10%消費税、増えた税金の使い道や内訳って実際何だっけ?FPが分かりやすく解説 (2ページ目)
目次
その120兆円を超える給付額に対応するために、生産年齢人口である私たちが健康保険料や厚生年金保険料などを支払っていますが、その保険料の総額は70兆円程度です。
年金などの給付額に対して約50兆円も足りません。その分を公費として国や地方が担うことになるのです。そのうち一部は国が国債を発行して対応することになりますが、前述のように国債は借金です。借金ばかり積み重ねていくわけにはいかないため、ここで消費税の出番ということになります。(財務省HP「財務省NOW」より 筆者一部編集)
しかも、財務省は、社会保障給付額は2025年度には約140兆円、2040年度には約190兆円へと増加していくと試算しています。高齢者が増えると年金受給者も増えますし、医療や介護を必要とする人も増えるわけです。
このように消費税は皆さん自身や、皆さんの親族など年金や介護制度を利用している人を支援しているものだ、と理解しておくと、消費税への向き合い方が少し変わるかもしれません。
なぜ所得税や法人税でなく、消費税を上げるのか?
このように少子高齢化という問題を抱える中、日本の将来を支える意味での消費税増税ですが、なぜ所得税や法人税ではなく、消費税が上がられたのでしょうか?
ポイントは以下の3点です。
・所得税や法人税は主に働く人が担うことになる
・消費税はあらゆる世代が広く公平に負担するため、安定した財源を確保できる
・税収が景気の変化に左右されにくく 安定している
本来であれば、社会保障費は社会保険料で賄われるべきですが、それが難しくなったこともあり、消費税が導入されています。所得税は働く個人、法人税は企業が負担する性質であるため、所得税・法人税に頼ってしまうと、働く人への負担が一段と高まることとなります。
一方で消費税であれば、子供や高齢者も日々の買い物で払うこととなり、働く人のみに大きな負担が生じることを回避でき、幅広い層が協力して負担する形となります。
さらに、個人事業主が赤字の場合は納める所得税がゼロということも考えられますが、私たちは日々の食費など、必ずモノやサービスを購入しながら生活していくため、景気動向に関わらず一定の消費税を払うことになります。つまり安定的な財源確保がしやすいのです。こういった理由で、消費税を上げるのが効果的なのです。
2%増税分の使い道は、これまでと変わる?
「社会保障と税の一体改革」の流れの中で消費税が10%となり、従来と明らかに違う点は「全世代型」という点です。今までは高齢者を中心とした社会保障のために使われてきましたが、内閣府は「+2%は、もっと一人一人のために」と掲げており、若い世代や現役世代の人たちを対象とした制度も充実します。
幼児教育の無償化がその1つです。幼稚園や保育園などの費用を無償化することで子育て世代を支援する制度は既にスタートしています。
高等教育も同じく、住民税非課税世帯などを対象に高校や大学の入学料や授業料を免除または減額する制度や返還不要の給付型奨学金制度などを充実させることで、教育支援も行われます。
一方、人手不足はじめさまざまな問題を抱える保育士や介護人材の処遇改善を図ることも増税分の使い道として掲げられています。
増税分をこのように使うことで、どういったことが期待できるでしょうか?
例えば、今まで経済的理由で高等教育をあきらめていた人が進学できるようになるかもしれません。一般的に高等教育に進むほど、生涯賃金も増えるといわれています。一人一人の生涯賃金が増えれば、より保険料や税金も負担できるようになりますよね。
また保育士や介護人材の処遇が改善されることで、人手不足の解消が期待されています。例えば保育園での人手不足が解消されれば、その分、待機児童を減らすことにつながります。働きたくても子供を預けることができず働けないという人もたくさんいるのです。そういった人たちが安心して働けるようになれば、収入を得ることで税金や保険料の担い手となってくれます。
結果として、2040年度には190兆円とも試算されている将来の社会保障の給付額を見据えての取り組みとなるのです。
消費税の増税後も残る課題は
消費税が10%に増税され半年が経過しました(2020年4月現在)。一部の商品は軽減税率の対象となり8%が据え置かれていますが、皆さんは慣れてきたでしょうか?
消費者としては、それほど神経質に8%と10%の違いを意識していない人も多いと思いますが、大変なのはお店側です。何が大変なのか、消費税の基本的な仕組みを紹介しながら説明します。