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便利なネット銀行、デメリットも確認!ローン審査厳しいって本当?

ためる 内山 貴博

便利なネット銀行、デメリットも確認!ローン審査厳しいって本当?

【画像出典元】「stock.adobe.com/ZinetroN」

キャッシュレス決済に暗号資産(仮想通貨)など、私たちは現金を持ち歩かなくても買い物や生活ができる環境になりつつあります。そしてこの流れは一段と加速していくものと思われます。そんな生活を支えてくれる1つがネット専業銀行や銀行のインターネットサービスです。多様化する私たちのライフスタイルに合わせたサービスや魅力的な商品を提供してくれています。

ところで、どんな商品・サービスにおいても「インターネットで取引する方が便利で安い」というイメージがありますが、銀行についても同じことがいえるでしょうか?

大きなお金の決済や高度な金融取引をインターネット上で、且つ一人で行わなければならないということに不安を感じる人もいるでしょう。その他トラブルにつながるケースもありそうです。今回はネット銀行のメリットやデメリットだけでなく、特に高額となる住宅ローンを借りる際の注意点などを一通り解説していきます。

ネット銀行とは

ネット銀行と聞くと「インターネットで取引する銀行」とすぐに浮かぶと思いますが、大きく「ネット専業銀行」と「インターネット支店」の2つに分けることができます。

①ネット専業銀行

店舗を持たずネット上のみでサービス展開をしている銀行のことです。例えばPayPay銀行もその1つです。PayPay銀行は、日本初のネット専業銀行だったジャパン銀行から社名を変えて生まれ変わった銀行で、キャッシュレス決済でおなじみのPayPayを運営するZホールディングスと三井住友銀行のグループ会社です。

住信SBIネット銀行も利用者が多いネット銀行の1つで、三井住友信託銀行とSBIホールディングスが共同出資しています。楽天銀行やソニー銀行のようにメガバンクや大手企業の傘下で展開されているネット銀行も多くあります。口座開設を友人などに紹介し、紹介された人が口座開設すると1000円もらえるというキャンペーンで話題となったauじぶん銀行も、KDDIと三菱UFJ銀行が共同出資して設立されています。

②インターネット支店

実店舗がある銀行がネット上に支店を構えているケースです。メガバンクではみずほ銀行や三菱UFJ銀行の「インターネット支店」がそれに該当します。その他地方銀行もインターネット支店を有している銀行が増えています。

また、「ネット支店」ではなくても、ほとんどの銀行が「インターネットサービス」を展開しています。実店舗で口座を開設するものの、パソコンやスマホで取引ができるため大変便利です。銀行のネットサービスを利用したことがある人は多いと思いますが、困った時に近くに店舗があるという安心感があります。

よって今回は店舗を構えていない「ネット専業銀行」(以下ネット銀行)を中心に、特に住宅ローンを検討する場合のメリットやデメリット、注意点などを紹介したいと思います。

ネット銀行のメリット

スマホでネットバンクにアクセスする
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手数料の安さや有利な金利

なんといっても、店舗を持たず経費が抑えられるという最大のメリットを活かした、割安な手数料や有利な金利水準は大きな魅力といえます。普通預金の金利、住宅ローンの金利など常にネット銀行が一歩リードしているという印象があります。例えば定期預金の金利の場合、0.001~0.002%程度の銀行が多い中、楽天銀行などのネット銀行は0.02%程度と、10倍もの金利水準となっています。

とにかく便利!

ネット銀行は身軽で機動的といえます。主要なコンビニにあるATMで月数回は無料で引き出しができたり、ネット証券と連動していることですぐに投資が始められたり、またグループ会社のサービスと連携し、お得なメリットを享受できたり。例えば楽天銀行の場合は本業の「楽天」でネットショッピングをすると、ポイント還元率が上乗せされるといったサービスもあります。

店舗型の銀行窓口は、平日のみで営業時間も15時までなので、不便を感じる人も多いかもしれませんが、ネット銀行のさまざまな取り組みにより、私たちの利便性を高めてくれています。店舗型の銀行も現在は土日も対応するなど、さまざまな取り組みが行われています。

ネット銀行のデメリット

PCからお金が溢れて笑顔の男性
【画像出典元】「stock.adobe.com/pathdoc」

ではネット銀行にデメリットはないのでしょうか?一般的にメリットを感じている人が多いと思いますので、今回はあえてデメリットについて丁寧に、またFP目線で指摘していきたいと思います。

便利さがデメリットになることも

家計管理やお金の使い方のアドバイスをしているFPとして強調したい点ですが、コンビニのATMでも使えるがゆえに、深夜でもすぐに出金できてしまいます。こういった利便性が浪費につながる可能性もあります。

店舗型の銀行であればコンビニのATMが使えないケースもありますし、利用できても出金手数料がかかることも多いため、これらが結果的に出金することに対して歯止めをかけてくれることにもなります。

さらにはネット銀行の場合、「定期預金→普通預金」への振り替えもいつでも対応してくれます。これも非常に便利ではあるのですが、せっかく長期的に貯めるために定期預金にしていたにも関わらず、スマホ操作だけで簡単に普通預金へ振り替えできて、すぐに使うことができる・・・。こういった便利な機能が浪費につながってしまうこともあるのです。

公共料金や税金の引き落とし口座に指定できない場合も

ネット銀行は、毎月の電気代や固定資産税などの引落先として対応できない場合があります。対応できるネット銀行も増えていますが、従来の店舗型銀行に比べると、いざという時に「その銀行は対応できないので、別の銀行を指定していただけますか?」といった状況になることも考えられます。ネット銀行1つで全ての取引を行うというのは現状やや難しいかもしれません。

住宅ローンの審査がやや厳しめ?

「ネット銀行の方が住宅ローンの審査が厳しい」と見聞きすることがよくあります。各銀行や保証会社の細かい審査基準を知ることができないため、これを明らかに示すデータがあるわけではありませんが、「より低い金利でローンを提供するためには、より貸し出す上でのリスクを低くする」という考え方が原則となっています。

言い換えると、銀行側は「返済が滞る可能性が高い人には低い金利で貸したくない」ということになるのです。当記事で紹介していますように、ネット銀行は金利面で高い競争力を有しています。つまり、これが審査面での厳しさにつながることが考えられます。

手続きに時間がかかる場合も

一定の地域に特化している地方銀行などと比較すると、ネット銀行は、口座開設などのさまざまなサービスの手続きを全国各地から受け付けています。特に人気商品・サービスやキャンペーンなどは問合せも多く、「見えない行列」ができていて、思った以上に時間がかかることもあるでしょう。

さらには、必要な書類に不備があれば郵送で戻され、再度、郵送しなければなりません。1つの不備を解決するために数日かかることもあり、「この日までにローンを組みたい」、「入学までに教育費が必要」といった具合に期限がある人にとっては気をもむ展開になる恐れがあります。先に紹介した住宅ローンの申し込み、審査についても同じことが言えます。

相続の時、大丈夫?

ネット銀行に限らず、ネット証券、FX(外国為替証拠金取引)、暗号資産(仮想通貨)などインターネットを中心に行う金融取引全般に言えることですが、本人が亡くなった際、遺族が口座や取引の有無を把握できないことが想定されます。

実店舗の銀行でもその可能性はありますが、例えば、「ちょっと〇〇銀行に行ってくる」といった具合に、生前の生活シーンでどの金融機関との取引があるかを知る機会も多いと思います。または、担当者の方が自宅に訪問してきたことがあるというケースもあるでしょう。

こういったリアルな存在、人とのつながりがあれば、遺族がきちんと把握でき、そして、煩わしい相続手続きにおいても何か不明点があればすぐに店舗に出向き相談もできるでしょう。

ネット銀行のキャッシュカードはクレジットカードやポイントカードなどと一体化されているものもあり、一見「銀行のカード」と分かりにくいものもあります。通帳もありません。せっかくの大切な資産に遺族が気付かないというリスクも考えられます。

口座の存在に気付いたとしても、相続に関する手続きは基本的にコールセンターに連絡し、以後は電話と書類のやりとりで手続きを完結することになります。遺言の有無、遺産分割協議書の有無などでも必要な書類が異なるほか、誰が相続人になるのか?ということも影響してきます。

また、公共料金の引き落としにネット銀行を利用していた場合はすぐに利用停止になるため、別の銀行口座に引き落とし先を変更しなければなりません。「亡くなったので口座を閉鎖、全額出金してください」と一報するだけでは済まないのです。

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