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災害の備えに“お金の安心”を。家庭でできる5つの対策とは?

そなえる 白浜 仁子

災害の備えに“お金の安心”を。家庭でできる5つの対策とは?

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台風シーズンになりました。近年は、毎年のようにどこかで大きな被害が発生しており、自然災害のリスクが高まっています。災害への備えの一つとして大切なのは、お金に関する知識と準備です。この記事では、台風や地震などの自然災害に備えて押さえておきたい「お金まわりのポイント」を紹介します。

1.現金の準備をする

災害で停電や通信障害になるとATMでお金を引き出せない、電子マネーが機能しないことが数日続くかもしれません。キャッシュレス決済が普及し、お財布を持たない人が増えていますが、災害に備えるためには確実な支払い手段として有効である現金を準備しておきましょう。

また非常時は、店舗におつりが不足することも考えられます。お札はできるだけ1000円札にし、100円玉や10円玉などの小銭も多めに準備しておきましょう。家族分を用意する時は1人あたり1万~2万円を目安にします。

また、現金は防災リュックに準備しておくだけでなく、万一に備えて普段から一定の額を持ち歩いておくと安心です。

もう一つの備えとしては「緊急予備資金」です。月の生活費3カ月~6カ月を預貯金で準備しておくと、いざという時に役に立ちます。被災時、金融機関によってはお金の引き出しに制限がかかることもありますので、いくつかの金融機関に分散して預けておくのが良いでしょう。緊急予備資金は被災時だけでなく、急な病気やケガによる休業、失業など不測の事態に備えるものでもあるので、準備しておくことをお勧めします。

2.金融機関との連絡手段・本人確認の備え 

通帳と印鑑
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災害時には、銀行でお金を引き出したくても、通帳や印鑑、キャッシュカードの紛失などで準備できないことが想定されます。このような非常時は、日本銀行が行う「災害被災地域の金融機関等に対する特別措置の要請」により、通帳や印鑑がなくても預金を引き出せるようになることがあります。

預金を引き出すためには、基本的に本人確認を求められます。そのため、運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなど本人確認書類を常備しておくことが大切です。

また、家族で財産の状況を把握できる財産目録を作っておくこともおすすめです。各自の口座番号や銀行の連絡先を一覧にまとめ、ネット銀行やインターネットバンキングのログインIDやパスワードは家族だけに分かる方法で保管しておきましょう。日本FP協会が出している「災害に備える くらしとお金の安心ブック」も参考になります。

3.災害時に頼れる公的支援制度

大きな災害が起きると、住まいや仕事、日常の暮らしが一変してしまうこともあります。そんな時、生活を立て直す手助けになるのが公的な支援制度です。「もしも」の時に備えて、どんな支援が受けられるのかを知っておくだけで、不安はぐっと軽くなります。

まず必要なのは「罹災証明書」

災害による住宅の損害状況を証明する書類で、市区町村が発行します。これがないと多くの支援制度を利用できません。

申請は役所に出向くだけでなく、郵送やオンライン申請に対応している自治体も増えています。お住まいの自治体での申請方法を事前にチェックしておくと安心です。

知っておきたい主な支援制度

被災者生活再建支援制度
住宅が「全壊」や「大規模半壊」などと認定された世帯に最大300万円の支援金が支給されます(条件あり)。

生活福祉資金貸付制度(災害援護資金)
一定の条件を満たす世帯に対して、生活費などを無利子または低金利で貸し付け。返済猶予もあり。

税金や社会保険料の免除・猶予
所得税・住民税、国民健康保険料などの納付が一時的に猶予される措置もあります。

この他にも、自治体独自の支援や一時避難のための住宅提供、子育て世帯向けの補助などがあります。

(参考)内閣府「被害者支援に関する各種制度の概要 令和6年6月1日現在

4.火災・水害・地震…保険の確認と見直し

災害に備えて改めて確認したいのは「火災保険」です。火災保険は自宅が火事になった時だけでなく、洪水や土砂崩れなどの水災、台風や落雷などで被害に遭った時にも建物や家財の補償を受けられます。改めて、契約している保険の補償範囲や補償額、一定の自己負担となる免責額はいくらかなどを知っておきましょう。

地震の被害には「地震保険」が必要

火災保険だけでは地震や噴火、津波による被害は補償されません。地震によって発生した火災や建物の損壊に備えるには、地震保険への加入が必要です。

地震保険は火災保険とセットでしか契約できないため、未加入の場合は火災保険の保険会社に相談して追加する形になります。もし加入済みでも、保険金額は火災保険の30~50%に制限されているため、建て替え費用などが全額カバーされるわけではありません。生活再建資金の一部と割り切って備えましょう。

災害時のケガや通院にも備える

避難中や復旧作業中のケガに備えて、医療保険や傷害保険も確認しておくと安心です。日額保障や手術給付金の有無など、入院・通院時の補償内容を見直しておきましょう。

保険証券のコピーや連絡先をまとめておく

いざという時ほど保険証券が見つからず請求手続きが遅れることもあるかもしれません。災害が一定規模を超えた場合は「災害救助法」が適用され、保険証券を失くした場合でも、災害時には保険会社名と証券番号などで契約内容の確認ができれば保険金を請求できる場合もあります。以下の備えをしておきましょう。

5. 最低限揃えておきたい非常用備蓄と費用目安

非常用備蓄
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災害時は、電気・ガス・水道などのライフラインが数日から数週間止まることも想定されます。最低でも「3日分」、可能なら「1週間分」の備蓄が推奨されています。下記の備えをしておきましょう。

避難時にすぐ持ち出す非常持出袋(防災リュック)と、在宅避難時に生活を維持するための日用品として自宅に置いておく防災備蓄に分けて考えましょう。

費用は家族構成や健康状態、住環境によって必要な量・内容は変わりますが、一つの目安として参考にしてください。東京都が情報発信している「東京備蓄ナビ」では自分に合った備蓄品目や必要量をシミュレーションすることができます。

FPのおすすめは「エンディングノート」の活用

終活の一つとして「エンディングノート」という人生の振り返りや資産状況などをまとめる書き込み式ノートがあります。実はエンディングノートは災害時にも役立ちます。

ノートには、預貯金や投資、保険など自分の契約状況や使っている金融機関、口座番号を記入するページがあります。また、かかりつけ医や持病、服用している薬を記入する欄も。実際に災害リュックにエンディングノートがあったおかげで助かったという人もいます。ぜひ参考にしてください。

いつ災害に見舞われてもおかしくない時代になりました。この時期にどう備えるか考えてみましょう。