GDPはもう古い!話題のファイナンシャル・ウェルビーイングとは?

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監修・ライター
経済成長の指標として長年使われてきたGDPですが、GDPの数値がどれだけ上がっても、すべての人が経済的な安心を得ることはできません。そのため金融界では、GDPに代わる新たな視点として、「ファイナンシャル・ウェルビーイング」という概念が注目され始めています。
そこで本記事では、その定義や重要性、世界の動向などについて解説します。
なぜGDPだけでは不十分なのか?

GDPは経済成長の指標として重要ですが、GDPがどれだけ増えても、すべての人がその豊かさを実感できるわけではありません。ここでは、GDPの限界と今金融界で求められている新たな視点について解説します。
GDPの限界とは?
GDP(Gross Domestic Product)とは国全体の経済活動を示す指標ですが、個人の経済的安心感や生活の質を直接反映するものではありません。例えば、経済成長が進んでも所得格差が拡大すれば、多くの人が十分な経済的余裕を感じられない可能性があります。
また、GDPは消費や生産の増加を重視するため、持続可能性や環境負荷といった要素を考慮しにくいという課題もあります。こうした理由から、金融業界では単なる数値の成長だけでなく、国民一人ひとりの経済的幸福度を考える新たな視点が求められていました。
金融界が求める新たな視点
GDPが成長しても、持続可能な社会や個人の幸福度が向上しなければ意味がありません。そこで近年、金融界では経済的余裕や長期的な安定性を重視する動きが広がっています。
例えば、欧米では近年ESG投資(環境・社会・ガバナンスに配慮した投資)が注目されており、短期的な利益よりも長期的な持続可能性が重視される傾向にあります。また、金融教育の充実や資産運用の多様化を通じて、個人がより安定した経済状況を確保できるような取り組みも進められています。昨今のコンプライアンスを重視した企業経営も、こうした流れの一環です。
こうしたことから、金融業界では持続可能な社会や個人の幸福度の向上を優先し、経済的余裕や長期的な安定性を重視する動きが広がっているのです。
ファイナンシャル・ウェルビーイングとは?

ファイナンシャル・ウェルビーイングとは、単にお金を持っている状態を表す言葉ではありません。では、その定義はどのようなものでしょうか?
ファイナンシャル・ウェルビーイングの定義
ファイナンシャル・ウェルビーイングとは、単にお金をたくさん持っている状態を表す言葉ではなく、安心感を持ちながら将来に向けて安定した経済状況を維持することを意味します。これは、単に金銭的な話ではなく、身体的・精神的な健康と密接に関連しており、生活の質にも大きく影響を与えるものと考えられています。
従って、ファイナンシャル・ウェルビーイングを実現するために経済的余裕は必要条件ではありますが、それだけでは十分条件とはなりません。経済的余裕とともに幸福度を高めることが、ファイナンシャル・ウェルビーイングの実現には必要となります。
幸福度と経済的余裕の関係
経済的余裕があると、将来の金銭的不安が減るため、日々のストレスが軽減されます。しかし、収入が多いだけでは、必ずしも幸福度が向上するとは限りません。
実際に、収入がどれだけ高くても貯蓄や支出管理が不十分であれば、経済的な不安を抱え続けることになります。また、金融リテラシーの低さから、「貯金が増えれば増えるほど不安も増える」という人も珍しくありません。
こうしたことから、幸福度を上げるためには、計画的な資産形成や適切な金融リテラシーが求められます。例えば、適切な金融の知識を身に付け、NISAやiDeCoといった長期投資の仕組みを活用すれば、経済的余裕が生まれ、将来の不安が減り、日々のストレスが軽減されるため、幸福度を上げることができます。
なぜファイナンシャル・ウェルビーイングが重要なのか?

個人がファイナンシャル・ウェルビーイングを実現すると、消費行動が安定します。その結果、社会全体の経済に安定的な好影響がもたらされます。この持続的な好循環を実現するために、私たち一人ひとりのファイナンシャル・ウェルビーイングが重要なのです。
海外では、すでにファイナンシャル・ウェルビーイングを高める取り組みが進められています。欧米では、ファイナンシャル・ウェルビーイングを支援するための制度や金融教育の充実が進んでいます。アメリカでは金融教育を義務化し、個人の資産形成をサポートする政策が導入されています。日本でも、NISAやiDeCoの普及、企業の福利厚生としての金融教育の強化が進められています。
今後は、金融機関が提供するサービスの充実や個人の金融リテラシー向上が、日本人のファイナンシャル・ウェルビーイングを向上させる重要な鍵となるでしょう。
まとめ
GDPの成長だけでは、すべての人が経済的に安定した生活を送ることはできません。経済的安定によって幸福度を高めるためには、私たち一人ひとりがファイナンシャル・ウェルビーイングを取り入れることが大切です。
例えば、企業が従業員の経済的安定を支援すれば、労働生産性の向上や企業の持続可能性にも繋がります。こうした流れが社会全体で進めば、「競争」ではなく「協調」や「調和」を重視する社会が生まれます。
私たちの社会はまだまだ未成熟ではありますが、こうした世界に向かって、少しずつ進んでいるのです。