バイデン大統領の就任は日本の「若年層」にどう影響するか
監修・ライター
バイデン大統領就任から1カ月近くが経過する。さっそく、バイデン氏はトランプ前大統領が表明したWHO(世界保健機関)脱退を撤回し、新型コロナウイルス対策に200兆円を投じると表明するなど共和党政権時代とは反対方向に舵を切り始めている。
今のところ、政権移行で日本に大きな影響が出ると報じられているわけではない。だが常に視野を広く持ち、世界情勢を「自分ごと化」するのは大事なことだ。新政権の動向が日本の若年層に影響を及ぼすとすれば、どの分野か。報道をベースに予測していく。
GAFA規制は加速しGoogleやInstagramの利便性に影響?
トランプ氏が大統領だった時代、いわゆるGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)を下院の小委員会が1年以上調査した。反トラスト法(日本でいう独占禁止法)に基づいたもので、それぞれが検索、小売り、SNS、決済など各分野で消費者の選択権を奪い、競合各社を排除していると問題視。調査報告書で4社を「解体すべき」とした。
バイデン氏が大統領に就任しても、GAFAへの追及姿勢は変わらないとみられる。なぜなら「下院の小委員会」はもともと下院で多数派だった民主党が主導したものだからだ。
今後の規制が予想されるものはおおむね個人情報の取り扱いが絡むもので、日本でも規制に乗り出す動きは過去にあった。日本、アメリカ政府の動向によってGAFAの在り方は変わっていく。容易に個人情報を吸い取られなくなる一方で、サービスの利便性が下がる懸念はあるだろう。これをメリットと感じるか、デメリットと感じるかはユーザー次第だ。
なお、若者はFacebookをさほど活用していないだろうが、傘下のInstagramのサービスに影響が及ぶ可能性はゼロでない。
SNSはカルト化の動きが加速
私たちが活発に利用するTwitterなどSNSはどうか。トランプ支持者が米議事堂乱入事件を起こしたのは、Twitter、Facebookや右派が集うSNS「Parler」内で煽動があったからとされる。事件をきっかけにTwitter、Facebookの右派アカウントが停止に追い込まれ、GoogleやApple、Webサービスを持つAmazonによってParlerも締め出されたが、Telegramにトランプ支持者が流れ込んでいるともされる。いずれにせよ右派と取り締まる側との間でいたちごっこは続くであろう。
日本に目を移せば今年1月に入り、音声をメインとしたSNS「Clubhouse」がアメリカから上陸して流行を見せた。ただ1月時点で米国内ではClubhouseにおいても「ヘイト」が絶えないとの指摘はあり、一部SNSには過激派が残ることだろう。SNSを経由した暴力的なやりとりに心を痛める若者もいることだろう。しかし仮にTwitter以外のどのサービスに移行したとしても、安住の地が見つかるのはまだ先になりそうだ。
対中政策は変わらず強硬ー中国製品が買えなくなる日もくる?
最も重要なのは対中政策かもしれない。今のところ、バイデン政権に交代しても対中政策は厳しいままだ。
対中政策が激化すればするほど、日本の立ち位置が問われる。顕著な例は携帯電話だ。トランプ時代に日本はファーウェイなど中国製品の不買を促す「クリーンネットワーク」への参加を要請されたが見送った。バイデン政権になってもクリーンネットワークは継続されるとみられている。さっそく尖閣諸島を巡り中国と衝突する可能性があるとも報じられるなど、バイデン大統領の対中強硬路線は色濃くなってきた。
ここ数年の中国の経済成長もあって日本はこのところ中国への依存度を高めており、米国とバランスをとっているとされる。現状、日本も米国とは別の中国対策をとっている。現在、すでにファーウェイのスマートフォンがGoogle系サービスを利用できないなど具体的な弊害が生じているが、仮に米中関係が過度に緊迫すれば、さらに中国系スマホやサービスが利用しづらくなる事態もあり得るとみる。
生活に直接影響はないだろうが…
大統領がトランプからバイデンに代わっても、おそらくわれわれの生活は大きく変化はしないだろう。ただ日米の政策が変化するにつれ、気が付けば自分が消費者として損をするような事態は避けたいものだ。常に最新動向に目を光らせておこう。