【保存版】退職・転職する時に必要な「お金の手続き」まとめ
退職・転職をする時は、何かと書類の手続きが多く大変です。特にお金に関わる手続きはうっかりすると後で困ることになりかねません。ここでは、退職・転職の際に必要な書類やお金周りの手続きについて紹介します。すぐに転職する場合と、退職してしばらく働かない期間がある場合に分けて見ていきましょう。
退職・転職する時に必要な書類
退職時に会社から受け取るものは、次のようなものがあります。
①離職票1、2
②雇用保険被保険者証
③健康保険資格喪失証明書
④年金手帳(基礎年金番号通知書)
⑤源泉徴収票
「離職票1」は、雇用保険被保険者番号や入社、退社時期が記載されており、「離職票2」には、賃金支払いの状況や離職理由などが記載されています。これらは、退職して求職活動をする時にハローワークで手続きに必要な書類です。退職後10日ちょっとで手元に届きますが、届かない場合は、会社に確認してみましょう。
雇用保険に加入していたことを証明する「雇用保険被保険者証」もハローワークでの手続きに必要です。既に転職先が決まっている場合は転職先から提出を求められるため紛失しないようにしましょう。会社によっては就職時から個人が保管するようになっている場合もあります。
「健康保険資格喪失証明書」は、その名の通り、これまで加入していた健康保険の加入資格が無くなったことを証明するものです。次の健康保険の加入時に使用します。
「年金手帳」は、これまでの年金の加入状況が記されています。個人で保管している場合もありますが、会社が預かっている場合は退職時に返却してもらいます。令和4年4月以降に年金に加入する人は、年金手帳にかわって基礎年金番号通知書が発行されるようになりました。
「源泉徴収票」は、通常1月~12月までの給与や賞与などの支給総額や納めた所得税が記されますが、年の途中で退職した場合は、退職までに支払われた支給総額やそれまでに源泉徴収された所得税などの情報が記されています。
転職したら次の会社に提出するもの
転職先には、前の会社から受け取った書類のうち次のものを提出します。
②雇用保険被保険者証
③健康保険資格喪失証明書
④年金手帳(基礎年金番号通知書)
⑤源泉徴収票
新たな勤め先で、雇用保険に加入する働き方(週の労働時間が20時間以上など)をする場合は、前の会社から受け取った「雇用保険被保険者証」を提出します。
また、新たな勤め先で健康保険や年金に加入する働き方(週の労働時間が30時間以上など)の場合は、「健康保険資格喪失証明書」「年金手帳」も提出することになります。
「源泉徴収票」は、転職の時期によって提出が求められる場合があります。提出しない場合でも、確定申告で必要なため保管しておきましょう。
退職したら必要な手続きや書類
雇用保険(失業給付)の手続き
退職後、次の勤め先を探したい人は、ハローワークで求職の手続きをすると、雇用保険から失業給付を受けることができます。失業給付は、再就職する意思があり、いつでも就業できる状況である人が給付の対象のため、働く意思がない人、働きたくても病気やケガ、または、妊娠・出産ですぐに仕事ができない人は要件を満たしません。
失業給付の受給期間は、離職日の翌日から1年間に限られますが、病気やケガ、妊娠・出産の理由により働くことができない場合は、1年に働けない期間を加算し、受給期間を延長することが可能です。最大3年まで加算できます。
退職理由が倒産やリストラなど会社都合の場合は、手続きをして7日間の待期期間後すぐに給付が受けられ、病気やケガ、結婚、転職などの自己都合退職の場合はそれに加え2カ月の給付制限を経て給付されるようになります。
国民年金の手続き
退職後、しばらく働かない場合、または、転職する場合でも社会保険に加入しない雇用契約となる場合は、市区町村役場で国民年金の手続きが必要です。その際は、年金手帳(基礎年金番号通知書)と離職票などの退職日が分かるものが必要です。退職の翌日から14日以内に手続きをしましょう。
もし、結婚していて専業主婦(夫)になる場合は、配偶者の厚生年金に国民年金の第3号被保険者として届け出ると夫の厚生年金の負担が増えることなく国民年金に加入できます。
退職してすぐに転職し、そこで社会保険に加入できる場合は、国民年金ではなく厚生年金の被保険者となります。その場合も年金手帳が必要です。
健康保険or社会保険の任意継続の選択
退職後、しばらく働かない場合、または、転職する場合でも社会保険に加入しない働き方の場合は、次の3つの選択肢があります。
①国民健康保険に加入
②前職の任意継続被保険者になる
③配偶者などの扶養に入る
今後の収入見込みが130万円未満で、被保険者に生計を維持されている場合など一定の要件を満たすと配偶者などの扶養に入ることができます。この場合、扶養に入れても被保険者が支払う保険料はこれまでと変わりません。しかし、失業保険を受け取る場合は、収入要件を満たさないことがあるため確認が必要です。
③の「配偶者の扶養に入る」の選択が難しい場合は、①の「国民健康保険に加入する」か、②の「前職の任意継続被保険者になる」ことを検討します。
①は、自営業や、フリーター、無職の人など誰でも加入することができます。前年の収入を基に保険料が決まりますが、扶養という概念はなく、各々が被保険者となることから、これまで扶養に入れている家族がいる場合は、その分の保険料の負担も発生します。②は、前職で加入していた健康保険を任意継続するものです。これまでは労使折半で保険料を支払えば良かったのですが、任意継続の場合は、全額自己負担です。それぞれの保険料を比較して検討すると良いでしょう。
①国民健康保険に加入する場合は、退職から14日以内に市区町村役場に健康保険資格喪失証明書を持参します。②の任意継続をする場合は、退職から20日以内に職場、または、全国健康保険協会(協会けんぽ)に必要書類を提出します。勤め先の健康保険が、健康保険組合や共済組合の場合は職場に確認しながら速やかに手続きをしましょう。
住民税の納付
会社員は、給与や賞与から税金が天引きされますが、退職後は納税や申告の手続きを自分でしなければなりません。
特に住民税は、前年1月~12月の収入分を、当年6月~翌年5月の1年間で給与天引き(特別徴収)で納付します。では、退職後はどのようになるのでしょうか。
・退職時期が、1月~5月の場合
退職時に残りを一括で支払うことになり、最後の給与や退職金から天引きされます。
・対象時期が、6月~12月の場合
残りの住民税は、納付書が市区町村から届いたら自分で納めます(普通徴収)。職場に申し出ると、給与や退職金から一括で納めてもらえる場合もあります。
・すぐに転職する場合
転職先で給与から天引きをしてもらうことも可能です。その場合、前の会社に「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を作成してもらい、転職先に提出します。
所得税の年末調整と確定申告
会社員は、1月~12月の収入見込みを基に所得税が大まかに計算され、給与や賞与から天引きされます。そして、10月~11月頃の年末調整で正しく計算され、差額がある時には還付や追加徴収されるのが通常です。
しかし、退職すると年末調整ができないため確定申告で正しく納税額を申告する必要があります。ただ、転職の時期によっては他の選択肢もあるため以下で確認していきましょう。
・年内に転職しない場合
退職時に受け取った源泉徴収票を基に確定申告をします。申告時期は、翌年の2月16日~3月15日です。国税庁のwebサイト「確定申告作成コーナー」で、手順に沿って入力すると申告書が作成できるようになっています。そのままe-TAXで電子申告をすることも可能ですが、印刷して税務署に持参、または、郵送し提出することも可能です。
もちろん、税務署に申告書をもらいに行くことや、申告書をwebからダウンロードすることも可能です。作成に不安を感じる人は、税務署で記入の仕方などサポートしてもらうこともできます。
・年内に転職する場合
転職先の年末調整に間に合うなら、前の会社から受け取った源泉徴収票も合わせて提出すると良いでしょう。年末調整が既に終わっている場合は、自分で確定申告をします。
企業型確定拠出年金(企業DC)の手続き
前の会社に「企業型確定拠出年金(企業DC)」という退職金制度がある人もいるでしょう。その場合は、6カ月以内に移換手続きが必要です。
転職先が決まっている場合
新たな会社にも企業DCがあれば、そちらに移換します。手続きは転職先の総務など担当部署に確認しましょう。もし、転職先に企業DCがない場合は、個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)に移換することになりますので、iDeCoを取り扱っている金融機関を選び、申し込みましょう。
転職先が決まっていない場合
個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)に移換します。iDeCoは、移換した資金を運用するほか、月々積み立てるなど新たに資金を追加して老後資金の準備を進めることも可能です。
もし手続きをせずに6カ月が経過すると、国民年金基金連合会に自動的に移換され、保管されます。運用は全く行われない、保管料が毎月差し引かれる、など良いことはないため忘れずに手続きをしましょう。
お金の手続きでよくある間違いと対策
退職時は、多くの書類を受け取り期日までに手続きを進めなければなりません。「住民税をまとめて支払うなんて知らなかった」と焦らないで良いようにしたいものです。病気やケガで医療機関を受診する時に3割負担で治療を受けられるのは健康保険に加入しているから。年金は未納期間があるとその分将来の年金が目減りします。速やかに手続きをしましょう。
また、確定拠出年金は、退職してそのまま手続きをせず放置してしまっているという人が少なくありません。そうはいっても、退職直後は他の手続きにバタバタすると思います。手続きできる期間は6カ月と余裕があるため、退職後落ち着いたら必ず期限内に手続きを行いましょう。
最後に、失業給付です。ハローワークで手続きをして一定期間が経過しなければ給付がスタートしません。求職中の生活の支えになるものですので早めの手続きをお勧めします。
まとめ
今回は、退職時に必要なお金の手続きについてみてきました。内容をまとめます。
・退職・転職する時は、離職票、源泉徴収票、雇用保険被保険者証、健康保険資格喪失証明書、年金手帳、源泉徴収票などが必要
・雇用保険(失業給付)は、求職の意思がある場合に受け取れる
・公的年金は、転職しない場合や転職先の社会保険に加入できない場合、国民年金に加入する。または、配偶者が厚生年金被保険者の場合は、第3号被保険者として国民年金に加入する
・健康保険は、転職しない場合や転職先の社会保険に加入できない場合、扶養に入るか、国民健康保険、任意継続のいずれかを選択する
・住民税は、退職時に一括で払うか、送られてくる納付書で納める
・企業型確定拠出年金は移換手続きを忘れずに行う
退職時は、手続きだけではなく、仕事の引継ぎや取引先への挨拶、転職先の検討などあわただしく過ごすことと思います。事前に手続きを知っておくだけでも落ち着いて退職を迎えることができます。手続きのチェック表を作成するのも良いでしょう。
退職手続きについてのQ&A
Q.これまでの健康保険証はいつまで使えますか?
A.退職日まで使えます。
Q.退職した場合、いつまで厚生年金に加入したことになりますか?
A.月の途中で退職した場合は前月まで、月末に退職した場合は退職月まで加入したことになります。