話題の「子育て10万円クーポン」、どんな人がもらえて何に使える?
監修・ライター
政府が2023年1月からの支給を決めた出産準備金。計10万円を出産や育児のためにのみ使えるクーポンとして支給することから、「子育て10万円クーポン」などとも呼ばれています。そのクーポンですが、もうすぐ支給開始されるにもかかわらず、どんな人に支給されて、どんなことに使えるのかがよく分からない方も多いと思います。「子育て10万円クーポン」は、どんな人に支給されて、何に使えるのでしょうか。
そもそも「子育て10万円クーポン」とは?
出産準備金、いわゆる「子育て10万円クーポン」とは、どういった目的で支給されるものなのでしょうか。「政府からお金が支給される」と聞くと、コロナ禍の「特別定額給付金」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。「特別定額給付金」は、コロナ禍で傷んだ家計を支えるために2020年に支給された給付金で、住民基本台帳に記載されているすべての人に一律10万円が支給されました。
今回の「子育て10万円クーポン」は、直接的にコロナ禍とは関係ありません。その目的は、妊娠中から出産後の子育て支援。背景には深刻な出生数の減少があります。日本の出生数は長期的に減少傾向が続いています。1950年に233万7507人、第二次ベビーブームだった1973年に209万1983人だった出生数は、2019年には86万5234人、2021年は81万1622人と明治32年(1899年)の人口動態調査開始以来「最少」でした。
さらに、今年は9月末までの速報値で59万9000人あまりと2021年の同時期より3万人ほど減少し、国の統計開始以来、初めて80万人を割り込む可能性もあります。日本の出生数は、実にピーク時の3分の1にまで減少してしまっているのです。
人口が減っていくと何が起こる?
人口を維持していくために必要な合計特殊出生率(一人の女性が一生の間に産む子供の数)は、2.06~2.07と言われています。日本の合計特殊出生率は2019年で1.36。昨年、今年はさらに下がっています。2022年11月1日時点で、日本の総人口は1億2485万人です。しかし、このままだと2026年には1億2000万人の大台を割り込み、2048年には9913万人、2060年には8674万人にまで減少すると推計されています。
人口が減少すると、需要の減少による国内経済規模の縮小、労働力不足、基礎的自治体の担い手の減少など、様々な社会的・経済的な課題が深刻化してしまいます。例えば、現在、日本中に鉄道網が整備されていますが、近い将来、鉄道を維持していくのが難しくなる地方も出てくるでしょう。働き手の不足により、公共サービスをこれまで通り提供できない自治体が出てくる可能性もあります。近所の小学校が統廃合によりなくなり、子供は毎日、長い時間をかけて遠くの小学校に通わねばならなくなるかもしれません。
こうした危機的な状況に歯止めをかけるために、政府は出産や育児を支援するための「子育て10万円クーポン」を支給することを決めたわけです。
「子育て10万円クーポン」は誰に支給されて何に使える?
それでは、この「子育て10万円クーポン」は誰に支給されて、どんなことに使えるのでしょうか。支給の対象となるのは、2023年1月1日以降に生まれた子供がいる家庭。妊娠届と出産届を出したタイミングで、それぞれ5万円分、計10万円分のクーポンが支給されます。所得制限はなく、2023年1月1日以降に生まれた子供がいるすべての家庭に支給されます。また、2022年4月から12月の間に生まれた子供がいる家庭には、出産時の5万円分のクーポンのみが支給されるという仕組みです。
クーポンが使えるのは、出産や子育てに関連することに限られる予定です。現在、まだ何に使えるのか、どこの店舗で使えるのかなどの詳細は明らかになっていませんが、例えば、ベビー用品の購入や産前産後のケア、子供の一時預かりサービスや家事代行サービスなどに使えると想定されています。また、岸田総理大臣は10月19日の国会で、「自治体の判断で現金給付もオプションとして排除されない」と説明しました。そのため、クーポンではなく現金で支給する自治体が出てくる可能性もあります。
SNSなどでは、「一過性の支援策で効果は限定的」などと批判の声も多い「子育て10万円クーポン」。確かに、10万円分のクーポンを支給されるからと言って、「じゃあ、子供を産もう」とはならないかもしれません。とはいえ、「子育て10万円クーポン」は、これまでなかった制度で、10万円分のクーポンがないよりはあった方が出産や子育ての助けになることは間違いないことでしょう。これをきっかけに、様々な支援が充実し、日本がもっと出産・子育てをしやすい社会になるよう願わずにはいられません。