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平日15時には完売! オープン1年で話題のカレー屋さんに

”好き”で稼ぐ

平日15時には完売! オープン1年で話題のカレー屋さんに

【画像出典元】「メガネカリー」

オープンしてたった1年、しかも場所は志賀島。それでもわざわざ通いたくなる、とカレー通の間でも話題のお店、「メガネカリー」をご存じでしょうか。人気のお店を切り盛りしているのは、20代で志賀島に移住・開業という大きな決断をされた安達さん・江藤さんのお二人です。

「志賀島移住開業者プロジェクト」の第一号としてスタート

店の前でお二人

志賀島に入るとすぐに見えるのが、島を守る志賀海神社の立派な鳥居。そこからまっすぐ伸びる参道沿いにあるのが、一度食べたら病みつきになると評判の「メガネカリー」です。

店内

取材に伺ったのは人影もまばらな極寒の2月。しかも平日15時という時間にもかかわらず、なんとすでにカレーは売り切れ!

噂どおりの人気ぶりですが、バタバタした雰囲気はなく、むしろゆったりと落ち着く穏やかな空間です。実はこの店舗は、「志賀島移住開業者プロジェクト」の一環として、築45年の空き家をリノベーションしたもの。お二人は、このプロジェクトの第一号なのです。

志賀海神社の鳥居

志賀島は、商業施設の建設などの制限がある「市街化調整区域」でしたが、人口減少や空き家問題の解消のため、2015年に一部地域の規制緩和がスタート。移住・開業希望者に向けた空き家の案内ツアーなども始まり、安達さんはこの案内ツアーで現在の物件に出合いました。

絶対にやりたくなかった仕事が、パートナーとの出会いで一変

調理中の安達さん

もともと福岡市内でWEBデザイナーとして働いていた安達さん。将来は独立して何か事業をしたいと考えていましたが、飲食業は絶対にやりたくない、と思っていたそう。

「料理は好きですが接客が苦手で、自分にはできないと思っていました」。けれども、パートナーの江藤さんと出会い、人当たりがよく、接客業の経験のある彼女となら大丈夫、と感じたのだとか。

店外観

飲食業の経験はありませんが、食べ歩きブログを立ち上げるほどカレー好きだった安達さんは、美味しかったメニューを自分なりに再現したり、知り合いのイベントで出したりしているうちに、「やるならカレーのお店もいいな」と思い始めます。

そんな時、志賀島の空き家ツアーを知り、友人と参加。開業はもっと先のつもりでしたが、物件を見てすぐに「ここでやろう!」と決めたそうです。

ツアーから帰った途端、「志賀島でカレー屋さんをやろう」と言い出した安達さんに、江藤さんも最初は驚いたそう。

「何言ってるの?と思いました(笑)。でも、私もこの物件を見て、ここならできそう、と・・・。お店のイメージがばーっと浮かんだんです」

人気店の秘密は、“自らの足と舌”で集めたデータ!?

ロゴ入りマグカップ

食べ歩きが好きだった二人は、休みのたびにあちこちの評判の店に足を運んでいたため、具体的な成功例を見て、メニューや内装、外観、雰囲気など、自分たちの理想とする店のイメージがしっかりと固まっていったのだそうです。

開店準備を進める中でも、二人の意見にまったくズレはありませんでした。お客としていろいろな人気店に通っていたからこそ、二人して成功する理由を見つけることができたのかもしれませんね。

魚介のカレー
【画像出典元】「メガネカリー」

島で獲れた魚を贅沢に使った魚介カレー。インスタ映え間違いなしのインパクト。

エビのカレー
【画像出典元】「メガネカリー」

女子にも大人気のエビカレー。付け合わせと一緒にいろんな味が楽しめます。

あさりカレー
【画像出典元】「メガネカリー」

見た目はサラサラのあさりカレー。貝のエキスがぎっしり!
 

自分たちが毎日食べたくなるカレーを、という思いから、スパイスを調合してゼロからカレーを作り、化学調味料は使いません。パキスタンの岩塩や国産鶏を使用し、お米はなんと志賀島産。付け合わせの野菜もなるべく地元で採れたものを取り入れ、新メニューも次々に考案しています。

デザート

デザートは江藤さんの担当。こちらも原料は国産にこだわり、一から手作りした果物のソースがたっぷりとかけられています。

予想外の出費で、通帳残高6万円という危機が!

スパイス

開業前、独自にさまざまなシミュレーションを行っていた安達さん。開業が前倒しになったものの、約170万円の預金があり、空き家のリノベーションや調理器具等にかかる金額が130万円、開店後の運転資金として40万円程度の余裕がある、という計算だったそう。

ところが、盲点だったのが、開業に必要なことに関する細々とした出費でした。飲食店開業に必要な食品衛生責任者資格の取得や建物の火災保険など、予想外の出費が増え、開店前は通帳残高6万円というピンチもあったのだとか。

「志賀島」という立地が黒字経営を後押し

ウォーターサーバー

その後、資金を募るクラウドファンディングに参加したり、道具を中古で揃えたりと工夫を凝らし、借入はせずに無事開業。2016年12月のオープン以来、黒字経営を続けています。

その理由が、こだわりのカレーであることはもちろんですが、志賀島という立地も大きく関係している、と安達さんは考えています。

「通常、飲食店を経営するときにネックとなるのは、店舗運営のための固定費です。でも、この物件の家賃は月3万円。季節にもよりますが、光熱費なども含めてランニングコストは約5万円程度です。都心部ではこうはいきません。僕たち二人だけなので人件費もかかりませんし、このペースで十分利益が出ます」

運営が順調なため、今年の1月は丸々1ヵ月の冬休みという開業時からの夢を実行! 休み中は東京の有名店や営業日がかぶっていて今まで行けなかった店にカレーを食べに行った、とやっぱり”カレー”が中心だったようです。きっと、新しいレシピ開発にもきっと役立つに違いありません。

地元の方と程よい距離感と信頼関係を築き、移住ライフを満喫

持ち込まれたお土産

「お店に合うから、と勝手に置いていかれました(笑)」という黒電話やアジア風の置物。ミシン台はもともと空き家に置いてあったもの。

最初は不安もありましたが、地元の方の近すぎず、遠すぎずの距離感が心地よく、志賀島に移住してよかったというお二人。

「実際に住んでみるとフレンドリーでとてもいい方ばかり。リノベーションの時の不用品回収を手伝ってくれたり、生産者や仕入れ先を教えてくれたり、とても助かっています」と安達さん。「頑張っていたら、ピンチの時も助けてくれる」という言葉から、地元の皆さんとの信頼関係が伝わってきました。

“やりたいことを、楽しくやる”。豊かな島暮らしを実現中

看板

お二人は、長期休暇をとったり、島の空いている農地で野菜を育てたりと、やりたかったことを着々と実現しています。今後は店舗2階の住居部分を、雑貨を展示販売したり、若い人が集まってイベントをしたりする貸しスペースのようなものすることも計画しているそう。

作家コーナー

「そこではカレーは出しません。2階まで店舗にしたら二人では回せなくなるし、忙しすぎるとバランスが崩れちゃうと思うので」と安達さん。おいしいカレーを作るというお仕事に情熱を注ぎながら、パートナーや自分の時間を大切にしている安達さんと、それを支える江藤さんは、志賀島でとても豊かに暮らしていると感じました。

「やりたいことを楽しくやっていければいい」という二人の周りでは、これからも新しいことがどんどん始まりそうな予感がします!

メガネカリー
https://www.facebook.com/meganecurry/
http://shimagura.hatenablog.com/