事実婚、配偶者控除や社会保険上はどんな扱い?法律婚との比較一覧
事実婚という選択をするカップルが少しずつ増えているようです。そもそも、内縁関係である・夫婦関係であると認められる条件はなんでしょうか。いわゆる「籍を入れる」という法律婚と事実婚、お金の面でどんな違いがあるかを見ていきましょう。
20代女性Kさんの相談内容
もし将来事実婚を選択した場合、入籍する場合と比較するとお金関係でどんなところに違いがありますか?現行の制度での補助金や税金・保険など、どのくらい変わるのか知りたいです。
事実婚には3つの要件がある
入籍をしないスタイルの事実婚ですが、事実婚として認められるには3つの要件があります。
- 婚姻の意思があること
- 同居していて、住民票を同一(世帯合併届)にしていること
- 生計を一にしていること
上記の3つの要件を満たすことで事実婚であると認められ、事実婚と認められればお金の面で法律婚と同じような扱いを受けられます。ちなみに、単に同棲しているだけでは事実婚とは認められませんので注意してください。
下記の表は法律婚と事実婚を比較したものです。
筆者作成
事実婚と社会保険
仮に夫が会社員、妻がパート勤務で収入が一定額以下であれば、事実婚であっても、妻は夫の扶養家族になることができ、夫の社会保険に加入できます。社会保険に加入すれば健康保険や年金などは法律婚と同じ扱いを受けることができ、万が一の時の遺族厚生年金を受け取れます。なお夫婦共に正社員で、それぞれが社会保険に加入していれば、社会保険に関して、法律婚と事実婚の違いは大きくないでしょう。
事実婚と配偶者控除
法律婚で扶養に入っている配偶者がいれば、所得税の配偶者控除や配偶者特別控除を受けることができます。しかし事実婚では配偶者控除の仕組みを使うことができませんので、所得税の上では事実婚夫婦が不利になることもあり得ます。また法律婚では配偶者へ自宅を贈与した場合、贈与税の配偶者控除という制度がありますが、事実婚には適用されません。なお相続税については後述します。
事実婚と生命保険
最近は、生命保険の死亡保険金の受取人を事実婚のパートナーにできる保険会社が増えてきました。ただし生命保険会社により違いがあるので前もって保険会社に確認しましょう。なお後述しますが、法律婚と事実婚では、死亡保険金を受け取る場合の課税方法が異なります。
事実婚と住宅ローン
事実婚や同性婚のカップルが申し込める住宅ローンを取り扱う金融機関が増えてきましたが、収入合算やペアローンなど住宅ローンの取り扱いは金融機関ごとに異なります。なお商品の内容が随時変化している状況であり、今後事実婚の取り扱いの範囲が広がっていくと考えられます。
事実婚と相続
配偶者が亡くなった場合の相続税の取り扱いが法律婚と事実婚では大きく違います。
配偶者が亡くなって相続財産を分ける際、法律婚であれば相続財産の2分の1か1億6000万円までは相続税を納める必要がありません。
一方、事実婚では配偶者が亡くなっても法定相続人になることができません。また遺言によって死亡保険金を含めた相続財産を受け取る場合は相続税の2割加算の対象になり、場合によっては多額の相続税を支払う必要が出てきます。
まとめ
法律婚と事実婚の違いは、お金の面を含めても徐々に差が小さくなっており、日常生活を送る上ではあまり意識をすることはないのかもしれません。ただし相続や贈与など特定の分野では大きな違いがあることも事実です。お二人にとって良い選択ができることをお祈りします。