務所など個人の士業事務所などがそれに該当する場合があります。その時は上記第1~4号の被保険者種別が変わるため、別の手続きが必要となります。
例えば従業員2~3名の法律事務所の場合、厚生年金保険の適用事業所に該当せず国民年金に加入します。その後、大手の弁護士法人に転職した場合は第1号被保険者から第2号被保険者に変わることになります。
iDeCoの掛金上限額も変わるため手続きが必要となります。この場合、加入者被保険者種別変更届(第2号被保険者用)が必要となります。合わせて「事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書」も必要ですが、これは先の例と同じです。
加入者被保険者種別変更届(第2号被保険者用)
第1号から第2号、第3号から第2号、第4号から第2号に変わった際の届出書。
書式サンプル:iDeCo公式サイト「加入者被保険者種別変更届(第2号被保険者用)」
逆に、大手の弁護士法人から厚生年金保険の適用事業所に該当しない個人法律事務所に転職した場合は第2号から第1号に変更となるため、以下の届出書が必要となります。
加入者被保険者種別変更届(第1号被保険者用)
書式サンプル:iDeCo公式サイト「加入者被保険者種別変更届(第1号被保険者用)」
転職時はiDeCoの早めの手続きが重要
今回は転職後もiDeCoを継続する前提の相談でした。また転職先が企業型DCを導入している場合、iDeCoを継続することもできますが、iDeCoを継続せずにそれまでのiDeCo拠出分を企業型DCに移換することもできます。この場合、「加入者資格喪失届」を運営管理機関に届け出をするといった手続きが生じます。転職先の会社に確認しながら早めに進めていきましょう。
加入者喪失届
書式サンプル:iDeCo公式サイト「加入者喪失届」
種別や勤務先の形態によって掛金の上限が決まっていますが、転職時に手続きを失念し、手続きが遅れると、拠出額が超過してしまうことも考えられます。こういった場合、国民年金基金連合会が定期的にモニターしているため、発覚した時点でそれまでの超過分は還付されます。その際に手数料が生じるなど余計な負担が発生することになりますので、転職の際は早めに手続きすることを意識しておいてください。
※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。