生前贈与を法改正前の今から検討しておくべき理由とポイントとは? (2ページ目)
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生前贈与に関する制度が改正、どう変わるの?
ここまで見てきましたように、特例以外では、暦年贈与である110万円以下なら非課税で贈与を受けられるということになります。ただ、知っておきたいのは、この暦年贈与が見直される可能性が浮上していることです。
令和3年度税制改正大綱では、暦年贈与で時間をかけて大金を贈与した場合と、相続により一括でもらった場合で納める税額に違いがあることに違和感が唱えられています。贈与でも相続でも税負担の総額は同等という欧米主要国にならって、日本も相続税と贈与税の一体化が検討されているようです。
いつからどのように改正されるか執筆時点ではまだ分かりませんが、まずは、令和4年度税制改正が注目されています。そういう意味で、生前贈与を検討されている場合は、早めに行動した方が賢明かもしれません。
生前贈与を受けた場合、税務署に申告は必要?
生前贈与で財産をもらった場合は、原則として申告が必要です。
暦年贈与は110万円の非課税枠があるため超えた場合のみが対象となり、1月1日~12月31日までの贈与を翌年2月1日~3月15日までに申告します。確定申告とは別物なので注意しましょう。もし贈与の申告をしなかった場合は延滞金が課せられ、悪質な場合は重加算税が適用され罰せられます。
また、暦年贈与の場合は110万円以内なら申告不要とお伝えしましたが、各種特例を利用する場合には申告が必須です。
例えば、前述の「住宅取得資金贈与税の特例」の場合は、非課税限度額内でも税務署に特例を利用する旨を届け出る必要があります。申告がもれていた場合は、特例が適用されず贈与税を納めることになります。
なお、「教育資金の一括贈与に係る非課税の特例」や「結婚・子育て資金の一括贈与に係る非課税の特例」を利用する場合は、利用開始時に金融機関を経由して税務署に申告します。申告書類である「教育資金非課税申告書」「結婚・子育て資金非課税申告書」は金融機関が準備してくれるので心配いりません。
まとめ
今回は、生前贈与についてみてきました。ポイントを簡単にまとめます。
・贈与税とは、贈与を受けた場合に納める税金
・生前贈与は暦年贈与として110万円の非課税枠がある
・近い将来、生前贈与が見直される可能性がある
・住宅資金や教育資金などを贈与する場合は特例がある
・贈与を受けた場合は申告が必要で、怠ると延滞金や重加算税が課せられる
暦年贈与や特例等は奥深いものです。詳細は顧問税理士や税務署に確認すると良いでしょう。
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生前贈与に関するQ&A
Q:5年前から相続対策として子名義の通帳に贈与をしています。通帳を渡すと無駄使いをすると思い内緒です。年間110万円を超えていなければ問題ないでしょうか?
A:暦年贈与をしたと思っておられますが、それは間違いです。贈与はあげる側ともらう側双方の合意のもとに成り立ちます。また、通帳はまだお子様の手元にはないためやはりあげたとは言えません。通帳を渡した時点で、全額がその年の贈与とみなされる可能性が高いと思われます。
Q:息子夫婦がマイホームを購入します。特例を使って贈与をしたいのですが、息子と嫁にそれぞれ贈与することができますか?
A:「住宅取得資金贈与税の特例」は、直系尊属である必要があります。ですので、血のつながっていないお嫁さんには使えません。