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これからどうなる!?日本を襲う「悪いインフレ」への対策とは?

経済とお金のはなし 山下 耕太郎

これからどうなる!?日本を襲う「悪いインフレ」への対策とは?

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いま、米国や欧州では「インフレ」に対する警戒が高まっています。一方日本では今のところインフレ懸念は低いものの、資源価格の高騰や円安により今後インフレになる可能性もあります。今回はインフレとはどのような状態なのか、わたし達はインフレに対する備えとして何をすればいいのかについて解説します。

「良いインフレ」と「悪いインフレ」の違い

インフレとは、物価(日用品やサービスの値段)が上がることです。ただ、インフレには「良いインフレ」と「悪いインフレ」の2種類があります。「良いインフレ」とは景気拡大期で、モノの値段も上がりますが、働いている人の給料も上がる状態。企業は販売価格の上昇で儲かり、消費者は給料アップで商品をさらに買うようになります。

一方、給料が上がらないのに物価が上がる状態が「悪いインフレ」です。給料が上がらないのに身の回りの商品が値上がりすると、家計を圧迫して生活が苦しくなるからです。

世界各国でインフレが進む

世界でインフレ
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現在は世界各国でインフレが進んでいます。米国では9月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比5.4%上昇し、インフレが加速。FRB(米連邦準備理事会)がインフレ目標としている2%を大きく上回っています。

欧州でもユーロ圏の消費者物価指数(HICP)が、9月に13年ぶりの高い伸びを記録しました。ただ、日本の消費者物価指数(CPI)は9月で前年同月比0.2%程度であり、日銀が目標としている2%の物価上昇も難しい状態です。日本がインフレになる可能性は、他の国と比べて低いといえるでしょう。

日本は「ディスインフレ」の状態

世界的にインフレ懸念が高まる中でも、日本は物価の上がらない「ディスインフレ」なのです。米国とのインフレ率は5ポイントも開き、物価格差は40年ぶりの大きさになりました。物価が安いのは消費者にとっていいことのように思えますが、これは企業がコストを切り詰めて資源高や円安などによるインフレ圧力に耐え忍んでいるのです。

たとえば、経済協力開発機構(OECD)の2020年の調査によると、日本の平均賃金は424万円。1ドル=110円と仮定した場合、1位の米国763万円と339万円もの差があります。1990年のバブル時と比べると、日本は賃金が18万円しか増えていないのに、米国は247万円も増えているのです。さらに、隣の韓国は1.9倍に急増。日本は韓国に2015年に抜かれ、現在は38万円差となっています。

日本がディスインフレで足踏みしている間に、世界との差はどんどん開いているのです。今後、他国でインフレが加速すれば、この差はさらに開くことが予想されます。

賃金が上がらない日本

賃金が上がらず落ち込む男性
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賃金が上がらないのは、ディスインフレだけが原因ではありません。日本では雇用を守ることを優先し、賃金を抑制してきました。一方の韓国は、雇用規制が緩和されて流動化が進みました。さらに、労働組合は経営陣に強気で臨み、賃金の引き上げが続いてきたのです。

韓国の賃金は20年で43.5%増えています。しかし、日本の上昇率は、わずか0.4%。2020年の日本の平均賃金は、OECD加盟国35カ国中22位まで順位を落としているのです。

わたし達はインフレ対策に何をすればいいのか

日本は雇用の安定のため、今後もなかなか賃金が上がらない状態が続くでしょう。そして、資源価格高騰や円安が進めば、日本でもインフレが進む可能性もあります。賃金が上がらないのにインフレが進む状況は、「悪いインフレ」になります。

インフレでは貨幣の価値が下がるので、現金や預貯金では資産が実質的に目減りしてしまうのです。それでは、私たちはインフレに対してどのような対策をしておけばいいのでしょうか。

まずは「株式」の購入です。インフレ時には企業価値が活発になるので、株価が上昇します。現金の価値は下がっても株価が上がれば、資産が減ることはありません。また、インフレになって日本円という価値が落ちると円安になる可能性があります。ですから、ドルやユーロといった「外貨」を保有しておくことも有効です。

株や外貨というと「資産を大きく増やす」ための金融商品だと考えている人もいるかもしれませんが、「インフレヘッジ」としても有効なのです。

日本がインフレになるタイミングはいつになるかわかりません。ただ、自分の資産を守るため、今後は日本でもますます資産運用の必要性が高まっていくことでしょう。