シングルマザーが直面したお金とがん保険加入の悩みをFPが診断!

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目次
FPオフィス「フォルテシモ」へ依頼されたお客さまの家計簿を、mymoで診断する【うちの家計簿】。今回はがん保険の加入を検討している37歳シングルマザーKさん、子どもと2人暮らしの家計簿です。
37歳シングルマザーKさんの相談内容
離婚して2年経ちました。現在は実家で暮らしており、その間にできるだけお金を貯めようと考えています。ただし、貯金が苦手なので、お金を引き出せないようiDeCoを利用して毎月お金を貯めています。
最近、友人ががんになり、いろいろお金がかかると聞きました。現在、医療保険には加入しており、女性疾病特約を付帯していますが、追加でがん保険に加入することを検討しています。選び方などポイントがあれば教えてください。
Kさんの家計簿は…?
手取り額は22万5300円です。iDeCo2万円と貯金1万円を合わせて3万円、手取りと児童手当1万円を合わせた収入合計の約12.7%を貯蓄しています。ただし、毎月の貯金額は一定しておらず、現在の貯金残高は35万円です。
がんは2人に1人がかかる時代

国立がん研究センターの2020年のデータによると、日本人が生涯のうちにがんと診断される確率は以下のようになっています。
- 男性:62.1%(約2人に1人)
- 女性:48.9%(約2人に1人)
つまり、現在では日本人のおよそ2人に1人が生涯のうちに何らかのがんにかかると考えられています。
がん罹患数の順位(2020年)

がん死亡数の順位(2023年)

日本人ががんで死亡する確率は、2023年のデータによると男性が約24.7%(4人に1人)、女性が約17.2%(6人に1人)となっています。
また、死亡原因別に見ると、がんは日本人の死因の約24.6%を占めており、最も多い死亡原因となっています。
特に、男性では肺がん、大腸がん、胃がん、膵臓がん、肝臓がんの順に多く、女性では大腸がん、肺がん、膵臓がん、乳がん、胃がんの順に多いとされています。
乳がんだけじゃない!女性が注意すべき他のがんとは?
FPへのご相談時に乳がん検診と子宮がん検診は受けたことがあるけれど、それ以外のがん検診は受けたことがない、とお話される女性の方は多くいらっしゃいます。しかし、統計データからも分かるように、女性が罹患、死亡する原因のがんは「乳がん」「子宮がん」「卵巣がん」だけではないことも知っておくことが大切です。
がん治療に必要なお金と、公的制度で受けられるもの
がんの治療には、検査費用や入院、通院時に様々な費用が必要になります。それらの費用は、公的医療保険で負担を一部軽くできる場合があります。公的保険制度の対象になる場合には、どのような制度が利用できるのか知っておくことが大切です。
公的医療保険の対象となる費用として
・診察費
・検査費
・入院費
・手術、放射線治療、薬物療法などの費用
・介護サービス費
などがあります。
それ以外にかかる自己負担となる費用として
・通院・入院時の交通費
・公的医療保険の対象外の治療(開発中の試験的な治療法や薬、医療機器を使った治療など)の費用
・差額ベッド代
・文書料(診断書など)
・食費・日用品代
・医療用ウィッグ
・家族の交通費・宿泊費
・お見舞いのお返し代
などがあります。
公的医療保険の種類の確認を:傷病手当金は利用できる?

自分が加入している公的医療保険の種類を確認することで公的保険の保障内容を確認することができます。Kさんの加入されている公的医療保険は「組合健保」です。組合健保に加入されている方は「傷病手当金」の制度を利用できます。
傷病手当金は、病気やケガで働けなくなった時に、収入の一部を補償してくれる公的保険の制度です。会社員や公務員が加入する健康保険(協会けんぽ・組合健保・共済組合など)に加入している人が対象となります。なお国民健康保険は自営業者やフリーランスが加入する保険ですが、傷病手当金の制度はありません。
(傷病手当金の概要)
支給対象:業務外の病気やケガで仕事を休んだ場合
支給額:給与の約3分の2(標準報酬日額の2/3)
支給期間:通算1年6カ月
支給要件:
・病気やケガの療養のため連続3日以上仕事を休んでいること
・4日目以降も働けない状態が続いていること
・原則として給与の支払いがないこと(傷病手当金の額より少ない給与が支払われている時には差額を支給)
Kさんの標準報酬月額は30万円です(Kさんの「ねんきん定期便」にて確認)。
Kさんががんで仕事を休まなければいけなくなった場合、傷病手当金として1カ月あたり約20万円(30万円×2/3)が支給されます。
がんで入院、通院をしておらず自宅療養の状態が続いている場合にも、要件を満たせば傷病手当金が受給できます。そのため、自分の標準報酬月額を確認し、それに基づく傷病手当金の支給額を確認しておくことが大切です。
女性疾病特約の保障範囲を確認しよう
女性疾病特約は各保険会社で保障の内容が異なりますが、一般的には乳がん・子宮がん・子宮筋腫・子宮内膜症など女性特有の病気に関する入院や手術を対象とするものが多いです。
一方で、がんの入院を伴わない通院のみの治療や、在宅でがんの緩和ケアを受ける場合の費用は女性疾病特約では保障されない場合がありますので、現在ご加入中の保障を確認しておきましょう。
がん保険の選び方、保障内容の確認ポイント
実際にがんになった際にどのような場合に保障されるのか、以下の内容を確認するようにしましょう。どんな時に支払対象となるのかだけでなく、支払対象外となるのはどのような治療かも確認しておくと安心です。
どんな保障が含まれているか
診断給付金、入院給付金、通院給付金など、どの保障が含まれているかをチェックしましょう。
※診断給付金の支払内容(初回の支払と2回目以降の支払要件)
※通院給付金についてはどのような通院が対象となるか詳細を確認
※上皮内がんが保障の対象か、悪性新生物と給付金額に差があるかどうか確認
※診断給付金の支払回数(初回のみか、複数回受け取れる場合は何回受け取れるか)
※治療給付金の支払内容(毎年、毎月の治療ごとか)
※抗がん剤治療、ホルモン剤治療が給付対象となるか
※緩和治療はどのような場合に保障されるか
先進医療特約の給付方法
先進医療を受ける際に給付金がどのような流れで支払われるか、直接医療機関に支払う仕組みがあるかを確認しましょう。
保険料の変動に注意
更新型の場合、年齢とともに保険料が上がります。将来支払い可能かチェックしましょう。
また、がん罹患時に保険料が免除になるか、保険料払込免除の内容にも差があるので詳細をチェック。
自由診療の保障の有無
自由診療は、公的医療保険が適用されない治療のことで、未承認薬や適応外薬などが含まれます。これらの治療は全額自己負担となり、高額療養費制度の対象とならず高額な費用になることもあります。がん保険でカバーできるかどうか確認をしましょう。
自由診療の保障も保険会社によって保障の内容が異なります。保障内容を十分理解し、検討することが大切です。
家計管理についてのアドバイス~貯金が少ないことのリスク~
Kさんの現在の貯金は35万円です。車を1台所有し、購入から10年近くなるため、数年後に購入を検討しているとのことです。しかし、このまま手元の貯金が増えない状況が続くと車の購入など大きな出費の際に資金不足に陥ることがあります。
教育費は学資保険、老後資金はiDeCoでお金を積み立てていますが、iDeCoは原則として60歳未満では引き出すことができません。
もし失業してしまった場合などは、手元に余裕資金がなければ、急な出費や車検費用など特別な出費に対応できずお金を借りなければいけなくなることもあります。先に使って残りを貯金するのではなく、先に定額を貯金して残りのお金で生活することを検討してみてください。
実家で暮らしている間にお金を貯めたいとお話されているように、今の間にiDeCoの積立額も含めて、家を借りられる程度の資金を目標に貯金をご検討ください。
アドバイスを受けたKさん談
がん保険もいろんな保障があるのですね。とりあえず、がん保険に加入すれば大丈夫かな、となんとなく考えていました。傷病手当金の保障は知りませんでした。びっくりです!
私が専業主婦だったら傷病手当金はなかったのですね。健康保険の内容を知ることができて良かったです。自分の公的保障を踏まえて、がん保険を検討しようと思います。
iDeCoでお金を貯めていけばなんとかなるかなと思っていましたが、車の購入費用のことは忘れていました。貯めたいと言いながら、ちゃんと考えていなかったなぁと反省しています。離婚前よりは経済的に楽になったので月々の貯金額を増やすことを検討します。
家計簿診断を終えて
傷病手当金、高額療養費制度など公的保険の内容は金融庁の公的保険ポータルサイトで確認できます。民間の保険を検討する際はあわせて確認することをおすすめします。
金融庁:公的保険ポータル