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NISAの投資枠360万円は使い切るべき?投資枠の上手な活用法

ふやす 権藤 知弘

NISAの投資枠360万円は使い切るべき?投資枠の上手な活用法

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2024年は新NISA元年となりました。2023年までのNISA制度に比べ、非課税運用期間が無期限となり年間の投資枠も最大360万円に拡大。さらに売却後もその枠を再利用できるため、より柔軟で長期的な資産運用が可能となりました。この投資枠は枠の最大分使い切るべきなのでしょうか?新NISAの特徴を踏まえ、資金計画やリスク許容度を考えながら最大限に活用する方法を見ていきましょう。

新NISA制度の基本と投資枠の仕組み

通常、株式投資や投資信託などの金融商品から利益を得ると、利益に対して20.315%(復興特別所得税を含む)の税率で課税されます。それに対し、NISAという非課税制度を利用すると、利益に対して課税されないというメリットがあります。

NISAは少額投資非課税制度の略称で、イギリスの制度をモデルにして2014年1月からスタートしました。その後2016年に子供の教育資金の準備に使える「ジュニアNISA」がスタート、2018年からは投資信託の積み立てに特化した「つみたてNISA」が開始、そして2024年1月から新NISAに制度が変わりました。

【新NISA制度のおさらい】
新NISAのポイントは以下の通りです。

主な特徴は上に挙げた通りですが、「非課税期間が無期限であること」と「投資枠の再利用ができる」ということは新NISAの大きなメリットです。

図:金融庁「NISAを知る」より一部抜粋

非課税運用期間が無期限となったメリット

新NISAではNISAに設定されていた非課税運用期間(購入から5年間)の縛りがなくなり、無期限となりました。

例えば20歳で投資した金融商品を60歳まで運用しても、そこから得られた利益に課税されません。またNISA枠で運用した商品を売却すると、翌年以降にNISA枠の再利用ができるため「NISAで運用した商品を教育費のために売却し、その後に老後資金用に再度運用する」といった運用方針を柔軟に変えることもできるようになりました。

1年間で利用できる非課税枠は最大360万円

「MAXIMUM」と書かれた積み木とコイン
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2024年からの新NISAでは成長投資枠とつみたて投資枠という仕組みが作られ、併用が可能になりました。成長投資枠240万円とつみたて投資枠120万円を合計した360万円が年間の非課税投資額の上限となりました。

成長投資枠では株式や投資信託を購入でき、積み立て購入と一括購入のどちらでも利用できます。なおつみたて投資枠は、一括ではなく、複数回に分けて購入しなければなりません。

2024年からの新NISAでは、この360万円の上限額を使い切った方が良いかを考えている人もいるかもしれません。上限まで購入するメリット・デメリットを考えてみましょう。

年間360万円の投資枠を使い切るメリット

投資の効率を判断したり考えたりする際の一つの目安に下記のような式があります。

金融資産の多寡=投資金額×利率×運用期間

将来的に金融資産を増やすためにはいろいろな方法がありますが、やはり投資や運用にまわす金額のボリュームの大きさは重要なポイントです。また運用期間が長い方が一般的に利益を得やすいでしょう。

上記のことから2024年の投資枠360万を上限まで使い、長めの期間で運用するということには一定のメリットはあるでしょう。

NISA投資枠を上限の360万円まで活用していい人の特徴

少しでも長期で運用したい人は、なるべく上限に近い金額まで入金すると良いと思いますが、上限まで入金しても良い人はどんな人でしょうか?以下のような条件に当てはまる場合には、年間上限まで投資することを検討しても良いでしょう。

1.半年分の生活費にあたる金額以上の貯金がある人

病気やケガなどで収入が減少したりすることもありえます。NISAの上限額とは関係なく、半年分の生活費に相当する貯金を予備費として準備していることが望ましいです。

2.金融商品の価格変動に耐えられる人

2008年のリーマンショックでは半年間で株価が半額になり、リーマンショック前の水準に株価が戻るまで3~4年の時間が必要でした。また近いところでは、2024年8月に日本の平均株価が1週間で7000円近く下落したこともありました。
このようにマーケットの値動きは想像されているよりも激しく、値段が上昇する時よりも値下がりする時の方がより激しいことが多いと言えます。
もし値下がり局面になったとしても、金融商品を売却しなくても日々のやりくりができるのであれば上限まで入金しても良いでしょう。

3.各種の固定費の準備ができている人

車検や固定資産税、教育費、住宅の頭金などすぐには使わないけど使う時期や必要な金額がわかっている種類の費用があります。この費用をまかなうために金融商品を売却しなければならないという人は要注意です。金融商品に手をつけなくても大丈夫な人は上限までの入金を考えても良いでしょう。

4.2023年までのNISAや課税口座で金融商品を保有している人

旧NISAや課税口座などで既に購入済みの株式や投資信託を売却し、その資金を新NISAに投入するということであれば上限まで購入しても良いでしょう。特に長期運用を考えているような投資信託は、いったん売却して新NISAで再度購入するという手段は有効だと思います。ただし売却時のコストや売却時の利益に課税されることもあるので、その点を許容できるのであればおすすめです。

年間の上限額360万円にこだわる必要はない

2024年からの新NISA制度では非課税運用期間の縛りがなくなりました。上限額の360万円に注目が行きがちですが、実は最大のメリットは運用期間の縛りがなくなったことです。運用期間の縛りがなくなったことで、非課税のメリットを受け続けながら短期投資にも長期投資にも使えるようになったのが新NISAの特徴です。

それでも年間上限額360万円を使い切りたい場合は?

スマホで投資
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せっかくなので年間360万円の上限まで枠を使い切りたい人はどうすれば良いのでしょうか?新NISAの口座を開設している金融機関によって詳細は異なりますが、一般的には下記のような方法となるでしょう。

1.成長投資枠

成長投資枠は一括でのスポット購入が可能です。そのため最大240万円分の株式や投資信託をまとめて購入することができます。

2.つみたて投資枠

つみたて投資枠には購入タイミングを分けて購入するというルールがあります。また大部分の金融機関では任意のタイミングと金額で購入できるというボーナス購入という仕組みが取り入れられています。例えば毎月の購入金額は3万円、ボーナス月の7月と12月は5万円をプラスして購入といった具合です。この設定を使い、12月中にボーナス購入で上限まで購入するということも可能です。ただし証券会社に事前に入金しておく必要や、ボーナス設定ができる期限などもあります。そのため無理に上限額に達するようにしなくても良いと思います。

なお成長投資枠でもつみたて投資枠でも、2024年の非課税枠に収めるためには、購入日ではなく受渡日が2024年中にならなければなりません。

特に要注意なのが先進国株式や全世界株式、S&P500など海外のマーケットが関係する商品です。欧米ではマーケットもクリスマス休暇を取るため、購入のオーダーをして受け渡しされるまで1週間以上の時間が必要なこともあります。なるべく12月の上旬までに手続きを行うと良いでしょう。

まとめ

2023年までの旧NISA制度を発展的解消という形で2024年からの新NISAはスタートしました。従来のNISAでは5年だった非課税運用期間が無期限になり、非課税投資ができる金額上限が成長投資枠とつみたて投資枠を合算して年間360万円に拡大、その投資枠を一度利用しても再利用が可能、というように個人投資家にとって非常に良い制度の改正となりました。ただし制度が良くなりすぎて、制度に振り回されているといった側面も感じられます。特に年間の上限額360万円まで購入した方が良いかという疑問は象徴的と言えるでしょう。

新NISAがスタートするにあたり、年間360万円と通算上限金額の1800万円という数字が一人歩きしていました。ただ年間360万円や通算上限の1800万円まで投資をできる人は限られています。

マネーゲームではなく、資産運用でしっかり増やすことを目標にするのであれば、自分ができる無理のない金額で継続することが重要です。その上で、投資する金額を少し増やしたいと思った時に、可能な金額を追加するということで十分です。

繰り返しになりますが、新NISAの最大のメリットは非課税運用期間が無期限になったことです。年間の上限額に一喜一憂するよりも、長期的な視点で自分に合ったペースで投資を続けることが重要でしょう。

※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。

新NISAに関するQ&A

Q:NISA枠を利用するのに楽天証券と他の証券会社で違いはありますか?

A:手数料や取扱商品に違いがあります。ネット証券は手数料が比較的安く、多くの商品を取り扱っている傾向があります。一方、対面式の証券会社は相談がしやすく、初心者向けのサポートが充実している場合があります。

Q:投資初心者は成長投資枠とつみたて投資枠、どちらがおすすめですか?

A:投資初心者の方には、つみたて投資がおすすめです。少額から始められ、市場の変動に振り回されにくいという特徴があります。資産価値の変動に少し慣れてきたらスポット購入ができる成長投資枠を利用すると良いでしょう。