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4月から始まるNHKの受信料割増金、払いたくない人はどうする?

経済とお金のはなし 箕輪 健伸

4月から始まるNHKの受信料割増金、払いたくない人はどうする?

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NHKは2023年4月から受信料を支払わない人に対して、受信料の2倍にあたる割増金を請求できる新たな制度を導入します。長期間、受信料を支払わないとどれくらいの金額が請求される可能性があるのでしょうか。そして、受信料を支払いたくない人はどうすれば良いのでしょうか。テレビを捨てる以外の、受信料を支払わなくて済む方法を紹介します。

割増金は受信料の2倍

NHKは今年1月、新たな受信料制度を発表しました。NHKの受信料について、さまざまな改定が行われる予定ですが、中でも多くの人の注目を浴びているのが、受信料の不払いに割増金を請求できる制度。テレビの設置後、期限内に受信契約を申し込まない場合、受信料の2倍にあたる割増金を請求できるというもので、今年4月から導入される予定です。

受信契約の申込期限は、テレビを設置した月の翌々月の末日まで。つまり、今年4月に自宅にテレビを設置した人は、7月末までにNHKの受信契約に申し込まなければ、7月に7月分の受信料に加えて、「4月分の受信料+割増金」「5月分の受信料+割増金」「6月分の受信料+割増金」が請求される可能性があるのです。

衛星放送も見られる「衛星契約」の現在の受信料は月額2170円のため、7月に合計2万1700円も請求される可能性があります。ちなみに、1年間受信料を支払わなかった場合、割増金だけで5万2080円。アパートの家賃に近い金額が、ただNHKの受信料を支払わないというだけで請求される可能性があるわけです。受信料を支払わないままだと、NHKが法的手段を取り、最終的に財産を差し押さえられてしまいます。

受信料を支払う必要のないテレビとは?

リモコンでテレビを操作する
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割増金は、NHKの受信料制度にもともと不信感を持っていた人を中心に、SNSでは大きな反発が巻き起こっています。支払わない期間が長ければ長いほど請求される割増金が増えるため、引っ越しを機にテレビを処分したという声も少なくありません。

とはいえ、テレビのない生活を選択する人はまだ少数派。NHKの受信料制度に不満がある人でも、多くの人はこれまで通り、受信料を支払っていくでしょう。しかし、中にはNHKの受信料を節約したいと思う方もいると思います。こうした人は、テレビを捨てなければならないのでしょうか。実は、そんなことはありません。NHKの受信料を支払わなくて良いテレビがあるのです。

それは、テレビ受信機(チューナー)を搭載していないチューナーレステレビです。テレビ受信機を搭載していないため、単独では地上波放送が見られません。そのためチューナーレステレビはNHKの受信料も支払う必要がありません。NHKの受信料については、放送法の第64条に次のように規定されています。

「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」

チューナーレステレビは、協会(NHK)の放送を受信することができないため、受信料を支払う必要がないのです。

「ドンキテレビ」は1万5000台以上の売り上げ

カートに入れられたテレビと女性
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このチューナーレステレビ、昨年からちょっとしたブームになっています。その発端となったのは、大手ディスカウントストアのドン・キホーテが2021年12月に発売した「42V型AndroidTV機能搭載フルHDチューナーレススマートテレビ」。NHKをはじめ、地上波放送は見られませんが、Netflix(ネットフリックス)やAmazonプライム・ビデオといったAndroidTV対応のビデオ配信サービスが楽しめます。発売されるとすぐに全国の店舗で品薄になるほどの人気を得ており、累計販売台数は1万5000台以上です。

この大ヒットを受けて、各社も続々とチューナーレステレビ市場に参入しています。昨年6月には、大手家電量販店・エディオンが「43V型チューナーレステレビ」を発売。今年1月には、家具・インテリア小売業大手のニトリが「43v型 4Kチューナーレススマート」の販売を開始しています。消費者の動向を敏感にキャッチした海外メーカーも日本のチューナーレステレビ市場に参入する動きを見せています。たとえば、世界的な家電メーカーの韓国のLGエレクトロニクスは今年1月から「LG SMART Monitor」というチューナーレステレビを販売しています。テレビとして使えることはもちろん、パソコンのディスプレイとしても利用可能です。

NHKの受信料は、1カ月2000円ほど。年間では2万4000円ほどになります。一方、Amazonプライム・ビデオの月額料金は500円、年間契約だと4900円とさらにお得になります。競合サービスの価格と比較すると、単純にNHKの受信料が割高と感じる人は多いでしょう。物価高に加えて、電気代やガス代も高騰する中、少しでも節約するために、テレビからチューナーレステレビに買い替える人は、今後さらに増えていくのかもしれません。

こうした流れに対抗するように、すでにNHKはスマートフォンやチューナーレステレビのアプリ視聴者に対して受信料を徴収する検討を始めています。今のところ、NHKは「大変難しい状況」との認識を示していますが、将来的にスマートフォンやチューナーレステレビでの視聴にも受信料が徴収される可能性もあることは、心にとめておいた方が良いでしょう。