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退職金はもう期待できない?企業規模や業種別、転職で変わる退職金平均を確認して備えを

そなえる 中村 賢司

退職金はもう期待できない?企業規模や業種別、転職で変わる退職金平均を確認して備えを

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まとまった額がもらえるイメージの退職金。しかし実際にはどのくらいもらえるものでしょうか?

退職金の額は、一般的に勤続年数や退職時の基本給、退職理由(定年退職、自己都合)などで変わります。また業種や企業規模、学歴によってもその額は変わります。ここでは退職金がどれくらいもらえるのか、企業規模と勤続年数別で平均値を見ていきます。

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企業規模ごとの勤続年数別、学歴別の退職金平均はいくら?

まずは大企業の勤続年数別に退職理由の退職金の違いについて、大卒と高卒の平均値を見ていきましょう。

大企業、大学卒、総合職相当の場合

※出典:厚生労働省、令和元年賃金事情等総合調査
https://www.mhlw.go.jp/churoi/chousei/chingin/19/index.html

大企業、高校卒、一般職相当の場合


※出典:同上

勤続年数が短いと金額が少ない上、自己都合であればさらにその半分しかもらえません。また、一般的な定年年齢の60歳まで勤めた場合、大卒で2686万円、高卒で1836万円となっており、学歴によりその差はおよそ1.5倍もあることが分かります。

続いて中小企業の場合を見ていきます。

中小企業、大学卒、モデル退職金

※出典:東京都産業労働局、中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)
https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/toukei/koyou/chingin/r2/

中小企業、高校卒、モデル退職金

※出典:同上

定年退職の60歳まで勤めた場合、大卒で1118万円、高卒で1031万円の退職金をもらうことができますが、大企業と比べるとおよそ半分の額となっています。またどの勤続年数を見ても、大企業とは倍の差がついています。一方、会社都合と自己都合の差は大企業ほど差がついていないことも分かります。

勤続年数が長いほど金額が増え、自己都合より会社都合、特に定年退職まで勤務した方が金額も多いことが分かります。

次に業種別に見た退職金の平均値です。

大企業、大学卒、総合職相当の場合

 

サービス業、電力・ガス、飲食娯楽業など、公表されていない業種もあり、全業種を網羅していませんが、業種により定年退職金がおよそ3000万円も支給される業種もあれば、その半分の1500万円という業種もあり、どの業界に何年勤めるかでその差は大きくなることが分かります。

※出典:厚生労働省、令和元年賃金事情等総合調査

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お金が少なくてがっかりする男性
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ではこの退職金はどのように計算されるのでしょうか。退職金の計算方法には数種類の計算方法がありますが、ここではその代表的なものを3種類紹介します。

ポイント制

入社して退職するまでの間、人事評価や役職についた年数等により毎年ポイントを付与され、そのポイントに応じて求める方法です。
(計算方法)退職時のポイント × 支給率(※)
※一般的に支給率は、勤続年数と退職理由によって決まります。

基本給連動型

退職する時点の基本給と勤続年数、そして退職理由(会社都合、自己都合)により求める方法です。
(計算方法)退職する時点の基本給 × 支給率(※)
※一般的に支給率は、勤続年数と退職理由によって決まります。

定額制

勤続年数と退職時の役職により予め一覧表が準備されていて、その一覧表に基づき求める方法です。
(計算方法)勤続年数と退職時の役職による(※)
※就業規則の退職金規定に掲載されている会社が多い

自分の会社がどの計算方法を用いているのかは、直接人事担当者へ聞くか、就業規則などを見て確認してください。

転職した場合など勤続年数が短い場合の退職金相場は?

転職した場合などの退職金は、勤続年数が短いだけでなく自己都合扱いになるので、一般的に退職金は少なくなる傾向にあります。(金額の平均は、前述した退職金平均額の勤続年数と自己都合の欄をご参照ください。)

また、多くの会社が入社後1年や3年といった期間を区切り、その期間に満たない退職の場合には退職金を支給しないと定めている会社もあります。

もしあなたが転職を考えている場合は、就業規則の退職金規定をよく確認しておくようにしましょう。

退職金に頼らないマネープランの立て方

マネープランニング
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厚生労働省の統計によると、退職給付制度がある企業は80.5%です。企業規模別に見ると、1000人以上規模で92.3%、300~999人規模で91.8%、100~299人規模で84.9%、30~99人規模で77.6%となっています。(出典:厚生労働省、平成30年就労条件総合調査結果の概況より)

この統計から、大企業ではおよそ7%、中堅企業では8~15%、中小企業ではおよそ22%の企業で退職金制度がありません。企業規模が小さいほど退職金制度は整備されておらず、退職金制度があっても前述した平均値のデータのように、金額は大企業に比べるとあまり期待できるものではありません。

もしあなたの勤めている企業に退職金規定がない場合は、転職や定年退職時へ向け自助努力で退職金に替わる蓄えをする必要があります。

退職金に変わる積み立てとして、代表的なものに個人型確定拠出年金(iDeCo)があります。この制度は、老後へ向けての資産形成が目的ですが、積み立てている間は所得控除を受けることができるのでとても有利な制度です。さらに転職や独立をしても継続することができるというメリットもあります。

退職金に頼らないマネープランを立てる手段としてはとても有効的な制度なので、ぜひ活用してください。

老後資金は退職金に頼らずに

今まで見てきたように、企業規模や勤続年数により退職金が大きく変わります。また、退職金の支給額は年々減少傾向にあるため、老後資金の不足分を退職金で補うことはあまり期待できません。

就職や転職時には、会社の退職金制度がどのようになっているのか福利厚生制度までしっかり確認しておく必要があります。終身雇用という概念が薄れつつある昨今、退職金に頼るようなマネープランは立てず、自助努力で老後資金を準備することを心がけましょう。

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