“芸術や建築”に税金を使うのはアリか!?ナシか!?
監修・ライター
アリである。
目の前で娘たちが炎に包まれ助けを求めていたなら、ワタシは、幾らでも出すから助けてやってくれと消防士さんにすがりつくだろう。その消防車が1台1億円だったとしても、火事から1人の命を救ったとしたなら元はとれる。公共事業の費用とは、そんな大局の中で決められるべきものであると思う。無駄遣いだとばかり非難するのは、お角が違う。
1冊80万円の写真集から学べること!!
2009 年のことである。トルコ人写真家のAhmet Ertug(アフメト・エルトゥウ)さんが出版した、ヨーロッパ各地の歴史的な図書館を巡り撮影した特大サイズの写真集「Temples of Knowledge」が話題となった。その手作りの写真集は、400冊だけの限定。当時40~80万円の値が付いていた。
その中には、フランスの国立図書館、イタリアの国立マルチャーナ図書館、ポルトガルのマフラ国立宮殿図書館等々、名だたる世界の図書館が並んでいる。
ただ美しい。言葉を失う。比較したくはないのだが・・・日本の国会図書館とは、段違いである。荘厳なフランスの国立図書館が機能的かと言うと・・・実は、使いづらいかもしれない。しかし、利便性を遙かに飛び越えた壮大な機能を感じる。
大分のクリエイティブから学べること!!
大分は、温泉県である。しかし、いまやそれ以上に“クリエイティブ”だと評判を聞いたので行ってきた。
大分県立美術館「OPAM」では、有難いことに“庵野秀明展”をやっていた。東京・六本木(国立新美術館)で2021年10~12月に開催されていた企画展。全国巡回は、大分→大阪→山口の順番。山口県は庵野さんの出身地であることを考えれば、九州の
「出会いと五感のミュージアム」というだけのことはある。エントランスを入ったらいきなり、あの映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の舞台となった街の模型が展示されていた。ミュージアムの無料のイントロ部分で、この大型展示ができるところは珍しい。どうやら、この模型は、他の美術館では有料スペースで展示されていたという。
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のシーンは、この模型でのシミュレーションが可能にしたのか!?とワクワクした。この緻密な情熱!!ホンマものには敵わない。逃げちゃダメだ。世界的建築家・坂茂さんが創った空間の中で“14歳の自分”に出会える。Netflixで時間潰しをしている場合ではない。
ライバルは、建築家・磯崎新!?
なんとあの建築家の巨匠“磯崎新”さんは、大分県出身なのである。その偉大な作品の模型や多様なプロポーザルが集結しているのが複合文化施設「アートプラザ」。この施設自体が、磯崎新さんの作品でもある。
館内をくまなく巡ったが、ホントこれには、まいった。島根の足立美術館で横山大観の『紅葉』をナマで鑑賞して以来の感動だった。
人々が、その建築に触れると、黙ってしまう。言葉にならない。沈黙こそが建築への究極の賞賛であるという思想。
36年間も広告屋で生きてきた。なぜこうなったか!?をいちいち説明し、言葉を尽くして仕事をいただいてきた企画屋にとっては、誠に耳が痛い。
もう還暦である。そろそろ黙らせるような企画をやってみたい。戦略プランナーのライバルは建築家であり、その目標は磯崎新さ
“沈黙”は、豊かに生きる幹だ!!
言葉にならない建築や芸術との“出会い”こそが、新しい価値を創造する。
人間が創造してきた歴史や知識への畏敬の念。
知性とは何かを身体で感じられる張りつめた空気。
こういう施設が子ども達の側にあることが、一番の教育だと思う。
こういう“建築や芸術”が街にあることが、一番の地方創生だと思う。
何に役立つのか!?お金は適正なのか!?競争契約かどうか!?
それらは、人間らしい「真の理性の論争」ではない。
アインシュタインは、こんな格言を遺している。
「問題をつくりだした時と同じ考え方では、その問題を解決するこ
地方を豊かにする議論であるなら、こんな壮大で、こんな荘厳で、かつ無駄かもしれない“建築や芸術”を真ん中に置いてやるものであって欲しいと思う。日本の問題は、その問題をつくりだした時と同じ考え方では、もう解決することはできない。
“沈黙”こそが、実は、豊かさの幹なのではないか!?と気づいた。
おかげさまでカミさんとは、沈黙の時間がやけに長い。