お金

相続や生前贈与の全体像を知って上手な家族リレーを!(前編)

ためる 内山 貴博

相続や生前贈与の全体像を知って上手な家族リレーを!(前編)

PhotoAC

親から子どもへ、財産のみならず「想い」を上手につないでいくためには、バトンを渡す側と受け取る側がきちんと準備をしておく必要があります。
しかし、相続や生前贈与というと、法律や税金などさまざまな制度が入り組んでおり、加えて、人生のうちそんなに多く経験することでもないため、難解で分かりにくいという印象を持つ人が多いと思います。そこで、今回よりシリーズで、相続や生前贈与について必要性の高い知識を中心に整理していきたいと思います。まずは皆さんが何を優先すべきなのか? 確認してください。

相続税の課税はいくらから?

まず、相続というと相続税を真っ先に思い浮かべる人も多いと思いますが、実はその相続税の対象となるのは相続発生件数全体の8%(平成27年)程度で、9割以上のケースで課税されていません。つまり一部の資産家や都心部に不動産を有している人などは相続税の対象になる可能性がありますが、相続税計算過程の基礎控除が大きいことなどから、一般的な家庭では相続税が生じない可能性が高いのです。

その基礎控除は以下の式となります。
3,000万円+600万円×法定相続人の数

家族
PhotoAC

例えば、両親と長女、次女の田中さん一家の場合、お父さんが亡くなると、法定相続人がお母さんと娘2人の3人であるため、亡くなった時点のお父さんの財産が、基礎控除3,000万円+600万円×3=4,800万円の範囲内であれば相続税は課税されません。借金などマイナスの財産がある場合は差引した金額になります。プラスの財産が5,000万円で借金が1,000万円であれば差引き4,000万円となるため、基礎控除の範囲内となります。

不動産を有している場合は評価しづらい点もありますし、計算過程でさまざまな特例などもあるため、実際に課税されるかどうか判断するのは難しい場合もありますが、まずは、お父さんがおおよそどれくらいの財産を有しているのか、そしてその額が基礎控除の範囲内かどうか試算してみてください。

この基礎控除の範囲内に収まりそうな場合、「相続税は気にしなくてよい」という結論に至ります。一方、相続税の対象になりそうな方は税理士など専門家に依頼し、具体的な相続税負担を想定し、さまざまな対策を講じる必要があります。

贈与税と生前贈与を知る

最初のステップで相続税について確認した後、次に知っておきたいのが贈与税です。相続はお父さんが死亡した後、財産を引き継いだ際に生じる税金ですが、贈与税は、お父さんが生前にお母さんや子どもたちに財産を渡すと発生する可能性があります。

ただ、相続税と同様に基礎控除があり、1人あたり年間110万円まで非課税となります。これは財産を受け取った側で考えますので、長女がお父さんから100万円、お母さんから50万円もらうと、150万円-110万円=40万円となり、基礎控除を超過しますので、贈与税を納める必要が生じます。

「あれ? 相続税に比べて贈与税の基礎控除額は少ない・・・」と感じた方が多いと思います。相続税はかからなくても生前にまとまった金額を贈与すると高額の贈与税が課される場合もありますので、注意してください。

お金を計算
PhotoAC

ファーストステップとしてやるべきこと

相続や生前贈与について考えるとき、さまざまなアプローチ方法があると思いますが、今回はそのうちの1つとして税金ルールから把握する方法を紹介しました。

1.相続税がかかる? それとも、かからないか?
2.かかりそうな場合は具体的に税金対策が必要なため専門家などに一度相談
3.かからない場合、2番はスキップ。誰に、いつ、どの財産を渡したいか? 財産の分け方を検討
4.生前に渡す場合は贈与税に注意して

今回紹介した内容をまとめると以上のようになります。こういったことを踏まえて家族会議などを行うと、話が堂々巡りとならず、スムーズに進んでいくかもしれません。相続はよく「争族」、家族で争うと表現されることがありますが、きちんと基礎知識を理解することで、親の想いが続く、「想続」になるといいですね。


後編は生前贈与についてお伝えします。
相続や生前贈与の全体像を知って上手な家族リレーを!(後編)

関連記事
相続で揉めるのはお金持ちより一般庶民!争わないために最低限やることとは?

相続税法が変わって、暮らしにどんな変化が?