10%消費税、増えた税金の使い道や内訳って実際何だっけ?FPが分かりやすく解説 (3ページ目)
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消費税は以下のように、販売店舗が預かった額を納税する仕組みになっています。
<A社が取引先のB社から商品を仕入>
仕入品 100円
消費税 10円
<商品を仕入れたA社が消費者に販売>
販売品 500円
消費税 50円
→差額40円を納税
商品を販売する店舗もまた、仕入れの際に消費税を払っています。上の例では仕入れの時に支払った10円と販売の時に預かった50円の差額40円を納税することになります。そして、すべての会社や事業主が上記差額を納税しているのではなく、一定の売上基準などがあります。よって、A社は開業して間もないときなど、課税業者としての基準に達していない場合は「免税業者」となり、この40円を納める必要はありません。消費税について簡単に説明するとこういった仕組みです。
ところが、今回の増税は軽減税率により10%対象のものと8%対象のものに分かれています。仕入先のB社が発行する領収書に具体的に税率が記載されていればいいのですが、手書きの領収書など総額だけで税率が記載されていない場合もありますし、一部商品は8%で残りが10%というように混在している場合もあります。
上の事例はシンプルですが、実際は「差額」を算出することがかなり煩雑だということが分かると思います。
そこで、2023年10月からインボイス制度が始まる予定です。正式名称は「適格請求書等保存方式」と言います。
これは、消費税の課税業者が消費税率や税額を記載した用紙を取引ごとに相手方に配布する仕組みです。ただ、このインボイスを発行できるのは「国に登録を受けた課税業者」となっています。つまり、「免税業者」となっている業者はインボイスが発行できないのです。
「うちは今のところ消費税を納める必要がないから、特に関係ない。」とは言っていられません。課税業者からすると、「免税業者から仕入れをするとインボイスが発行されない」ということになるため、取引を拒まれるかもしれないのです。
8%と10%と税率が2つに分かれる前から、そもそも消費税がかからない非課税のものもあります。こういった状況で、特に事業主が複雑な処理となるため、それを改善することが期待されるインボイス制度ですが、完全導入までまだ課題も残っています。
増税に加えコロナショックが直撃
過去の増税の際には、増税前に駆け込みで購入しようという人が多くいました。その代表例が住宅や車などです。よって増税の後、不動産取引が大きく落ち込むということもありました。
今回8%から10%の増税も同様です。増税後の消費が落ち込んだタイミングで、新型コロナウイルス感染の拡大で私たちの生活、経済は大きな影響を受けています。
執筆時点(2020年4月)では、首都圏での医療崩壊などが危惧されていますが、私たちが健康で生活していくためには充実した社会保障制度や医療あってのものだと改めて感じています。
私たちは消費税について増税しか経験しておらず、減税されたことはありません。よって、その都度、消費税はやり玉に上がり、今でも消費税不要論もあり、そのあり方が問われていますが、私たちの社会保障のためだということを踏まえることで、その見方も変わりそうです。
消費税は払う人と納める人が異なるため、所得税などの「直接税」と違い「間接税」に区分けされます。間接ではありますが、皆さん自身が納めることに変わりはありませんので、自分には関係ないと思わず、今後の消費税のあり方や課題について考えてみるきっかけにしてください。
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消費税についてのQ&A
Q.消費増税により子供の教育費の負担も増えるのですか?
A.私立高校や大学の受験料や入学料、授業料はそもそも非課税のため、消費増税の影響を受けることはありません。ただ、習い事や部活動などの用具は増税の影響を受けることになります。なお、給食費は今回、軽減税率の8%が適用されています。
Q.社会保障とは別に社会福祉という制度もありますが、どう違うのでしょうか?
A.社会保障とは病気や失業など私たちが向き合うリスクに対する予防や援助のことをいいます。社会福祉は社会保障制度の一環で、特に自立が困難な人々を援助する制度で、障害者福祉や母子福祉といった制度があります。