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「2025年問題」とは?何が起こる?暮らしに与える影響は

そなえる 中村 賢司

「2025年問題」とは?何が起こる?暮らしに与える影響は

【画像出典元】「Olivier Le Moal/Shutterstock.com」

少子高齢化が進む日本では、医療・介護の需要急増や社会保障費の増大、さらには介護業界の人材不足などが、社会全体に大きな影響を及ぼすことが予想されます。特に団塊世代(1947年~1949年生まれ)が後期高齢者となる2025年は、大きな転換期を迎えることとなるでしょう。そこで今回は2025年問題が、私たちの暮らしや仕事にどのような影響を与えるのか、そしてその対策について解説します。

2025年問題とは

2025年問題とは、団塊世代が75歳以上となり後期高齢者人口がピークを迎えることで、医療・介護の需要が急増し社会保障費の負担が増大するという重大な社会問題のひとつです。

団塊世代は約677万人とされ、総人口の約5.3%の割合を占めます。2025年には国民5人に1人が後期高齢者となり、日本が超高齢社会に突入することになります。

この世代の大量退職と高齢化は、社会全体に広範な影響を及ぼします。特に、労働力人口の減少、社会保障費の増加、医療・介護体制の維持が困難になるなど、多岐にわたる問題が予測されています。

2025年問題で起こる社会への影響

下向きの矢印
【画像出典元】「stock.adobe.com/yalcinsonat」

2025年問題によって、社会全体で以下の様な影響が出てくると予想されています。

「社会保障費の負担増」

後期高齢者の増加に伴い、年金、医療、介護費などの社会保障費が大幅に増加します。財務省の試算によると、2024年度137.8兆円(予算ベース)だった社会保障費が2025年度には140兆円を超えると見込まれています。現行の社会保障制度を維持するためには、国民への税負担の増加や、社会保障給付の削減を検討する必要が生じる可能性もあります。

「医療・介護体制維持の困難化」

高齢者の増加により医療・介護サービスの需要が急増することで、医療従事者や介護職員が不足することが予想されます。その結果、医療・介護サービスの質低下や待機時間の増加も懸念されます。さらに病院や介護施設の不足も深刻化し、適切な医療や介護を受けられない人が増える可能性もあります。

「後継者不足による経済縮小」

高齢化による労働力人口の減少は、人材不足を引き起こします。企業の生産性や経済活動が停滞するだけでなく、後継者不足や技術継承が難しくなり、特に中小企業では事業継続が困難になる可能性があります。その結果、国内市場の縮小や経済成長の鈍化が予測されます

2025年問題で起こる各業界への影響

2025年問題では、労働力人口が減少するため、今まで以上に様々な業界で人材不足が深刻化するでしょう。特に医療・介護、IT、物流・運送、建設など、人手不足が顕著な業界では人材獲得競争が激化し、人材の確保がますます困難になることが予想されます。それぞれの業界で懸念される影響について紹介します。

医療・介護・看護業界

高齢者の増加に伴い、医療・介護・看護の需要は爆発的に増加します。しかし、人材不足や待遇面の問題などから、医療従事者や介護職員の確保は困難を極めています。医療現場では、医師や看護師の負担が増加し、医療サービスの質低下や医療費の増加につながる可能性も懸念されています。

IT業界

IT業界でも人材不足が深刻化しており、高齢者向けのサービス開発や運用に精通した人材の確保が課題となっています。DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が求められる中で、ITスキルなどの適切な技術を持つ人材の確保が難しくなります。企業のDX化が遅れることに起因する経済損失も懸念されています。

物流・運送業界

物流・運送業界では、ドライバー不足に加え倉庫作業員などの人材不足が深刻化しています。高齢化が進み、若い世代のドライバー確保が難しい状況です。また、労働時間規制の強化などによって、配送業務の効率化も求められています。

建設業界

建設業界では、特に熟練技術者の減少が課題です。熟練工の減少で若い世代の技術者育成が遅れているため、建設現場の労働力不足、建設工事の遅れなども懸念されています。このように若手人材の確保と技術継承問題に加え、建設資材の高騰や安全対策の強化など様々な課題を抱えています。また中小企業では事業承継問題もあり事業継続が困難になるという可能性もあるでしょう。

併せて知っておきたい「2040年問題」

2040年問題
【画像出典元】「stock.adobe.com/SK」

2025年問題に続いて、2040年には団塊ジュニア世代(1971年~1974年生まれ)が65歳以上になるため、再び高齢者人口が急増することが予想されています。日本の総人口に占める高齢者の割合が過去最大の35%に達してピークを迎える見込みです。

この2040年問題は、社会保障費の負担増、医療・介護体制維持の困難化という問題ばかりではなく、インフラや公共施設の老朽化なども含まれています。

特に深刻なのが労働力不足の問題で、現役人口(20~64歳)が2025年~2040年までの15年間で約1000万人超減少するといわれています。これにより超高齢社会による労働力不足に加え人口急減などの問題がさらに深刻化するでしょう。

2025年問題だけでなくこの2040年問題へ向けて、社会保障制度の見直しや人材確保の多様化などを今から考えておく必要があるといえます。

2025年問題に対する国の対策は

2025年問題への対策として、政府は医療費や介護費の負担増加に対応するため、社会保障制度の見直しを検討しています。特に、窓口負担割合や高額療養費の限度額、介護サービス利用料の変更などを含めた制度改革が求められており、社会保障費の増加を抑えるための税制改革や財源再配分も検討しています。

また、介護人材確保のため職員の待遇改善や養成プログラムの強化、外国人介護人材の受け入れも検討しています。介護人材の確保は、医療・介護体制維持のためには何らかの対策は不可欠です。

これらを踏まえ政府は、令和元年9月に全世代型社会保障検討会議を設置し、人生100年時代の到来を見据えながら、お年寄りだけではなく、子供たち、子育て世代、さらには現役世代まで広く安心を支えていくため、年金、労働、医療、介護、少子化対策など、社会保障全般にわたる持続可能な改革を検討しています。

この「全世代型社会保障改革」により、現役世代と高齢者双方のニーズを考慮した社会保障制度の再構築を目指しています。特に、若年層の就業支援や教育支援が強化されることで、将来的に社会保障費の増加に備えることが期待されています。

まとめ

2025年問題は、私たちの暮らしや仕事に大きな影響を与える重要な問題です。これらの問題に対処するためには、政府だけでなく、企業や個人がそれぞれ積極的に取り組む必要があるでしょう。

企業は従業員の働き方を改革し、高齢者も活躍できる職場環境を整備する必要があります。個人単位では、健康寿命を延ばすための生活習慣の改善や地域社会への貢献など、自分自身でできることを積極的に行う必要があります。

2025年問題は、決して他人事ではありません。私たち一人ひとりが問題意識を持ち、積極的に行動することで、より良い未来を創造することができるでしょう。