20代で医療保険は必要か、ネット保険は安いけどデメリットも?
目次
20代は学生から社会人になり、中には結婚する人も出てくるなど生活環境が大きく変化する世代です。そんな中、保険に入るべきか迷う人もいるでしょう。今回は、ネット保険のメリット・デメリットや対面での保険商品との違い、医療保険の必要性、契約前に知っておきたい公的医療保険制度についてみていきましょう。
20代で医療保険に入っている人の割合は
生命保険文化センターの令和元年度「生活保障に関する調査 第2章内 医療保障に対する私的準備状況(複数回答)」によると、20代でケガや病気への備えとして医療保険を活用している人の割合は男性46.8%、女性52.8%。全年齢では男性70.8%、女性74.9%ですので平均を大きく下回っていますが、30代になると男性74.3%、女性78.1%といずれも平均を上回る割合になっています。このことから、ちょうど20代から30代にかけてが医療保険を検討する世代ととらえることができそうです。
ネット保険のメリットとは
保険に加入するときの選択肢として、一般的な対面で契約する保険以外に、ネット保険にするべきか迷う人もいると思います。まずは、ネット保険のメリット・デメリットからみていくことにしましょう。
保険料が割安
ネット保険のメリットは、何といっても保険料が安いということでしょう。割安な理由は、コストが抑えられるから。ではなぜ抑えられるのでしょうか。
保険料は、次の3つで構成されています。
・予定死亡率・・人が死亡する(病気になる)確率
・予定利率・・預かった保険料の見込みの運用利率
・予定事業比率・・店舗費用や人件費などのコスト
このうち「予定事業費率」は、対面型保険に比べネット保険の方が抑えられているのが特徴です。
なぜならネット保険は、実店舗を持たないため家賃や店舗改装費用等がかかりません。また、店舗ごとにスタッフを配置する必要がなく、コールセンターやメール、チャットで全国対応できるため少ない人数で済むわけです。
また、ネットで保険を申し込む場合は、契約者が自分でWEBに入力するため、対面のように申込書類を見ながらデータ入力をする手間が省け、事務作業が効率化できることもコスト削減に繋がります。
複雑な保障がなく、シンプルで分かりやすい
ネット保険は、比較的シンプルで分かりやすいこともメリットといえるでしょう。
ネット上で保障を選んでいくため分かりやすく手続きができるように複雑な保障は除外されています。保障の王道のようなものが準備されているので選択肢が少なく、選びやすくなっています。
24時間いつでも手続きできる
忙しくて店舗に行けない、担当者と時間調整が難しいという人でも、24時間いつでも保険の手続きができます。
対面の煩わしさがない
店舗で相談をすると、予定していた保険以外にも複数の提案を受けることがあります。保険のプロから話が聞けるのは店舗のメリットですが、迷って決められなくなるということも。そういう意味で、自分で完結できるネット保険は魅力ともいえます。
ネット保険のデメリットとは
自分で保険商品を理解し、保障内容を全て決めなければならない
ネット保険に加入するには、
保険商品の理解・選定→保障額を決定→契約
を全て自分で行わなければなりません。対面の場合は、保険商品の説明を受け、分からないことはその場で質問をすることができます。保障額を決める際も社会保障制度を踏まえたアドバイスなどプロの知識を頼りにできますが、ネット保険ではそれができません。
結果として、契約をしたものの自分が思っていた保障ではなかったり、保障の過不足があったりしても気付かないことが考えられます。
貯蓄タイプや投資タイプの保険に加入できない
ネット保険はシンプルで分かりやすいが基本のため商品が限定的です。より自分に合った保障や特約を吟味したい人にはデメリットといえるでしょう。また、終身の死亡保険や学資保険、養老保険、個人年金保険など貯蓄タイプの保険や、外貨建て保険や変額保険のようなリスクを取った投資タイプの保険は選べないようになっています。
保険見直しのタイミングも自分で決める
ネットで加入する保険は対面のように担当が付くわけではないため、たとえば赤ちゃんが生まれた、家を買った、子供が成長し自立した、など人生の節目ごとに、自分で保障の過不足を見直す必要があります。
また、医療保険は、医療の進歩とともに保障の内容が日々進化しています。昔からある保障のままでは、折角加入していてもいざという時に機能しないということも起こり得るので気を付けておきたいところです。
医療保険に入る前に、公的医療保険制度のサポート範囲を知ろう
医療保険は、病気やケガのリスクに備えるものですが「リスクに備える=保険」と直ぐに加入を検討するのはお勧めしません。まずは、公的な医療保障を知ることから始めましょう。
健康保険
私たちは病院で必ず提示する健康保険証のおかげで、3割負担(療養の給付)で治療が受けられますが、それ以外にも健康保険は多くの保障が受けられるようになっています。今回はそのうち「高額療養費」「傷病手当金」を紹介します。
高額療養費
ひと月にかかった医療費が一定額を超える場合に、超えた分を給付してくれるのが高額療養費です。所得によって4つに区分され、所得が多い人ほど負担上限が高くなる仕組みになっています。
例えば、100万円の治療費が掛かった場合、3割負担だと30万円の負担となりますが、高額療養費の上限額を超えることになるため差額は健康保険が負担してくれます。
一般的な所得(区分ウ)のケースで計算すると以下のようになります。
8万100円+(総医療費100万円-26万7000円)×1%=8万7430円
つまり、8万7430円が負担上限となり、差額は高額療養費として給付されます。
高額療養費は、1日~月末までのひと月単位で計算しますので、もし急を要さないのなら月の前半に入院し、月をまたがないようにすると負担が抑えられます。
また、1年間のうち高額療養費の利用が4回目からの負担上限は4万4400円で良いということにもなっています。長く高額な治療費が続く場合はより安心です。
注意点は、健康保険の対象となる治療のみが対象ということです。たとえば、入院で個室を利用する場合の差額ベッド代や食事代は全額自己負担となります。また、この負担上限は、医療機関ごとに計算します。同じ医療機関でも外来と入院は別計算となるなど合算できる範囲が決まっています。
国民健康保険や全国健康保険協会(協会けんぽ)の負担上限は表の通りですが、大企業を中心とした健康保険組合や、国民健康保険組合などは、負担上限が低くなっていることもあります。自分の加入している健康保険はどうなのか確認してみると良いでしょう。
傷病手当
病気やケガでしばらく仕事を休まなければならなくなった場合の保障です。有休を利用して会社を休める間は良いですが、長くなるとそうはいきません。仕事ができず無収入になると生活が出来なくなります。
そんな時に、この傷病手当金が給与の3分の2を手当してくれます。最長1年半支給されますのでいざというときにとても助かります。正式な計算式は以下です。
直近12カ月間の標準報酬月額を平均した額÷30日×3分の2
傷病手当金は、入院が必須ではなく、自宅療養の場合も対象です。連続して3日以上欠勤をした場合に4日目から支給されます。
医療費控除等
税金面での優遇もあります。病気などで医療費の負担が一定額を超えた場合は医療費控除という所得控除を受けられます。一定額というのは、所得200万円以上なら「10万円」、所得200万円未満なら「所得×5%」です。
なお、もし民間の医療保険に加入して保険金を受け取ってた場合や、高額療養費を受けた場合等は支払った医療費から差し引く必要があります。
医療費控除額=(医療費控除の対象になる医療費-保険金等で補てんされた金額)-10万円
※総所得200万円未満の人は総所得金額等×5%
ここでいう医療費には、病院で治療したもの以外、たとえば薬局で購入したかぜ薬や胃腸薬、病院へ通うための公共交通機関の運賃なども含まれます。
一方、美容のための歯科矯正や整形、健康増進・予防のための栄養ドリンクやサプリメント、車で通院した場合の駐車場代などは対象外です。
実際に医療費を負担した人が申告できるため、家族分を合算して、世帯主の確定申告で手続きすることもできます。
結局、20代は医療保険に入ったほうがよいのか
入らなくてもいいタイプ
ひと言でいうと、健康に自信があり、もし病気やケガをしても金銭面で困らないという人は加入する必要はありません。つまり、病気やケガで入院や手術をしても、高額療養費や傷病手当金の公的保障を受けながら残りの自己負担分は貯蓄でまかなえるため、大きなダメージはなさそうという場合です。わざわざ保険料を支払って、万一に備える必要性は薄いと考えてよいでしょう。
ただ、がんの重粒子線治療や陽子線治療のような健康保険の対象外となる先進医療を受ける場合などでは、数百万の負担になることもあります。リスクを言えばキリがないですが、そんなことも考えておくとより安心です。
入った方がいいタイプ
入った方が良いタイプは、上記の反対です。健康に不安を感じる人、もし病気やケガをすると金銭面で困る可能性がある人は加入した方が良いということになります。
医療保険に加入することで、高額療養費の自己負担分の補てんや、健康保険の対象外となる治療への備え(例えば入院時に個室を利用する場合の差額ベッド代や先進医療への備え)、通院への備え、がんとなった場合の一時金など手厚く備えることもできて安心です。加入する場合も、家計を圧迫しない程度の加入としましょう。
まとめ
今回は、20代の医療保険の加入についてみてきました。
簡単にまとめると、次のようになります。
・20代の医療保険で備える人の割合は全世代の平均より低いが、30代になると急上昇している
・ネット保険のメリットは、保険料が割安でシンプル
・デメリットは、全て自分で判断し完結しなければならず、商品数も限定的
・医療保険は、高額療養費や傷病手当金などの公的保障を知ったうえで検討する
・病気やケガをしたときに貯蓄でまかなうことに不安を感じるタイプは加入すると安心
若い人は相対的に病気になるリスクは低いため、安い保険料で加入できます。お守りとして一生加入するもよし、貯蓄が少ないうちは加入してある程度、資産が築けたら解約するのもよし、だと思います。先のことは誰にも分かりませんが、リスクに備えるための考え方として参考にしていただけたら嬉しいです。
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ネット保険についてのQA
Q.職場にある団体保険と一般の保険を比べるとどちらが保険料はお得ですか?
A.一般に割安なのは団体保険です。月々数百円で加入できるものもあります。ただ、年齢を重ねると保険料が上がるタイプ、退職後に継続できないタイプ、継続できても退職時に保険料を一括で支払わなければならないタイプ、などもあるため自分の希望に合っているか確認する必要があります。
Q.団体保険のメリット、デメリットを教えてください。
A.メリットは、保険料が割安なことや、一般に年に1度案内があるため定期的に見直せることです。デメリットは、申し込みが一定の募集期間内に限られることや、保障の種類が一般の保険より少ないことです。